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異世界建築録 ~YouTube知識で村を直したら、追放薬師と出会い王都をざまぁしました~  作者: 転々丸
第1章 村を要塞化

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第2話 小屋と青年と、薬草の香り

夜になると、空気がひんやりと冷え込んできた。

小屋の屋根に空いた隙間から、小さな星がちらちらと覗いている。

そよそよと吹く夜風が頬をなでていき、思わず肩をすくめた。


毛布代わりにした麻袋にくるまりながら、

ぼんやりと「屋根、どうやって直そうかな」などと考えていた。


朝。鳥の声に起こされて、巻尺を手に屋根裏へと登っていく。

見上げた梁はところどころ腐り、板が抜け、釘の跡には苔がうっすら。

どこから手をつけようかと悩んでいると──


 「ねぇ、おじさん。なにしてるの?」


びくん、と肩が跳ねた。

振り向くと、小さな男の子が入り口から顔を覗かせていた。

ぱっちりした瞳でこちらを見つめている。


「屋根の具合を見てたんだよ」

「ふーん……。ねぇ、ラウル呼んでくる!」


そう言って、子どもはぱたぱたと走っていった。

「ラウルー!」という元気な声が、村の奥へと消えていく。


ほどなくして、たくましい体つきの青年がやってきた。

栗色の髪にうっすらと汗がにじみ、背には斧を背負っている。


「お前が、新しく来たっていう奴か?」


「うん。昨日、ばあさんにこの小屋を借りてね」


俺が答えると、青年は足元の板や梁に目をやった。

その視線は、どこか職人らしい真剣さを帯びている。


「直せるのか? このボロ小屋」


「……やるしかない。崩れる前にな」


俺が笑うと、彼は口元をわずかに緩めた。


「俺はラウル。この村で木を伐ってる。……手伝おうか?」


「ありがたい。俺は──」


そこで、ふと言葉が止まる。

転生前の本当の名前を思い出そうとするが、

霧がかかったように曖昧だった。


それでも、現場で呼ばれていた「タカ」という呼び名だけは、

なぜかくっきりと残っていた。


「タカ、でいいや」


「タカか。よし、じゃあ決まりだな」


ラウルは斧を下ろし、一緒に梁の状態を確認してくれた。

心の声で検索すると、「古材の三角補強」や

「釘を使わない継手工法」などがぽんぽんと浮かぶ。

 

俺がアイデアを出し、ラウルが力強く木を運ぶ。


少しずつ、けれど確かに。

傾いた小屋が、姿を取り戻していった。


昼を過ぎた頃、ラウルが額の汗をぬぐいながら言った。


「腹、減ったろ。うちに来いよ」

「……いいのか?」


「ああ。妹が料理してる」


案内された家は、藁ぶき屋根に白い壁の、

素朴だけれどあたたかみのある建物だった。

 

玄関を開けると、ふわりと薬草の香りが漂ってくる。


「ただいまー」


ラウルの声に応えるように、奥から女性が現れた。

長い金色の髪を編み、瞳は冷静で知的。

でも、ほんの少しだけ影があるようにも見える。


「兄さん……お客さん?」


「タカだ。小屋を直してる。」


彼女はちらりと俺を見つめ、一瞬だけ表情がこわばる。

けれどすぐに、柔らかな微笑みを浮かべ、木の椀を差し出してくれた。


「エレナよ。……どうぞ」


差し出されたスープの中には、野菜と小さな白い実が浮かんでいた。

一口すすると、体の芯からじんわり温まるような、優しい味が広がった。


「これは……薬草?」

「ええ。効能を知って調合すれば、料理にもなるし、薬にもなるの」


その声は静かで丁寧だったけれど、

どこか距離を取っているような、冷たさもにじんでいた。

 

ラウルが気まずそうに笑いながら言う。


「エレナは天才薬師なんだ。……でも、昔いろいろあって・・」


「兄さん!」


エレナがきっぱりと話を遮った。

その目の奥に、ほんの一瞬だけ“痛み”がちらりとのぞいた。


俺は何も言わず、そっとスープを口に運ぶ。

森の香り、薬草の苦み。そして、少し不思議な兄妹との縁。


湯気の向こうで、エレナの横顔が、

どこか物語の始まりを感じさせるように、静かに揺れていた。


こうして俺の転生生活は、ひとつの修理から、

小さな縁の物語へと広がっていくような気がした。


ー続く

ご覧いただき、ありがとうございますm(__)m

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