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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第3章 変態パラダイスマンション

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第85話 ウォータースライダー

「け、けっこう高い……」


 プールの端にあるウォータースライダー、その頂上にたどり着くと、すぐにみなもの姿を見つけることができた。

 広い待機場所を囲うように設置されている柵に手をかけ、恐る恐る下をのぞき込んでいる。


「お前、こんなところにいたのか。声くらいかけてくれればいいのに」


「あ、おにいちゃん」


 こちらを見るみなもに悪びれた様子はない。

 むしろ不満げに口を尖らせている。

 

「集合時間はまだ先じゃん。それなのになんでわざわざおにいちゃんに報告しないといけないわけ?」


「それはそうだが……皆でウォータースライダーでもやろうって話になったから、みなもを探してたんだよ」


 そう言って振り返ると、ちょうどラビュたちが階段を上がってきたところだった。

 それを見て、みなもも状況を理解してくれたらしい。

 

 きょろきょろしながら近づいてくるラビュに笑顔を見せている。

 

「ごめんなさい、興味が湧いたからひとりで来ちゃいました」


「しょうがないよ。ラビュもずっと気になってたし」

 

「どこにいても目に入るもんな」


 室内にもかかわらず、ウォータースライダーの高さは15m近く。

 誇張抜きでプールのどこにいても見えるのだから、気になるのはむしろ当然と言っていい。

 

「ところで、入口が2つもあるのはなんで?」


 最後に上がってきた倉橋が、前方を眺めて不思議そうに首を傾げている。

 

 言われてみると、確かに滑り口らしき場所には半透明の管が2つ横に並んでいた。

 一つは直径2mほど、もう一つは直径5mほどだろうか。


「大きさが違うね。同時に滑る人数によって、人口も異なるという感じかな」


 ナギサ先輩が問いかけると、御城ケ崎はコクリと頷く。


「おおむねその通りです。正確には、使用するビニールボートの違いですが……」


「ビニールボート? こっちに置いてあるやつ?」


 みなもが指差す先には簡易の棚のようなものがあり、そこに先ほどナギサ先輩が使っていたようなビニールボートがずらりと並んでいた。


 色こそ様々だが、円形と縦長の2種類の形状しかないようだ。


「はい、縦長のビニールボートは2人乗り用で、こちらを使用される際は右側の小さめの入り口から滑ることになります」


「じゃあ左側の入口は、大きいボート専用? あの丸い形のやつ」


「ええ、4人乗りのビニールボートを使う場合は、左側の入口からです。水が流れる量も多いので、大人数が乗っていても途中で止まる心配はございません」


「ああ、なるほど」


 わざわざ入口を分けたのは水量調整のためか。

 ウォータースライダーの途中で止まるのは興ざめだろうし大量に水を流したいところだが、少人数の時にそれをやってしまうと勢いが出すぎて危険だと。


「ボートって絶対に使わないといけないんですか? 生身のほうが勢いがあって楽しそうですけど」


 こいつ生身で行く気かよ。

 チャレンジ精神あふれる質問をするみなもに、御城ケ崎は優しく微笑む。


「申し訳ないですが、ボディスライダーには対応していないそうです。ちなみに、絶叫系アトラクションのような迫力をお求めになるのでしたら、右の入り口から縦長ボートで滑ることをお勧めいたします。それが一番スピードが出ると聞いておりますので」


「へー、そうなんだ!」


 きらきら輝くみなもの目。

 そんな彼女は棚に駆け寄ると、縦長の二人乗りボートをズルズル引っ張ってくる。


「ほら、おにいちゃん。いくよ」


「まてまて、勝手に決めるな」


「だよね。コータローには、ラビュの水着が吹き飛ばないよう手で押さえながら、ウォータースライダーを滑るっていう大切な役目があるし」


「その役目も知らんが」


 などと答えつつ、俺はあらためて水が勢いよく流れている入口を眺めた。

 ウォータースライダーは初めてだが、そんなに凄いのだろうか。

 

「もしかしてこれって、水着が吹き飛ぶくらいの勢いがあったりするのか?」


「あるわけないよ」


 ナギサ先輩は俺の隣で苦笑していた。

 

「そんなハレンチ製造装置じゃ、営業許可が下りないさ」


「おっしゃる通りです……」


 頷く御城ケ崎は、どこか遠くを眺めている。


「ですからポロリハプニングを発生させるためには、ご自身の手を汚す必要がございます、光太郎様」


「脱がせと言ってるのかそれは」


「まさかそんなことは……」


「ほらおにいちゃん。そういうのいいから、さっさと行くよ」


「分かった分かった」


 ぼやきつつも、みなもに付き合うことにした。

 どうせ最終的には連れ出されるだろうし、断るだけ時間の無駄だ。


「じゃあ、あたしが前ね」

 

 そう言いながら、黄色い線が引かれている所定の位置にビニールボートを置いて、素早く前方に座るみなも。

 続いて俺も、後ろ側に乗り込む。

 

 と、御城ケ崎がスススっと背後に立った。


「準備はよろしいですか?」


「うん」


「おう、いつでもいいぞ……っていうかこれ、どうやってスタートするんだ? 出発のための機械とかも無さそうだが」


 ビニールボートの先端は入口部分からはみ出てはいるが、絶妙なバランスを保っていて、ボートが滑り落ちていく気配はない。

 眼前で流れ落ちていく水流は激しく、水しぶきだけがぴしゃぴしゃと顔面に掛かってきていた。


「こうやります」


 その言葉と同時、ドンという衝撃がお尻に伝わる。


 ビニールボートの後方を、御城ケ崎が思いっきり蹴ったらしい。


「それではお気をつけて……」


 ……人力かあ。

 などと思う間もなく、バランスが崩れたビニールボートはウォータースライダーへと突っ込んで行き、そして――。

 

「キャ~!」


 猛スピードで滑り降りていく!


 これはなかなか…………勢いが…………凄いっ!


 カーブのたびに遠心力が掛かり、ボートごと一回転しそうなほど。


 っていうかこれ、実際に一回転してない!?

 ほんとに大丈夫!?


「ぐぐぐう……!」


 どこからともなくやってくる水が大量に顔面にかかるが、手で拭う余裕などあるはずもない。

 ボートに付けられた持ち手を強く握り、振り落とされないよう必死にこらえる。


 一方みなもは猛烈な勢いに負けたのかずりずりと後ろに下がってきていて、ほとんど俺に身体を預けているような体勢だ。


 その重みに負けそうになりながらも歯を食いしばり、なんとかギリギリで耐えていると――ようやく前方に光が見えてきた!

 

 出口だ……!

 

 ビニールボートが勢いよく光の輪へ突っ込んでいく。


 そして――激しい水しぶきが上がった。

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