第14話 陥穽(かんせい)の建築
「突撃ィィッ!!」
指揮官の苛烈な号令とともに、
数百の蹄がアルラ村の入り口へと殺到した。
一騎で家屋をなぎ倒す破壊力を持つ、王都騎士団の重装騎馬隊。
その質量が、目前の「泥の壁」を粉砕せんと迫る。
だが、衝突の瞬間――。
ドォォォォォン!!
凄まじい衝撃音が響いたが、壁は微動だにしなかった。
それどころか、最前列の馬たちが、
まるで「目に見えない巨大なクッション」にぶつかったかのように、
不自然にその場に押し留められたのだ。
「……なっ、なんだと!?」
指揮官が目を見開く。
壁の表面、黄金色の回路が走る版築の層が、
激突のエネルギーを吸い込んで赤熱していた。
【建築スキル:応力分散(衝撃・熱変換)発動】
【変換効率:92%。余剰エネルギーを排熱ダクトへ転送】
「ただの壁じゃねえと言っただろ」
俺は監視塔から、設計図通りの「熱の動き」を視認した。
「エレナ、今だ! 溜まった熱を吐き出せ!」
「ええ……っ! 弁、開放!」
村の中央、エレナが調薬炉のレバーを引き抜く。
次の瞬間、壁の表面に設けられた無数の通気孔から
**キィィィィン!**という高周波とともに超高温の蒸気が噴き出した。
「ぎゃあああッ! 目が、前が見えん!」
「鎧が、鎧が焼けるぞ!!」
突撃の衝撃をそのまま「熱」として返した、建築的カウンター。
白煙に包まれた騎士団がパニックに陥り、機動力が完全に死んだ。
「これでおしまいじゃない。……重力を忘れたあんたたちの負けだ」
俺は足元のトリガー、滑車に繋がった「固定ピン」を一気に引き抜いた。
ガコォォォン!!
「な……地面がっ!?」
騎士団が立ち往生していた入り口の地面が、
テコの原理と「跳ね出し構造」によって、
一気に数メートル跳ね上がったのだ。
視界を奪われていた騎士たちは、跳ね上がった路面に足を取られ
、次々と重なり合うように転倒していく。
最前列の落馬が、後続の突撃を巻き込み、銀色のドミノ倒しが完成した。
【トラップ:跳ね出し基礎、全稼働】 【戦果:重装騎馬24騎、戦闘不能】
「……馬鹿な。魔法でもないのに、地面が動くだと……!?」
落馬し、泥にまみれた指揮官が、
信じられないものを見る目で俺を仰ぎ見る。
「魔法じゃない。ただの建築だ。
……あんたたちが踏みにじってきた土と、風と、計算の力だ」
俺は監視塔の上で、愛用のコンベックスをカチリと戻した。
混乱する騎士団の向こう、
森の影からこちらを凝視する「冷たい視線」を感じる。
――密偵『鴉』か。
だが、村人たちは違った。 震えていた男たちが、
自分たちの塗った壁が王都の騎士を退けたのを見て、歓喜に震え始めている。
「……守れる。俺たちの村は、守れるんだ!」
その声が、新たな熱となって村に広がっていく。
要塞村アルラ。その真価は、ここからだ。
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