神託
紀元前ヨーロッパに、テーベという国があった。その国の国王、ラーイオスにはイカオステーという妻がいた。やがてその妻との間に子供を授かった。
王夫妻は、その子を抱え、デルポイの神殿へ、神のお告げ、神託を受けに行った。
「その子を殺せ」
神が言う。
「何故です」
「そこ子はやがて、王であるあなたを殺し、あなたの妻、イカオステーと子供を作るだろう」それを聞いたラーイオスは、子の足を持ち、妻に、踝にブローチを刺すように命じた。イカオステーは泣きながらも、それに従い、子の踝を刺した。そして、その子を羊飼いに渡し、自分の見ていないところで殺せと命じた。羊飼いは命令通り、その子を連れて行った。
それから数十年。隣国のコリントスの王子、オイディプスは、デルポイへと神託を受けに行った。そこで
「お前は、自分の父を殺し、母との間に子を作るだろう」と言われた。それを聞いたオイディプスは、これではいかんと思い、国を誰にも言わずに出、放浪の旅に出た。
途中、三俣に分かれた道で、男の一人旅が故、盗賊に間違われ、2人のうちの1人の老人を殺したこともあった。
やがて、オイディプスは、テーベについた。その頃テーベでは、スフィンクスという化け物が現れていた。怪物は、なぞかけを出し、答えられなかったものは殺した。そんな中、オイディプスも、スフィンクスのターゲットとなった。「1つの声を持ち、朝は4本、昼は2本、夜は3本のものとは何か。その生き物は全ての生き物の中で最も姿を変える」オイディプスが答えると、スフィンクスは死んだ。
その件と、ラーイオス王が行方不明だった事もあり、オイディプスは王になった。やがて、オイディプスはイカオステーとの間に子を4人授かった。
しばらくして、テーベは凶作に見舞われた。オイディプスは、またも、神託を聞きに行った。「この地が凶作に見舞われたのは、前王のけがれが残っているからだ。その王の失踪の理由を探し出すのだ」
オイディプス王はふと妻イカオステーに、王がいなくなった理由を聞いた。イカオステーは、何処に行ったかは知らないが、死んだというのは聞いたと言った。
王は、国中におふれを出した。
「ラーイオスの行方を知っているものは直ちに申し出る事」
何日か経った頃、、1人の男が来た。
「例の件についての話だろう。さあ、話したまえ。」
「いえ、話せません」
「何故だ」
「これは王の為です」
「何?私の為だと」
「はい」
「それはどういう事だ」
「いいのですか。話しても」
「ああ、やれ」
「承知しました。私はラーイオス王と共に旅に出ていました。そこで、三俣に分かれた道で、盗賊にラーイオス王は殺されたのです」
オイディプスの顔は青ざめた。
「そして王、あなたの名前の意味を考えてみてください」
「意味?」
「はい。あなたの名前の意味は、踝に腫れがある者」
今度はイカオステーの顔が青ざめた。あの日の神託は現実になった。イカオステーは、青ざめた顔で、自室へ駆け込み、首を吊った。オイディプスも、イカオステーのブローチを取って自身の両目に刺し、言った。
「私はこの世界を見たくない。私をテーベの外れへ連れて行ってくれ」
部下はその命令に従い、オイディプスをテーベの外れへ連れて行ったのだった。
それからのオイディプスの事は、誰も知らない。