本音の向こうには
翌日キャンプ用品をホームセンターで一通り買って我々は出発した。インドア派のわたしは近場で済ませたいと考え千葉県勝浦に決めた。大浴場の予約間に合うかなと思い急いでTELしてみると予約が取れた。昨晩紫ちゃんを誘ってみるとOKだったので女三人男一名になった。紫ちゃんは23区東部なので首都高を錦糸町で降り迎えに行った。
運転は私、助手席亜紀で後部座席に美麗と紫ちゃんが座った。
「食材とかかなり適当に買ったので足りなかったらコンビニで買い足すけどいいよね」ほとんど決定事項なので文句は言わせないが(出資者だし)
「キャンプと関係ないですが梅澤さんとわたし付き合ってるので一応言っておくね」紫ちゃんの眼光が光ったように見えた。
「たぶん都条例で逮捕案件だと思います。いいんですか」紫ちゃんが追い詰めて来る。
「確か結婚を前提とした真面目なお付き合いなら良かったんじゃないかな。良く知らないけど。あと梅沢さんの祖父公認だよ」むしろその祖父に後押しされたんだけどねとも伝えた。
「梅沢さんの方はいいんですか。祖父に後押しされて仕方なくって泣き寝入りしてませんか」紫ちゃんの攻撃が的確にヒットして握ってるハンドルが蛇行しかけていた。
「紫ちゃんちょっと誤解してるみたいだけどわたしが先に好きになったんだ。今わたしは本当に幸せなんだよ」亜紀が助け舟を出してくれた。
「とか何とか言って俺と亜紀の間でどっちにしようか迷ってたんだよな。スケコマシロリ好きさんは」
「え!?そんなに爛れた職場だったなんて…」紫は深刻な顔で考えていた。
「次のインターで降りて引き返します。メンタルがこれ以上は持たないので」私は本気で言った。
「待てって謝る言い過ぎた。振られたけど俺が初めて惚れた男だからいい男だ。保証する」美麗はまだ私のこと好きなのか。一途だなと思った。
キャンプ場に着くと私はまずテント張り。初めてだがわりと上手く行った。魔法少女3人は昼食づくりだ。亜紀以外は包丁すらまともに扱えない様子だった。私は炭に火を点け肉やソーセージ、野菜を焼いた。
ここに付いてから短パンとタンクトップに着替えたんだがどこからか熱い視線を感じていた。意外なことに紫だった。私の身体がどうかしたのかと聞いてみると
「あの、筋肉凄いですよね。マッチョさんだったんですね」紫が答えた。
「ああこれね。中学生だと運動部の連中でもここまでないかもね。でもジム通ったらすぐだったよ」美麗が私を触ろうとするのを亜紀が腕力で捻じ伏せていた。あれもかなり凄い気がするが。
食事を終え3人がドッチボールで遊びだしたので私は周囲を散歩することにした。家族連れと会社の仲間たちと来ている客が多かった。友人が少なく引き籠り気味の私だったがサークルの飲み会だけはわりと行ってた気がした。異性との出会いは多くはないからだ。合コンの話が多い学校ではあったがお前が独り占めしちゃうからという理由でメンバーから外されたりもした。その合コンにはTVで有名なアイドルも来ていたからけっこうがっかりした記憶がある。この会社に来て女子中学生二人からもモテたのでたぶん私は女性から見ると魅力的なんだろう。ただ陰キャの皮を取り去っているだけなんだけど。
森林浴できる場所を見つけたので腰を下ろして一休みすることにした。夜はテントを抜け出して亜紀とここに来たいな。せっかくキャンプに来たイベントとして彼女とキスくらいしたいから。いや美麗に悪いから止めておこう。
テントに戻ると女性陣が居なかった。風呂まではまだ時間があるしどこかを散歩しているのかもしれない。初夏の昼間にテントで寝たら熱中症で命が危なそうだったので車に戻り寝ることにした。
夕方になって美麗にたたき起こされた。
「ちょっと探したからな。風呂入るからお前も行くぞ」美麗がそう言ったが、あれは一コマだけの予約で風呂は一つだろう。私はみんなと一緒に入れないから行ってきなと言ったのだが
「水着買って来たんだよ全員分、お前のもあるから来いって」と言うので付いて行ってしまった。
亜紀は青のセパレート、美麗はピンクのセパレートだが下は白のパレオ付きで紫が水色のワンピだった。亜紀を見ると条件反射で大きくなってしまうので外を眺めていた。
「おっさん、なんでこっち見ないんだよ。お前のために買ってきたんだぞ」美麗の言葉を無視した。
「秀樹さんに見て欲しかったかな」女神の声がしたので振り向いてガン見してたら紫がじっと見てた。
「ほんとに亜紀さんのこと好きなんですね。ロリコン扱いしてすいませんでした」と謝罪された。いや君のワンピにも物凄く反応してるから間違ってないよ紫ちゃん。
「てめえ俺だけ無視してんじゃねえよ。お前のためにかわいいの選んだんだからな」と頭を叩かれた。はいはい分かってますよ美麗さん。あなたを見たら嫉妬深い彼女が恐ろしいから見てないだけです。と思ってたら美麗が抱きついて来た。柔らかい胸の感触がして危険だったので泳いで逃げたら亜紀が美麗にチョークスリーパーを掛けてた。美麗は降参とその手をバンバンと叩いていた。
三人が身体を洗いに行ったので水着でどうやって洗うのか見てたら水着の下から手を入れ洗ってる亜紀が居た。見え、と言いそうになって口を抑えると紫は水着をへその辺りまで下ろし、何故か美麗はトップレスになっていた。天国は確実に存在する。
「おっさんが喜んでるぞ亜紀くん」と美麗が言うので亜紀は真っ赤になり紫は慌ててワンピースの紐を肩に掛けたが美麗は水着のブラを付けようとしなかった。
「お前が喜ぶことを止めるわけねえだろ」意外な返事が返って来て亜紀ははっとして私を見た。つい先日振ったばかりなのに何を考えてるのか。その美麗の胸を見てむぅという顔をする紫ちゃん。きっと君には違う需要が間違いなくあるので自信を持つんだ。亜紀が身体を洗い終えたので手招きしてこっちに呼んだ。
「間違いなく美麗のことは振ったからね完全に。さっきの美麗の言ったことに正直困惑してる」
「諦めきれないんだよまだ美麗は。気持ちが分かるからわたしも怒れないよ」亜紀も困惑していた。
「どういうことか説明していただけますか元山さん」いつの間にか紫ちゃんが横に居た。ここまでの成り行きを説明して紫ちゃんはうんうんと頷き納得したようだ。
「さて更衣室も同じだから先に行ってて。私は身体洗ってるから」と言って二人を行かせた。私だけ得するイベントだと思ったけど見せるために買って来たって美麗は言ってた。彼女らは時給がいいのでタクシーを呼んでそれぞれ選んで買ってきたんだろう。それにしても男女の風紀には実はうるさい美麗が後ろ姿とは言えトップレス姿を私に見せてたのには驚いた。色仕掛けとか好きじゃないだろお前は。
風呂を出た後は定番のレトルトカレーを食べその後花火をした。仕事の話しとかみんなの学校での話しとか聞いてたら夜が更けてきたので解散することにした。テントは2つあり女性陣は三人で私は一人で寝ることにした。
「ガールズトークがしたいならほどほどでどうぞ。私はもう寝る」ほんとは亜紀を連れ出して散歩中見つけた場所に連れ出したかったが美麗の奇行が気になってそれは諦めた。疲れていたのであっという間に睡魔に襲われそして眠った。
「おい起きろ。ちょっと話がある」美麗に突然起こされた。
「亜紀の許可貰ってるから心配すんな」亜紀もいろいろ後ろめたいところがあるのかも知れないな。
車で近くのコンビニまで飲み物を買いに行った。美麗は大人しく付いてきて何も喋らなかった。黙ってる美麗は本当に名前のように美しいと思った。
戻って車を出ようとするとここでいいと美麗に引き留められた。運転席に戻るとピンク色のキャミの肩紐を下げた美麗が居た。咄嗟に私は目を逸らした。
「この下も下げた方がいいか。言うとおりにするぜ」ブラ紐も下げようとしたので私は紐を掴んで元の位置に戻した。
「美麗の気持ちは嬉しいし今の行為も興奮した。お前は物凄く魅力的だ。だけどダメだ。俺は亜紀との未来しかもう見えてないんだ」嘘は言いたくなかったから率直に言った。すると今度はキャミそのものを脱いだ。
「もう俺に触るなよ。スマホは今ワンクリックで110番に掛かるようにセットしてある」美麗は俺を脅した。上半身ブラだけになった美麗と話をしなければならなくなった。そして向かい合って話をしてくれと言われたのでその姿の美麗を見続けなければならなくなった。
「お前を困らせたいたい訳じゃねえんだ。ただ確認したいことがあったから呼んだ」美麗が言った。
「亜紀とお前がたったの二日目で付き合い始めたと社長は言ってた。それでピンと来たんだ。お前初日に亜紀の変身姿見ただろう」美麗の言うとおりだと私は答えた。
「あの姿に悩殺されてお前は亜紀と付き合い始めた。それはフェアじゃねえ」と言いながら私の手を自分の胸に位置に持ってきた。私の頭の中は性欲でぐちゃぐちゃなった。
「触らなくても見りゃわかる。お前のアレ今ぱんぱんになってるだろ」私は頷いた。しかしどうしろっていうんだ。
「ああそうだよ、もし順番が逆だったら美麗と付き合ってた。ただの出会いの順番だけだった。だからなんだって言うんだ。世界なのか神なのか知らないが亜紀との出会いを先にしたのは俺じゃない。二日後お前に声を掛けたのは魅力的な女性だと思ったからだ。お前と亜紀は私のなかじゃ同等なんだよ。真実を全部言ったぞ。でも今言ったことを亜紀に話したら俺はお前を一生恨むから」
たぶん私は今大きな間違いを犯した。真実を言えば、嘘を付かなければ正義という訳じゃない。むしろこれで二人とも傷つくことになる。でも言いたかったから言った。亜紀も真実を知りたいから私と美麗が二人きりになることを許した。だから最後にこう言った。
「亜紀に今言ったことをお前が話したら間違いなく彼女は俺から離れていく。でもそうなったとしても絶対に美麗とは付き合わない。絶対に」これ以上話すことはないからと言って車を出た。
女子中学生相手にあまりにも酷なことを言ったのは分かってる。だけどそうするしかないところまで私も追い詰められてた。




