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sunflower.  作者: 和奏 澄
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エピローグ〜ひまわりの花言葉〜

『東京都立美術高等学校 卒業証書授与式』






卒業式そのものにではなく、初めて両親が卒業式に来てくれていることに、私は緊張していた。








「卒業生、入場」








会場に入ってくる娘は、少し緊張しているようでワタシも一緒に緊張してしまった。








―1本

ボク達二人の

『一目惚れ』からこの物語は始まった






「三年生の皆さん、卒業おめでとう。保護者の皆様におかれましても、ご子息ご息女の卒業という門出を、心からお慶び申し上げます。今日こうして卒業して行く皆さんは、これから新しい世界に進んで行くわけですが、本校で学んだ事を忘れずに今後の人生の中で…」




校長先生の話を聞かずに、こっちを向いてボク達に手を振っている。


本当にあの子は、どこまでも『おてんば』だ。








―3本

あの噴水広場で

ワタシ達は『告白』をし合った






順々に名前を呼ばれ、生徒達が三年間学んだ努力と、青春の(あかし)を手にしていく。








―7本

周囲の目を気にしながらも

ボク達は二人で『ひそかな愛』を育んだ






「佐々木 ひまわり」



「はい!」






―11本

『最愛』の娘が生まれ

その子がワタシ達を再び結び付けてくれた






「〝ワタシのほうが緊張してきちゃったよ〟」



「〝ちゃんと見届けよう〟」






―99本

ボク達を繋いでくれた娘と彼女に

『永遠の愛』を誓った






「卒業証書、あなたは本校デザイン科の規定科目を修了したことを、ここに証明します。東京都立美術高等学校、校長 森山英敏(もりやまひでとし)。おめでとう」



「ありがとうございます!」



ワタシ達の大切な娘の晴れ姿は、他のどの生徒よりも輝いて見えた。






―108本

あの決意の日に『プロポーズされて夫婦』となり

家族に戻ったワタシ達は

二人揃って初めて娘の卒業式に参列することができた






こうして、ボク達の娘は無事に高校を卒業した。



「ホントあっという間だったね」と彼女は言った。



ヒマワリを植えて育てることが、ボク達家族の毎年恒例のイベントになって、日々はあっという間に過ぎていった。




「観に行こうか」



ボク達にはまだ観たいものがあった。



「うん!」



また緊張してしまって、ワタシは深呼吸をして心の準備をした。




渡り廊下には、卒業生が制作した作品が所狭しと展示されている。



ボク達は、大切な娘の卒業制作を目指していた。




「あった…凄いな…」



「うん…すごく綺麗…」



ワタシ達は、娘が描いた作品に圧倒され、感動して、さっき出し切ったと思っていた涙が、また溢れ出して止まらなくなっていた。
















『卒業制作』


















『最優秀作品』


















『作者:デザイン科 佐々木ひまわり』























『タイトル:sunflower.』






そこには、ひまわりの咲く花畑の向こうに、白い砂浜と青い海、空に浮かぶ太陽、それを眺める若い夫婦と、その二人と手を繋いでいる小さな女の子の後ろ姿が描かれていた。



まるで、あの日のボク達を見ているようだった。








―999本

ワタシ達はこれからも

ずっと三人で共に歩んでいく




遠回りをしても、カッコ悪くても良い。



ボクは『何度生まれ変わってもこの二人を愛し』

また家族になりたいと願っている。






「パパ、ママ!そんなところで何してるの!?はやく三人で写真撮ろうよ!」





「さすがに恥ずかしくない?」


「もう子供じゃないのになぁ…」


「いいんだよ!ずーっと私は二人の子供だからね!凛、おねがーい!」


「いいですかあ?撮りますよー」




卒業証書授与式と書かれた看板を横に、あの絵のように私を真ん中にして、パパとママと腕を組んで手を繋いでいる写真は、あのアルバムに新しく仲間入りを果たした。






私の名前は『佐々木 ひまわり』



父は『お花屋さん』で母は『女優』をしている。



将来の夢は『絵本作家』で、四月からは念願叶って美大に進学することになった。



私の名前の由来は、母の『花』という名前と誕生日の七月六日の誕生花から、そう名付けられたと思っていた。



でも、誕生花であるということは後から分かったそうだ。



小さな頃、あまり好きではなかったこの名前には『花』だけではない、もう一つのピースがあった。



それは、この名前をつけてくれた父の名前が『太陽』だったということ。



『太陽』に向かって咲く『花』ひまわり、私はこの両親の元に生まれて来れたことを、本当に幸せに思っている。



優しい父と、真っ直ぐな母、その二人を幸せにする為に生まれてきた私。



今では自分の名前が大好きだと、胸を張って言うことができる。








「二人とも早くしないと飛行機の時間に遅れちゃうよ!」



父と母が私の卒業のお祝いに、旅行へ連れて行ってくれることになっていた。






父と母が初めて出逢った








私が二歳の時に初めて三人で行った








私と父が再会した








『また家族として三人全員揃って』








あの想い出の砂浜に。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます。 初めて書いたとは思えない筆致に惹き込まれました。 特に前半、太陽がうつ病に悩んでいるくだりはとてもリアリティがあったと思います。 突然のひまわりの登場にも戸惑う…
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