第45話:最後の目的地、約束の「博多ラーメン」(単話) (Day 170)
<ココロの日記>
11月23日 (Day 170)。
旅は、いよいよ最後の場所へ。
博多ラーメンの匂いがする。
ユウタお兄ちゃんが隣にいると、なぜか、怖くない。
ここで、私は、昔の私と、お別れする。
新しい私に、なるんだ。
ココロ視点メイン
軽キャンピングカー『ひまわり号』は、九州の街を走り、博多へと向かっていた。
旅も、いよいよ最終目的地だ。
私の心臓が、ドクンと大きく鳴る。
博多。そこは、ユウタお兄ちゃんが、いつか私を連れて行きたいと話していた場所だ。
ユウタお兄ちゃんが、隣で優しく微笑んでくれる。
その笑顔を見ると、不思議と、怖くない。
「ココロ、いよいよ最後の目的地だぜ!博多ラーメン、食いまくるぞ!」
ユウタお兄ちゃんが、明るい声で言った。
「……うん。」
私は、小さく頷いた。
博多の街は、活気に満ちていた。
たくさんの人が行き交い、屋台からは、濃厚で香ばしい豚骨ラーメンの匂いが立ち上っていた。
その香りは、私の中の『ただいま』と、この街の『おかえり』が静かに重なったようで、胸の奥がじんわりと温かくなった。
旅の終わりが近い。けれど、私は一人じゃない。
ユウタお兄ちゃんの隣で、この景色も、この匂いも、ちゃんと「思い出」にできる気がした。
博多駅に到着した私たちは、まず、博多のシンボルである博多ポートタワーへ向かった。
エレベーターで展望台へ昇ると、そこには、広がる博多の街並みと、遠くまで続く海が見えた。
風が強く、髪が乱れる。
見渡す限りの景色に、私は、心臓が大きく鳴った。
初めての場所。
この旅が始まる前は、遠い九州の地で、こんな景色を見られるなんて、想像もできなかった。
ユウタお兄ちゃんが、私の手を、ぎゅっと握ってくれた。
その温かい手の感触が、私を安心させてくれる。
「大丈夫だ、ココロ。俺がついてる。」
彼の声が、私を支えてくれる。
私は、ゆっくりと、展望台の手すりに寄りかかった。
かつては、絶望しか感じなかった場所が、今は、ユウタお兄ちゃんの温かい手と、広がる景色に満たされている。
私は、展望台の真ん中で、ゆっくりと、目をつむった。
見渡す博多の街の灯りに、私の“旅”が、全部詰まっているような気がした。
北海道の朝日。長野の温泉。明石焼きの湯気。
ユウタお兄ちゃんの笑顔、あの夜の肩の温もり。
全部が、ここに集まって、今の私を作ってくれた。
そして、ゆっくりと、目を開けた。
そこには、あの時の私じゃない。
ユウタお兄ちゃんが隣にいる。
私は、もう、一人じゃない。
過去の自分と、ここで、完全に決別する。
公園を後にし、私たちは博多のラーメン屋へと向かった。
博多ラーメン。
白い豚骨スープに、細麺。
上に乗せられた、チャーシューとネギ。
香ばしい匂いが、食欲をそそる。
「はい、ココロ。博多ラーメンだぜ!熱いから気をつけてな。」
ユウタお兄ちゃんが、どんぶりを差し出してきた。
「覚えてる? ユウタお兄ちゃん……。旅の一番最初に、言ったよね」
私は、ラーメンの湯気越しに、ユウタお兄ちゃんの顔を見つめた。
「え?」
ユウタお兄ちゃんは、きょとんとした顔をしている。
「“最後は博多でラーメン食おう”って」
私の言葉に、ユウタお兄ちゃんの瞳が、大きく見開かれた。
「……言ったな。冗談のつもりだったのに。」
彼の声は、少しだけ、震えている。
「私、ずっとその言葉を信じてた。だから、ここまで来られたの。」
そう言うと、ユウタお兄ちゃんの顔が、赤くなったのが分かった。
私は、ゆっくりと箸を取り、麺をすくい上げる。
一口食べる。
濃厚な豚骨スープが、口いっぱいに広がる。
細麺が、スープによく絡む。
この旅で、私は、たくさんの「美味しい」に出会ってきた。
その一つ一つが、私を強くしてくれた。
食べ終えた後、私の感情が高まった。
過去と決別できた喜び。
そして、ユウタお兄ちゃんへの感謝。
私は、思わず、彼の服の襟を掴んで、自分の方へと引き寄せた。
顔が、すぐそこにある。
彼の吐息がかかる距離。
互いの唇が、触れるか触れないかの寸止め。
その瞬間、私の心臓が、大きく鳴り響いた。
言葉はいらない。
この瞬間が、全てを物語っている。
ユウタお兄ちゃんが、私の頭を優しく撫でてくれた。
その手の温かさに、私は、心から安堵した。
この人となら、どんな未来も、怖くない。
この旅は、私を、引きこもりから解放してくれた。
そして、未来への、大きな一歩を、与えてくれた。
私にとって、この旅は、人生そのものだ。
言葉なんて、いらないと思ってた。
でも、今だけは、彼女にこう言いたかった。
「好きだよ、ココロ」
喉元まで出かけたその言葉を、俺は、静かに飲み込んだ。
言えない。
まだ、言えない。
だが、その感情は、確かに俺の胸の中で、大きく膨らんでいた。
伝わらなかった本音。
それでも、この旅は、まだ続く。
<ユウタのVlog再生画面のコメント欄>
「博多ラーメン!飯テロ最高!ユウタくん、ココロちゃんの過去を乗り越えさせてあげて!」
「ココロちゃん、過去と向き合ったんだね…感動した!」
「二人の絆、どこまでも深まっていくね…」
「博多ラーメンのキス寸前シーン、マジでドキドキした!」
「ココロちゃんの『ずっと信じてた』に号泣した…神回!」
<ココロのSNS(X)タイムライン>
**ココロの投稿:**
旅の最終目的地、博多に来ています。ここで、昔の自分と、お別れしました。 #博多 #旅 #新しい私
**コメント:**
「ココロちゃん、よく頑張ったね!感動した!」
「ココロちゃんの写真、いつも勇気をもらえるよ!」
「ユウタくんとの絆、素敵すぎる!」
「これからも、二人の旅、楽しみにしてるね!」
「ココロちゃんのあの言葉、ユウタくんにも届いたかな?」
<ココロの心情>
博多ラーメンは、温かくて、私に強さをくれた。あの場所で、過去と完全に決別できた。ユウタお兄ちゃんが、隣にいると、私は、どんな困難も乗り越えられる。この旅は、私にとって、最高の希望だ。
<次回予告>
ユウタ:「ココロ、旅の最後に、二人だけの甘々タイム、過ごさないか?」
ココロ:「……甘々?」
ユウタ:「ああ。これまでで一番、甘い時間だ!」
ココロ:「……ドキドキ。」
第46話:甘々な旅、二人だけの「お好み焼き」




