第28話:東北から関東へ!東日本縦断の旅と「宇都宮餃子」の誘惑(中編) (Day 88-90)
<ココロの日記>
8月31日 (Day 88)。
宇都宮に着いた。
街中が、餃子の匂いがする。
ユウタお兄ちゃんが、食レポを頑張ってくれるって言った。
私、できるかな。
ちょっとだけ、ドキドキする。
ユウタ視点とココロ視点を交互
「ココロ、宇都宮餃子、食いまくるぞ!」
俺は満面の笑みで、隣のココロに声をかけた。
昨日は、久しぶりに旅館に泊まって、ゆっくり休めた。
ココロも、浴衣姿で思わぬ色気を見せてきて、俺の理性はぶっ壊れそうだったが、なんとか乗り切った。
今日の目的地は、宇都宮だ。餃子の街。
これぞ、東日本縦断の旅の醍醐味の一つだろう。
「……楽しみ。」
ココロは、小さく頷いた。
その瞳は、もう、以前のような怯えはない。
むしろ、新しいものに出会うことへの、純粋な好奇心が宿っている。
「食レポも、頑張ってくれるよな?」
俺がそう言うと、ココロは「……え!?」と目を丸くした。
そうだよな。ココロは、まだ人前で話すのが苦手だ。
でも、この旅で、少しずつ変わってきた。
そして、この餃子の魅力なら、きっと彼女も伝えられるはずだ。
宇都宮の街は、餃子の匂いで満ちていた。
香ばしい焼き餃子の匂い。ニンニクの食欲をそそる香り。
街のいたるところに、餃子専門店がひしめき合っている。
「わー、すごい!」
ココロが、珍しく大きな声を出して、目を輝かせた。
その姿に、俺は思わず笑みがこぼれた。
よし、この餃子の魅力を、Vlogで最大限に引き出してやる。
俺たちは、まずは行列のできている人気店に並んだ。
店の前には、たくさんの人がいる。
ココロは、一瞬、身を硬くしたが、俺がそっと手を握ると、すぐに力を抜いた。
人混みの中でも、もう、以前のように怯えることはない。
二人の間に、自然なスキンシップが生まれている。
その繋がりが、俺には、何よりも心強かった。
テーブルに運ばれてきた焼き餃子は、こんがりと焼けた狐色。
羽根つきのパリパリとした皮が、食欲をそそる。
箸でつまみ上げると、ずしりとした重みが伝わってくる。
一口食べると、肉汁がじゅわっと溢れ出し、口いっぱいに広がる。
野菜の甘みと、ニンニクのパンチが絶妙なバランスだ。
「うめぇぇぇぇぇ!」
思わず叫んだ。
Vlogのカメラに向かって、俺は餃子の魅力を熱弁する。
「ココロ、お前も食ってみろよ。これ、マジでヤバいから!」
俺が促すと、ココロは恐る恐る餃子を一つ、口に運んだ。
その瞳が、大きく見開かれた。
「……美味しい。」
か細い声だったが、その表情は、感動に満ちていた。
そして、その瞳の奥に、何かを「表現したい」という、微かな光が宿っているのを感じた。
「ココロ、もしよかったらさ、この餃子の写真、撮ってみないか?お前が撮る写真なら、きっと、この餃子の美味しさが、もっと伝わるはずだ。」
俺はそう言って、K-1 IIを差し出した。
ココロは、一瞬、迷ったようだが、やがて、ゆっくりとカメラを受け取った。
ココロ視点
街中が、餃子の匂いがする。
香ばしくて、食欲をそそる匂い。
ユウタお兄ちゃんが、楽しそうに餃子を食べている。
「これ、マジでヤバいから!」
そう言われて、私も一つ、口に運んだ。
熱い。
でも、それ以上に、美味しい。
肉汁が、じゅわっと口の中に広がる。
こんなに美味しいものを、もっとたくさんの人に伝えたい。
そう思ったら、自然と、手が伸びていた。
ユウタお兄ちゃんが、K-1 IIを差し出してくれた。
私は、K-1 IIを構え、餃子にレンズを向けた。
どうすれば、この美味しさが伝わるだろう。
光の当たり方。湯気の立ち方。
餃子の皮のパリパリ感。中のジューシーな肉汁。
全てを、このカメラに収めたい。
夢中でシャッターを切った。
ユウタお兄ちゃんが、隣で優しく見守ってくれている。
彼の目には、私が何を見ているのか、きっと分かっている。
その夜、私は、自分のスマホを開いた。
今まで、SNSに投稿することなんて、考えられなかった。
誹謗中傷が怖くて、自分の殻に閉じこもっていた。
でも、この旅で、たくさんの人に出会った。
ユウタお兄ちゃんが、いつも隣で支えてくれた。
私の写真が、誰かの心を動かした。
そして、今日の餃子。
この感動を、誰かに伝えたい。
そう、強く思った。
迷いながらも、私は、自分が撮った餃子の写真を選び、SNSに投稿した。
「宇都宮餃子。とても、美味しかったです。」
たった一言。
でも、それは、私にとって、大きな大きな一歩だった。
私自身が、社会と、再び繋がろうとしている証拠。
<ユウタのVlog再生画面のコメント欄>
「宇都宮餃子!飯テロ最高!ユウタくんの食レポ、安定のうまさ!」
「ココロちゃん、餃子食べてる姿が可愛すぎ!癒されるー!」
「二人の食べっぷり見てたらお腹減ってきた!」
「餃子の写真、誰が撮ったの!?プロ級じゃん!」
<ココロのSNS(X)タイムライン>
**ココロの投稿:**
宇都宮餃子。とても、美味しかったです。 #宇都宮餃子 #旅Vlog
**コメント:**
「ココロちゃん、投稿再開おめでとう!待ってたよ!」
「ココロちゃんの写真、やっぱり素敵!餃子めっちゃ美味しそう!」
「ココロちゃんがSNSに!感動した!」
「この旅で、ココロちゃん、本当に変わったね!」
<ココロの心情>
宇都宮餃子は、私に、新しい勇気をくれた。初めて、自分の気持ちを、自分の言葉で、外に発信できた。ユウタお兄ちゃんが、隣で優しく微笑んでくれる。この旅は、私を、もっと自由に、もっと強くしてくれる。
<次回予告>
ユウタ:「ココロ、旅の途中で、まさかの写真展の誘いだってさ!」
ココロ:「……え!?」
ユウタ:「お前の写真が、プロの目にとまったんだぞ!」
ココロ:「……私、の写真?」
第30話:写真展への誘いと、新たな才能の発見!輝く「浅草雷門」(前編)




