表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/47

第45話:最後の目的地、約束の「博多ラーメン」(単話) (Day 170)

<ココロの日記>

11月23日 (Day 170)。

旅は、いよいよ最後の場所へ。

博多ラーメンの匂いがする。

ユウタお兄ちゃんが隣にいると、なぜか、怖くない。

ここで、私は、昔の私と、お別れする。

新しい私に、なるんだ。


ココロ視点メイン


軽キャンピングカー『ひまわり号』は、九州の街を走り、博多へと向かっていた。

旅も、いよいよ最終目的地だ。

私の心臓が、ドクンと大きく鳴る。

博多。そこは、ユウタお兄ちゃんが、いつか私を連れて行きたいと話していた場所だ。

ユウタお兄ちゃんが、隣で優しく微笑んでくれる。

その笑顔を見ると、不思議と、怖くない。


「ココロ、いよいよ最後の目的地だぜ!博多ラーメン、食いまくるぞ!」


ユウタお兄ちゃんが、明るい声で言った。

「……うん。」

私は、小さく頷いた。

博多の街は、活気に満ちていた。


たくさんの人が行き交い、屋台からは、濃厚で香ばしい豚骨ラーメンの匂いが立ち上っていた。

その香りは、私の中の『ただいま』と、この街の『おかえり』が静かに重なったようで、胸の奥がじんわりと温かくなった。


旅の終わりが近い。けれど、私は一人じゃない。


ユウタお兄ちゃんの隣で、この景色も、この匂いも、ちゃんと「思い出」にできる気がした。


博多駅に到着した私たちは、まず、博多のシンボルである博多ポートタワーへ向かった。

エレベーターで展望台へ昇ると、そこには、広がる博多の街並みと、遠くまで続く海が見えた。

風が強く、髪が乱れる。

見渡す限りの景色に、私は、心臓が大きく鳴った。

初めての場所。

この旅が始まる前は、遠い九州の地で、こんな景色を見られるなんて、想像もできなかった。


ユウタお兄ちゃんが、私の手を、ぎゅっと握ってくれた。

その温かい手の感触が、私を安心させてくれる。

「大丈夫だ、ココロ。俺がついてる。」

彼の声が、私を支えてくれる。

私は、ゆっくりと、展望台の手すりに寄りかかった。

かつては、絶望しか感じなかった場所が、今は、ユウタお兄ちゃんの温かい手と、広がる景色に満たされている。

私は、展望台の真ん中で、ゆっくりと、目をつむった。


見渡す博多の街の灯りに、私の“旅”が、全部詰まっているような気がした。


北海道の朝日。長野の温泉。明石焼きの湯気。

ユウタお兄ちゃんの笑顔、あの夜の肩の温もり。


全部が、ここに集まって、今の私を作ってくれた。


そして、ゆっくりと、目を開けた。

そこには、あの時の私じゃない。

ユウタお兄ちゃんが隣にいる。

私は、もう、一人じゃない。

過去の自分と、ここで、完全に決別する。


公園を後にし、私たちは博多のラーメン屋へと向かった。

博多ラーメン。

白い豚骨スープに、細麺。

上に乗せられた、チャーシューとネギ。

香ばしい匂いが、食欲をそそる。


「はい、ココロ。博多ラーメンだぜ!熱いから気をつけてな。」


ユウタお兄ちゃんが、どんぶりを差し出してきた。


「覚えてる? ユウタお兄ちゃん……。旅の一番最初に、言ったよね」

私は、ラーメンの湯気越しに、ユウタお兄ちゃんの顔を見つめた。

「え?」

ユウタお兄ちゃんは、きょとんとした顔をしている。

「“最後は博多でラーメン食おう”って」

私の言葉に、ユウタお兄ちゃんの瞳が、大きく見開かれた。

「……言ったな。冗談のつもりだったのに。」

彼の声は、少しだけ、震えている。

「私、ずっとその言葉を信じてた。だから、ここまで来られたの。」

そう言うと、ユウタお兄ちゃんの顔が、赤くなったのが分かった。


私は、ゆっくりと箸を取り、麺をすくい上げる。

一口食べる。

濃厚な豚骨スープが、口いっぱいに広がる。

細麺が、スープによく絡む。

この旅で、私は、たくさんの「美味しい」に出会ってきた。

その一つ一つが、私を強くしてくれた。


食べ終えた後、私の感情が高まった。

過去と決別できた喜び。

そして、ユウタお兄ちゃんへの感謝。

私は、思わず、彼の服の襟を掴んで、自分の方へと引き寄せた。

顔が、すぐそこにある。

彼の吐息がかかる距離。

互いの唇が、触れるか触れないかの寸止め。

その瞬間、私の心臓が、大きく鳴り響いた。

言葉はいらない。

この瞬間が、全てを物語っている。


ユウタお兄ちゃんが、私の頭を優しく撫でてくれた。

その手の温かさに、私は、心から安堵した。

この人となら、どんな未来も、怖くない。

この旅は、私を、引きこもりから解放してくれた。

そして、未来への、大きな一歩を、与えてくれた。

私にとって、この旅は、人生そのものだ。


言葉なんて、いらないと思ってた。

でも、今だけは、彼女にこう言いたかった。


「好きだよ、ココロ」


喉元まで出かけたその言葉を、俺は、静かに飲み込んだ。

言えない。

まだ、言えない。

だが、その感情は、確かに俺の胸の中で、大きく膨らんでいた。

伝わらなかった本音。

それでも、この旅は、まだ続く。


<ユウタのVlog再生画面のコメント欄>


「博多ラーメン!飯テロ最高!ユウタくん、ココロちゃんの過去を乗り越えさせてあげて!」

「ココロちゃん、過去と向き合ったんだね…感動した!」

「二人の絆、どこまでも深まっていくね…」

「博多ラーメンのキス寸前シーン、マジでドキドキした!」

「ココロちゃんの『ずっと信じてた』に号泣した…神回!」


<ココロのSNS(X)タイムライン>

**ココロの投稿:**

旅の最終目的地、博多に来ています。ここで、昔の自分と、お別れしました。 #博多 #旅 #新しい私

**コメント:**

「ココロちゃん、よく頑張ったね!感動した!」

「ココロちゃんの写真、いつも勇気をもらえるよ!」

「ユウタくんとの絆、素敵すぎる!」

「これからも、二人の旅、楽しみにしてるね!」

「ココロちゃんのあの言葉、ユウタくんにも届いたかな?」


<ココロの心情>

博多ラーメンは、温かくて、私に強さをくれた。あの場所で、過去と完全に決別できた。ユウタお兄ちゃんが、隣にいると、私は、どんな困難も乗り越えられる。この旅は、私にとって、最高の希望だ。


<次回予告>

ユウタ:「ココロ、旅の最後に、二人だけの甘々タイム、過ごさないか?」

ココロ:「……甘々?」

ユウタ:「ああ。これまでで一番、甘い時間だ!」

ココロ:「……ドキドキ。」


第46話:甘々な旅、二人だけの「お好み焼き」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ