第17話 鴉の告白、王都への道標
捕らえた鴉は、ラウルの手によって
村の地下貯蔵庫――今は即席の牢獄となっている場所へと引き立てられた。
その手足は、俺が急造した**「強化ボルト式の枷」**で固定されている。
大工の技術で締め上げられたそれは、
魔法による身体強化でも逃れることはできない。
「……さて、聞かせてもらおうか。
王都がなぜ、ここまで執拗にこの村とアニマ草を狙うのか」
俺が低い声で問うと、鴉は力なく笑った。
「……無駄だ。私は王都の歯車に過ぎん。
だが……貴殿らには知る権利があるのかもしれないな。
貴殿らが守ろうとしているその娘、エレナが何者なのかを」
エレナが息を呑む。
「王都の神殿で『延命薬』の研究が進んでいるのは事実だ。
だが、それは王の命を延ばすためではない。
王都そのものを維持するための**『動力源』**が尽きようとしているのだ」
「動力源……?」
「王都を浮かせる浮遊石、結界、そして贅沢な魔法生活。
すべてはアニマ草を煮出した膨大な魔力で賄われている。
だが、従来の製法では効率が悪すぎた。
そこで現れたのが、エレナの師匠……
そして、異端の知識を持つとされるエレナ自身だ」
鴉の瞳が、エレナを射抜く。
「エレナ。君が持ち出したあの『黄金の触媒』
……それこそが、アニマ草の真の力を引き出す鍵。王
都は、君を連れ戻し、君を**『人柱』**として炉に捧げるつもりだ」
「そんな……!」
エレナが崩れ落ちそうになるのを、俺は支えた。
鴉は吐き捨てるように続けた。
「私が失敗すれば、次は第四、第五の騎士団が来る。
この村を更地にしてでもな。……救いたいなら、王都へ行け。
王都の『心臓』そのものを、君たちのその妙な知識で作り変える以外に、
この連鎖を止める術はない」
沈黙が地下室を支配した。
俺は、手の中のコンベックス(巻尺)を強く握りしめた。
「……タカ、行かなくていいわ。私は、一人で――」
「馬鹿言うな」 俺はエレナの言葉を遮った。
「一人で行かせて、王都の連中にいいようにされるのを
見てろっていうのか? 冗談じゃねえ」
俺は立ち上がり、ラウルを見た。
「ラウル。村の防衛はこのまま継続してくれ。
ガストンの件で、村人たちも目が覚めたはずだ。
壁の維持方法は教えただろ?」
「ああ。……だが、王都は魔境だぞ。大工の道具だけで何ができる」
「大工だからできることがある」
俺は脳内に浮かぶ、王都の巨大な魔法構造物の「欠陥」を幻視していた。
鴉の話が本当なら、王都は歪んだ設計の上に成り立つ危うい建築物だ。
「無理やり煮出すのが王都のやり方なら、
俺はもっと正しくて、もっと効率的な『構造』を叩きつけてやる。
……エレナ。一緒に来い。あんたの薬学と俺の建築で、
王都をリフォームしてやるよ」
【プロジェクト:王都改築 承認】
【目的:システムの根本的刷新】 【同行者:エレナ(特級調薬師)】
翌朝。
俺とエレナは、村人たちに見送られながら、旅の荷車に乗り込んだ。
荷台には、愛用の大工道具と、わずかな黄金のアニマ草。
「タカ、死ぬなよ! 壁は、俺たちが守り抜く!」
ラウルの叫びが遠ざかっていく。
俺は御者台から、遠くに見える空に浮かぶ影――王都を見上げた。
「待ってろ、王都。……欠陥住宅の修理をつけに行ってやる」
ご覧頂きありがとうございますm(_ _)m




