決断
亜紀と美麗の二人は私が居ない間もイービルに対して大きな戦果を上げ続けていた。今のところラスボス的存在が攻めてくることはあまり無さそうだ。同じような敵が襲って来ているのだから。名古屋のアレはたぶん中ボスくらいの存在だろう。ただ人材の確保は急務だ。彼女らの身の安全を確実にするために。私が出て行ってもまた肋骨をへし折られるだけだろうから。
「社長、新たな魔法少女を勧誘しに都内をうろうろしてきていいですかね」軽いノリで尋ねたら社長はまたしても親指をビシッと立てた。マイブームかなんかなのだろうか。
名刺を大量に持ち歩いて都内巡回をしたが結果は思わしくない。最近の精神状態がイマイチなのも原因だろう。東京がダメなら千葉埼玉神奈川も回るつもりでいた。今日は東京の外れにある女子校前で活動することにした。中高一貫の女子校でわりと名門だった。バランスを考えて小さい子を狙っていた。小さいと言うのは年齢ではなく身長だ。ほぼ同身長の亜紀と美麗の二人より素早く動ける人材が欲しかったから。
一時間くらいしてなかなかの素材を見つけた。おかっぱで小学生かと見間違えるような小さな中学生だ。
勧誘しようとしたら防犯ブザーを鳴らされそうになった。が、なんとか怪しくないを十回くらい繰り返して話をすることが出来た。まず疑ってるのはこの魔法少女ってとこだと思うので会ってみてくれないかなというと、彼女は家に戻って着替えてくるので待っててくれますかというので快諾した。待ち続けて1時間半が経過しこれは逃げられたなと思っていたら小さな影が近づいて来た。
「お待たせしてすいませんでした。けっこう家まで遠いもので、これでも結構急いだのですけど」約束を破るタイプじゃなくて安心した。私は会社に連絡し亜紀と美麗に待っているように伝えた。ここからだと1時間ほど掛かりそうなことは心配だけどまずはあの二人を紹介してみたいと思った。二人とも自慢の教え子だし。電車の中でまだ契約はしていないので全部は話せないが概要をぼかしながら伝えた。彼女は興味あるのだか無いのだかわからない相槌ばかり打っていた。要はよくわかんないですよと言いたそうだった。契約出来たら別行動で活動してもらうことも考えた。たぶんこの子の家は門限とかに厳しい。だから夕刻までに現れるイービルに対処してもらおうかと。もちろん亜紀と美麗も一緒に。
事務所に到着するともう午後五時を回っていた。私は門限に付いて尋ねたら以外にもわりと融通が利くらしい。事務所には亜紀と美麗が既に待っていた。
「ん、ほんとロリコンだなお前。今度は小学生かよ」美麗が笑いながら言った。
「秀樹さんには考えがあるんだよ。ロリコンとはまだ決めつけられないよ」亜紀の言葉は最近刺さる。
社長や私より実際活動してる二人から実際にやることは説明してもらった。リアリティがあるだろうから。1時間掛けて会社説明と仕事の実際に付いての説明が終わったので謝礼と交通費として三千円渡して帰した。話を聞いてどう思っただろうか。荒唐無稽だけど真実しか言ってないんだけれど。
「彼女がダメでも定期的に勧誘には行くからその間は自習でごめんなお二人さん」私は詫びた。
JC勧誘するなんて荒業あんたにしか出来ねえからお似合いだよと美麗が笑うと、亜紀も若干疑いのまなざしで不安そうに私を見た。心が砕け散りそうですよ亜紀さん…
それよりも今はケリを付けなくてはならないことがあった。亜紀と美麗どちらを選ぶかということだ。本当はこの間決めるべきだった速攻で。だけど心が揺れてしまって今に至る。その揺れも収まった今は早く気持ちを伝えたくて仕方がなかった。
「亜紀、久しぶりに遊びに行っていいかな」そう言ったら嬉しそうに亜紀が頷いた。
時間が勿体ないのでタクシーで向かった。今日面接に来た女の子のことや仕事にまったく関係ない趣味の話とかをした。亜紀は編み物が得意だそうだ。
部屋に入れてもらったら懐かしさに涙が出そうだった。実際には数カ月前なのに。
「亜紀の方から誘ってくれたことが本当に嬉しかった。私からおねだりしたら犯罪臭いし」
「えっと、誘いたかったんです。たぶん一目惚れみたいな感じで。お風呂で寝ちゃったのは計算外でしたけど今ではいい思い出かな」亜紀は初対面を懐かしむように話してくれた。
「奇遇だね。私もそうなんだ。翌日亜紀の祖父にそのことは言ったよ。会った瞬間に恋に落ちてたって。そしたら亜紀を嫁にと勧められちゃったんだけどね」笑いながらそのことを話した。
「それでちょっと話が会って今日は来たんだけど」
その後少し間があって亜紀の目から涙がこぼれ落ちた。
「秀樹さん、わたしこれから振られるんですよね」亜紀が嗚咽に近い声を振り絞って言った。
「私はさ、今まで何人かの女性と付き合ったけど自分から振ったことないんだよね。だから今回は本当に混乱したよ。二人のどちらかを選べなんて言われて」本当にそうだった。
「亜紀、これからもこの頼りない男をよろしくお願いいたします。君が好きです」亜紀を抱きしめて涙をぬぐった。しばらく嗚咽していたが収まってきた時お互い見つめ合いキスをした。
この話題はこれでおしまい。美麗にはきちんと断ってくるよ。
「今日はお祝いにこの格好でいいですよね」亜紀が変身して身体を寄せて来た。亜紀の方がいろいろと危ない感じがするが気のせいだろうか。
「正直嬉しいです。が、いろんな理性が吹っ飛んでしまうのでもどかしいです」亜紀がきょとんとして
「理性より直感でいいと思いますよ。秀樹さんは考えすぎて心の沼にすぐはまっちゃうから」直感の波に飲まれていろいろと性的に大変なことになってるがそれがきっと正解だ。
「それより今日の子どうだった。直感より熟考するタイプだと思うけど亜紀と美麗とは合うと思う」性欲をなだめるため敢えて話題を変えた。
「とっても思慮深い方に見えました。ですがやっぱりロリコンさんですか、秀樹さんって」
「間違ってるけど正解でもあります。どうしてかは今の私見てたらわかるよね」耐えきれず亜紀のお尻を触っていた。もっといろいろなとこ触ったり見たいけど今日はここまで!
「う~ん、私って年齢は確かに若いけどスタイル的にロリコンさんの対象外ですよね」っつ、すぐ傍にあったソファに亜紀を押し倒し舌を深く入れてキスをした。
「ロリコンじゃないのでもうそれくらいで。これでも毎日我慢してるんだから」と言って亜紀の暴走を収めた。亜紀はちょっとえっち過ぎだがそこがいい。
翌日小さな女の子から連絡がありどうぞよろしくお願いいたします。とTELで連絡があったそうだ。新しい風を吹かせて欲しい新戦力だ。不登校の美麗はいいとして亜紀は学校との両立にだいぶ苦労してたのでなんとか仕事を減らして欲しいと社長に伝えた。
「元山君、君ももう知ってると思うがここ東京はイービルが多いんだ。休みを多くしてしまうと名古屋の件みたく凶悪化することが考えられる。大阪でもプロジェクトをスタートさせたがまだ1名でとても救援要請は出せないんだ。なんとか学業と折り合い付けさせるために君が居るのだし申し訳ないがほぼ休みは増やせないな。あ、それから明日の午後5時から彼女初出勤だからね」社長は付け加えた。
翌日出勤前に美麗を銀座のデパートの前に呼び出した。午前11時待ち合わせなのに15分前に来た私より早く来ていた。
「わざわざ呼び出さなくてもLINEで良かったんだよ。お前はほんと面倒くさいな」
「そうかもしれない。この性格のお陰で返事がこんなに遅れたことを謝罪します」
「なんであいつなんだ。俺の口の利き方が悪いからか。そうだったら」私は彼女の弁を遮り言った。
「泣かせたくなかった亜紀を。それだけなんだ」
「そうかよ」
後で会社には行くからと言ってどこかに行ってしまった。ごめんな。お前となら楽しい人生送れた気がする。亜紀が悲しむから絶対に言わないが出会った日が亜紀よりたった二日遅かっただけなんだよ。
「秋山紫と言います。どうぞ今後よろしくお願いいたします」皆で拍手をして歓迎した。人手不足業界で大変な思いすると思うけれどなるべくサポートするから頑張ってと伝えた。
「ところでこの時給って尋常じゃないと思うんですが危険手当なんですか。それとも誇大広告みたいな」なかなかの毒舌家だった。
「危険手当も含まれていますがそれだけじゃないんです。この仕事の重要性をわかっていただきたいからこの金額なんです。時間が遅くなることもありますからね」社長は簡潔に答えた。紫はふむふむと真剣に聞いていた。確かにこの仕事の給料はべらぼうにいい。実は通勤時間も時給に含まれている。会社員なら当たり前だがアルバイトでこれは相当なものだ。
「怪我といえば私は魔法少女でもないのに敵の前に出て肋骨にひび入りました。敵の火力も高いので私たちは常に向上していかなければなりません」私は引き締めの言葉で場を締めた。
これまで振られてばっかりの私だったが美麗を振ることになってしまった。罪悪感が酷いので亜紀の胸に顔を埋めたい。という訳で私の部屋に泊まってもらうことにした。紫ちゃんも誘ったが流石にお泊りは事前に言っておかないとダメだそう。もう美麗は呼べない。亜紀に見せるわけにはいかないが涙がでそうだった。のだが、部屋に着くと美麗が居た。
「なんで居るん?てかどうやって入った??」魔法少女舐めるなよ。ライトニングアタックかましたら余裕だったぞ。ついでに防犯カメラにもアタックしといた。
魔法少女恐るべし。そろそろ魔法名与えてあげないとね。っとそうじゃない。最初の質問に答えてないよ。なんで居るかっていう。
「それは自分の胸に聞いてみりゃわかんだろ。どうせ亜紀にいやらしいことするために呼んだんだろ。亜紀は身体は大人だが学力と年齢は子どもだからな。なんかしたら通報してやるから覚悟しとけ」要するに嫌がらせするために来たんだな。ふと亜紀を見たら後ろ向いてる。たぶんえっちなこと画策してたのは彼女なのだよ美麗くん。
「いつもこの部屋でうだうだしてるのもたりぃし車でキャンプしに行こうぜ」美麗が提案した。
「道具どうすんの?アウトドア派じゃないから何もないよ」
「金持ちのボンボンなんだからそこらで買って行けばいいだろ。キャンプ場は俺が探すからよ」
家主であり車のオーナーでもある私の意見はまったく聞いてくれなかった。と考えていたら亜紀が耳打ちしてきた。
「この部屋で監視されるより開放的なキャンプの方が〇✖し易いかもしれませんよ。美麗ははしゃいで先に寝ちゃうでしょうし」物凄い角度で私自身が起き上がってしまった。早速美麗が通報しようとしてたので慌てて止めた。
そんなことより明日はキャンプです。




