第6話:ガッカリ観光地?札幌時計台と意外な「味噌バターコーンラーメン」 (Day 15-16)
<ココロの日記>
6月19日 (Day 15)。
北海道に着いた。
空が、すごく広くて、どこまでも続いているみたい。
でも、ユウタお兄ちゃんが、変な場所に行くって言い出した。
「がっかり」って、ネットで見た。
どうして、そんな場所に行くんだろう。
少し、不安。
ユウタ視点メイン、ココロの心情描写あり
「よし! 札幌だぜ、ココロ! まずは、やっぱりここだよな!」
俺は鼻歌を歌いながら、軽キャンパー『ひまわり号』を運転していた。
フェリーを降りて、そのまま札幌の街へ。北の大地、最高のスタートだ。
到着早々、俺が向かった先は、札幌のシンボル、時計台だ。
「さあ、着いたぞ!」
軽快な声でそう言うと、ココロは閉め切っていたカーテンを、ゆっくりと開けた。
ミラー越しにココロの顔をちらりと見る。フードの奥から、恐る恐る外を覗いている。
その瞳は、まだ警戒心を宿しているが、僅かに好奇の色も浮かんでいるのが分かった。
そして、ココロの視線が、目の前の札幌時計台に向けられた。
一瞬、ココロの顔から、微かに期待のようなものが読み取れた。
しかし、次の瞬間。
「……がっかり」
か細い声が、聞こえた。
「は!? 何がだよ!?」
俺は思わず声を荒げた。いや、だって、あの有名な札幌時計台だぞ?
「……ネットに、書いてた」
ココロは、そう言って、視線を足元に落とした。
俺は頭を抱えた。
そう、ココロが言いたいことは痛いほどわかる。
札幌時計台は「日本三大がっかり観光地」の一つなんて、皮肉な言われ方をされてるのを知っていた。
実際、目の当たりにすると、写真で見るよりも小さく、周りのビルに囲まれていて、確かに「あれ?」って思う気持ちは理解できる。
俺も正直、初めて見た時は、内心で「マジかよ……」って思ったもんだ。
Vlogerとしては、「がっかり観光地」を「実はすごい!」って逆転させるのが腕の見せ所なんだけど。
ココロのストレートな感想に、出鼻をくじかれた気分だ。
「おいおい、ココロ。ネットの情報が全てじゃねーぞ。大事なのは、自分の目で見て、自分で感じるもんだろ?」
俺はそう言って、ココロを車から降ろした。
ココロは、人混みに怯えるように、俺の背中に隠れる。
時計台の周りは、観光客で賑わっている。
ユウタは、ココロを人混みから守るように、彼女の前に立つ。
そんなココロを背中に感じながら、俺は改めて時計台を見上げた。
確かに、小さい。
でも、なんだか、温かい。
「ココロ、ちょっとこっち見てみろ」
俺はスマホを構え、時計台の角度を探る。
「……?」
ココロが、わずかに顔を上げた。
俺は、俺の「旅Vlog編集センス」(優れた観察眼と構図の知識)で、その真の魅力を見出すことに集中した。
周りのビル群が、時計台の歴史を際立たせている。
市民の生活と結びついた、街のシンボルとしての時計台。
光の入り方、影の落ち方。
一瞬で、俺の頭の中に、完璧な構図が浮かび上がった。
俺はスマホのシャッターを切った。
何枚か写真を撮ってから、俺はココロに声をかけた。
「ココロ、ちょっと中、入ってみるか? 小さいけど、意外と面白いぞ」
ココロは躊躇していたが、好奇心が勝ったのか、ゆっくりと頷いた。
狭い時計台の内部見学中に、他の観光客とすれ違う際、ココロがユウタの背中に完全に密着した。
あるいは、展示物を覗き込む際に、ユウタとココロの顔が非常に接近し、互いの視線が交錯する瞬間。
俺は「こんな場所でこんな近くに…」と内心動揺した。
ココロは、時計台の歴史や、内部に展示された資料に興味を示し、小さな声で質問をしてきた。
「……これ、昔の、写真?」
「ああ。昔の札幌の街並みだな。ほら、時計台も、今と全然違うだろ?」
俺は嬉しくなって、解説してやった。
ココロの目が、キラキラと輝いている。
ネットの情報に惑わされず、自分の目で見て、感じようとしている。
これは、大きな変化だ。
俺は、この時計台の魅力を、Vlogでどう伝えようか。
ココロの素直な反応。
そして、俺が発見した「真の魅力」。
これらを組み合わせれば、きっと「がっかり観光地」を逆転させる、最高のコンテンツが作れるはずだ。
「よし、ココロ! 腹減っただろ? 北海道といえば、やっぱりラーメンだよな!」
俺は満面の笑みで、ココロに言った。
ココロは、こくりと頷いた。
よし、最高の味噌バターコーンラーメンを食わせてやる。
熱々のスープに、バターが溶け出し、コーンの甘みが加わったそのラーメンは、想像以上に美味いはずだ。
<ユウタのVlog再生画面のコメント欄>
「札幌時計台!がっかりした人多いけど、Vloggerユウタくんの手にかかればどうなる!?」
「周りのビルとの対比が面白いんだよなー。写真撮るの難しいんだよね」
「ユウタくんの解説、なんか深みがある!がっかり観光地を再評価する系Vlogか?」
「ココロちゃん、ちょっとだけ外に出てくれてる!?嬉しい!」
<ココロのSNS(X)タイムライン>
※第6話時点では、まだ投稿を再開していないため、コメントは表示されません。
<ココロの心情>
時計台は、ネットで見た通り、小さかった。でも、ユウタお兄ちゃんと一緒に見たら、なんだか、昔の街の様子が、少しだけ見えた気がした。ネットの情報だけが、全てじゃないのかもしれない。ラーメンの匂いが、すごくする。
<次回予告>
ユウタ「ココロ、このカメラ、お前にやるよ!」
ココロ「……え?」
ユウタ「せっかくだから、お前も本格的に写真、撮ってみないか?」
ココロ「……無理」
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