第26話:引きこもりの過去と、向き合う勇気!「わんこそば」の先にある希望!(後編) (Day 82-84)
<ココロの日記>
8月25日 (Day 82)。
今日は、あの場所に来た。
怖くて、足が震えた。
でも、ユウタお兄ちゃんが隣にいてくれたから。
わんこそば。
私、頑張る。
新しい私に、なるために。
ココロ視点メイン
軽キャンピングカー『ひまわり号』は、見慣れた、でも、私にとっては一番見たくない場所に停車した。
私が通っていた中学校の、すぐ近くにある公園。
あの時の、苦しい記憶が、津波のように押し寄せてくる。
体が、震える。
息が、苦しい。
「ココロ、やっぱり無理そうか? 無理なら、引き返すぞ。」
運転席のユウタお兄ちゃんが、ミラー越しに、私の顔を覗き込む。
その優しい声に、私は、小さく首を横に振った。
ここまで来たんだ。
ユウタお兄ちゃんが、私を信じて、ここまで連れてきてくれたんだ。
もう、逃げない。
私は、ゆっくりと車のドアを開けた。
ひんやりとした風が、頬を撫でる。
公園には、誰もいない。
だけど、あの時の、笑い声や、心ない言葉が、幻のように聞こえてくる気がした。
足が、地面に吸い付いたように動かない。
ユウタお兄ちゃんが、私の隣にそっと立ってくれた。
彼の大きな手が、私の手を、優しく握ってくれる。
その温かい手の感触に、私は、少しだけ、勇気をもらった。
「よし! じゃあ、まずは腹ごしらえだな!
わんこそば、食いに行くぞ!」
ユウタお兄ちゃんが、明るい声で言った。
わんこそば。
この場所での、私にとっての、新しい挑戦。
それは、私自身の「過去との決別」を象徴している。
わんこそば屋へ向かう道すがら、私は、あえて公園の中を歩いた。
かつては、絶望しか感じなかった場所が、今は、少しだけ、違って見える。
ユウタお兄ちゃんが隣にいるから。
わんこそば屋の暖簾をくぐると、店の中は、活気で満ちていた。
「へい! お待ちどう!」
威勢のいい声が響く。
目の前に置かれた、朱塗りのお椀。
そして、その横には、たくさんのお椀が積まれている。
わんこそばは、食べた分だけ、お椀が積み重なっていく。
それは、まるで、私がこの旅で乗り越えてきた困難の数みたいだ。
「ココロ、いよいよ、わんこそばの挑戦だぞ!」
ユウタお兄ちゃんが、楽しそうに言った。
「……頑張る。」
私は、小さく、でもはっきりと答えた。
給仕さんが、私のお椀に、次々とそばを入れてくれる。
「はい、じゃんじゃん!」「はい、もう一杯!」
最初は、戸惑った。
こんなにたくさん、食べられるだろうか。
でも、ユウタお兄ちゃんが、隣で応援してくれる。
「頑張れ、ココロ!」「いけるぞ!」
彼の声が、私に力をくれる。
私は、無心で、そばを口に運んだ。
温かいだし汁が、冷えた体に染み渡る。
ツルツルとした麺の食感。
一枚、また一枚と、お椀が積み重なっていく。
汗が、額を伝う。
必死に食べる私の姿を、ユウタお兄ちゃんが、じっと見つめているのが分かった。
その真剣な眼差しに、私は、ドキッとした。
まるで、私の全てを、受け止めてくれているような。
その視線が、私を、もっと強くしてくれた。
「はい、おしまい!」
給仕さんの声が響き、私のお椀に蓋がされた。
数えきれないほど積み重なったお椀の山。
完食。
私は、大きく息を吐いた。
体の疲れは、あった。
でも、心の中は、達成感で満たされていた。
この場所で、わんこそばを完食する。
それは、私にとって、あの公園での、辛い記憶と決別するための、大きな儀式だった。
私は、できた。
自分は、もう「落ちこぼれ」じゃない。
そう、強く思えた。
「ココロ、よく頑張ったな!」
ユウタお兄ちゃんが、満面の笑顔で、私の頭を優しく撫でてくれた。
その瞬間、私は、思わず彼に抱きついた。
彼の体に触れると、心臓の鼓動が、トクトクと聞こえる。
彼の温かい体温が、私を包み込む。
その鼓動が、私に、生きていることの喜びを教えてくれた。
この人となら、どんな未来も、怖くない。
この旅は、私を、過去から解放してくれた。
そして、未来への、大きな一歩を、与えてくれた。
<ユウタのVlog再生画面のコメント欄>
「ココロちゃん、わんこそば完食とかマジか!感動した!」
「ユウタくん、ココロちゃんのことちゃんと支えてるの、本当に尊敬する!」
「過去と向き合うココロちゃん、かっこよすぎ!」
「二人の絆、もう家族じゃなくてカップルだろ!」
<ココロのSNS(X)タイムライン>
※第26話時点では、まだ投稿を再開していないため、コメントは表示されません。
<ココロの心情>
わんこそばは、私に、大きな達成感をくれた。あの場所で、過去と決別できた。ユウタお兄ちゃんの隣にいると、私は、どんな困難も乗り越えられる。この旅は、私にとって、最高の希望だ。
<次回予告>
ユウタ:「ココロ、いよいよ関東上陸だぜ!」
ココロ:「……東京?」
ユウタ:「いや、まずは宇都宮だ!餃子食いに行くぞ!」
ココロ:「……餃子!」
第27話:東北から関東へ!東日本縦断の旅と「宇都宮餃子」の誘惑(前編)




