第13話 構造の力
子供たちの咳が収まったと思った翌日
空から微かな光の粒――**“魔粉”**が降り注いできた。
「子どもたちが、また咳き込んで……!」 悲鳴が上がる。
だが今度は病ではない。王都の広域追跡術だ。
「エレナ、浄化壁を起動しろ!」
俺が叫ぶと、入り口の版築壁が淡く脈動した。
【浄化壁:作動中。魔粉を吸着・構造強化へ転換】
壁が毒を吸い込み、逆に硬度を増していく様を見て
反対していた男たちは言葉を失った。
「生き残りたければ、この壁を塗り固めろ!」
俺の怒号に、男たちがようやく動き出す。
不安を打ち消すように、必死で土を練り、壁を高くしていく。
夕暮れ。 監視塔から見下ろす村は、要塞としての形を成しつつあった。
「……まだ、半分にも届いていない」 だが、予感は的中した。
監視塔の最上階。俺の視界に、血のような赤黒いノイズが走る。
【警告:大規模な魔力反応。距離1,500。接近速度:最大】
「……全員伏せろ!!」
森の境界線が爆発したかのように揺れ、
立ち込める土煙の中から、銀色の甲冑を纏った一団が現れた。
王都騎士団・第三本隊。 黄金の草の触媒を嗅ぎつけ
彼らは「回収」と「殲滅」のためにやってきたのだ。
夕闇に沈む森の境界線が、不自然に揺れた。
――キィィィィィィィィン!!
鼓膜を突き刺すような金属音。
森の中から現れたのは、
行商人が言っていた「脅し」などではない。
夕日を弾く白銀の甲冑。 一糸乱れぬ騎馬の蹄の音。
そして、その中央に掲げられたのは、王都の威信を示す巨大な軍旗。
「……嘘だろ。先遣隊どころか、本隊じゃないか」
偵察員『鴉』の報告を受けて
王都は「芽が出る前に摘み取る」ことを選んだのだ。
騎士団の先頭に立つ男が、こちらを見上げ、無造作に剣を抜く。
その剣先が、村の入り口を
――俺たちが築いたばかりの『壁』を指し示した。
「おい、ラウル! エレナ! 全員配置につけ!!」
俺は塔の上から叫んだ。
「……客人のご到着だ。
とびきり硬い『おもてなし』を見せてやろうぜ!」
「あれを見ろ、不届きな『壁』があるぞ。
……王の資源を盗んだ罪、その泥壁ごと押し潰して償わせろ!」
指揮官の剣が、村を指し示す。
大地を揺らす騎馬の蹄音。村人たちの悲鳴。
【要塞化進捗:48%】
【判定:未完了のまま、防衛フェーズへ移行します】
「ラウル、石灰を!
エレナ、アルクス(炉)を回せ!」
俺は塔の上から、黄金色に輝く壁を見下ろした。
「……計算通りだ。王都の騎士様。
俺たちが造ったのは、ただの泥壁じゃない。
あんたたちの常識を叩き潰す――『構造の暴力』だ!」
夕闇の中、黄金の光を帯びた「浄化壁」が、迎撃の脈動を開始した。
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