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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
序章 新人風紀委員・連城光太郎と見目麗しき少女たち
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第8話 女体研究部の半分は幽霊部員でできている。(前編)

「にょ……?」


女体研究部(にょたいけんきゅうぶ)だよ。これから一緒にがんばろーね、コータロー」


「…………」


 俺、そんな部活、知らない。

 というかそんな卑猥な名前の部活で、頑張りたくない。


 葛藤がすべて吹き飛んでしまうほどの衝撃を受けた俺だったが、しかし聞き間違いではなかったようで、あらためて入部届を見せてもらうとそこにはたしかに『部活名――女体研究部』と書かれていた。


 ……まったく見てなかったな。


「女体研究部って、なにをやる部活なんだ?」


「もちろん女体を研究する部活だよ」


「だろうな」


 むしろ違う答えが返ってきた方が驚いただろう。


「でもさっきマンガを研究するようなことを言ってなかったか?」


「それはラビュが勝手にやるだけ。部活としては、女体を研究するのがメインだから」


「……マンガ研究部で良くない?」


「ラビュも最初はそう思ったんだけど、本当にマンガ好きな人が来ちゃったら、あーしろこーしろ言ってきそうで、いろいろめんどくさいでしょ? ほら、ラビュって自分の王国をつくりたいタイプだから」


「学園で自分の王国を作ろうとするなよ。というかそもそも、そんな名前の部活じゃあ学園側の許可が下りないんじゃないか?」


「取れてるよ」


「は?」


「部活名がOKかどうか、あらかじめ聞いておいたから。ナギーがそうしろって」


「確認を取ったら、学園の許可が出た?」


「うん。理事長がいいよって」


「叔母さんなにやってんの……」


 もう少し良識を発揮してくれ、頼むから……。


 俺ががっくりと肩を落としていると、黒髪少女がフォローするようにおずおずと話し出す。


「あの……ラビュさんがWEB(ウェブ)マンガを描いていることはこの学園では有名で……もちろん作品自体の知名度も高く、愛読者も多い……」


「……それで?」


 彼女の言葉は今の話とあまり関係が無いように思えたが、ひとまず俺は続きを促す。


 黒髪少女はどこか遠くを見ながらつぶやいた。


「『女体研究部』。それは主人公が所属する部活の名前なのです……」


「そのマンガほんとに人気あるのか?」


「あります……。ネット上には何万人ものファンがいるんです……」


「ほー」


 なんとなく凄そうなことは伝わってくるが、正直よく分からず生返事になってしまった。

 けれど黒髪少女は気にした様子もなく言葉を続ける。


「ですのでこの学園で女体研究部といえば、『ああラビュさんのマンガに出てきたアレか』となるわけです……。まして作者本人が所属しておられるのですから、どなた様もスッと納得されるかと……」


「なんか歪んだ常識としか思えないんだが」


「かもしれませんが、学園側はすでに認めていますから」


「むう……」


 それを言われると、ぐうの()も出ない。

 まあ、変わった名称のマンガ研究部という扱いなら許可がおりてもおかしくないのかな。


「しかし、部員って最低5人は必要なんじゃなかったか? さっき人数はそろってるって言ってたが、俺とナギーって人を入れても、4人しかいないように思うんだが」


 俺とラビュ、黒髪少女にナギーという先輩。

 あわせて4人だ。

 部活名は理事長の許可があったとしても、部員数に関してはどうしようもないと思う。


「ううん、足りてるよー。コータローで6人目だから」


「ん? じゃあ他に2人いるってことか」


「そだよ。せっかくだし、自己紹介をしてもらおっか。おーい、ひっかりーん」


 ラビュはソファに座ったまま、窓に向かって声を掛ける。


 ここは4階だし、まさか空から来ることは無いだろう……と思っていると、窓の端に寄せられていた緑色のカーテンの中からバッと少女が飛び出してきた。

 まるで気付かなかったが、今までずっとその中に隠れていたらしい。


 少女はにこにこと微笑んでいる。


「コータローが入部してくれることになったから、ひかりんも自己紹介ヨロシク!」


「うん、わかった!」


 どこにでもいそうなごく普通の少女は、やはりニコニコと微笑みながら片手を上げた。


「こんにちはっ! この部活の幽霊部員として務めさせていただきます、部員Aこと倉橋(くらはし)ひかりです! 全力で幽霊になりきってみせますので、よろしくご指導のほどお願いしますっ!」


「…………は?」


「ウンウン、ひかりんは相も変わらず元気イッパイだね。雰囲気も明るくなるし、すっごくイイよ」


 倉橋ひかりと名乗った少女は、てれてれと頭をかいている。


「えへへ、実はよく言われるんです! あ、あと何事にも真面目でコツコツ頑張れるほうだから、幽霊部員も途中で投げ出さず、最後まで続けられると思います!」


「私も応援します……一緒にがんばりましょうね、ひかりさん……」


「うん、がんばろうね、ゆらちゃん!」


「ちょ、ちょっといいかラビュ」


「どしたのコータロー?」


 話しについていけなくなった俺は、戸惑いつつ尋ねる。


「幽霊役の部員ってなんだ?」


「ああ、それ? もともとはラビュとナギーだけで部活を作りたかったんだけど、人数があと3人も必要で……。だから私のマンガのファンだって子に声を掛けてみたの。幽霊部員でもいいから入部してーって。ファンの子ならラビュの邪魔をしないし、いいかなって思ったんだよね。ただ……」


 そこで言葉を切ったラビュは、部員Aこと倉橋ひかりを見つめた。


 彼女は全身から緊張感を(みなぎ)らせながら窓に近付くと、カーテンにくるまり、顔だけ出してジッとこちらを見つめてくる。

 そのどこか微笑ましい様子を見ながら、ラビュは笑顔でつぶやく。


「幽霊部員のことを、幽霊役の部員と勘違いしちゃったみたいで。なんか面白いし、説明せずに放置中なんだー」


「ラビュさんにはそういうところがあります……」


「いやそんな軽く済ませていい話じゃないだろ。ちゃんと教えてやんないと……」


「え、えへへ」


 視線が合った倉橋は照れたように笑い、そしてカーテンの中へと消えていく。


 ま、まあ本人も楽しそうだし、別にいいのか……?


「じゃあ次はユーラね」


 自己紹介は続くらしい。

 俺が視線を向けると、黒髪の少女は恥ずかしそうにうつむいた。


「あの……幽霊部員の……部員Bです……」


「キミも幽霊部員なんだ……。しかもBのほう……。えっと幽霊部員だからユーラってよばれてるのか?」


「……」


「ん?」


 ユーラと呼ばれた少女は、上目づかいでじっと見つめてくるだけで、肯定も否定も無い。

 身動きすらしない。

 

 もしかして……この子も幽霊になりきってる?


 幽霊部員のことを幽霊役の部員だと思っている人間が、1つの部活に2人もいるとは思わなかったが、目の前の現実を受け入れるしかないのだろう。


「あのね!」


 俺が黒髪少女との交流を諦めかけていると、カーテンから倉橋が飛び出てきた。

 彼女はわたわたと両手を動かしている。


「その子は御城ケ崎(ごじょうがさき)ゆらちゃんっていうの。ゆらちゃんだからユーラ。かわいいよね!」


「へえ」


「あっ、あたし幽霊なのにごめんね? すぐ戻るから!」


「お、おお」


 『幽霊なのにごめん』か。


 どうやら倉橋は倉橋なりに誇りをもって幽霊部員をやっているようだ。

 だとしたら俺が口を挟むようなことでは無い。


 なにに情熱を燃やすかは、自分で決めていいんだ。

 俺が変態パラダイス村の再建に情熱を燃やすように、彼女は幽霊役の部員として過ごすことに青春を捧げる。

 それでなんの問題も無いのだ。


「ユーラは凄いんだよ」

 

 再びカーテンへと消えていく倉橋にシンパシーを感じていると、ラビュが俺の隣で胸を張っていた。


「凄い?」


「超優秀なの。資料撮影用のカメラマンになってくれるし、ラビュとナギーがもめたときの審判にもなってくれるから」


「審判? ほー」


 どういうことなのかはよく分からないが、黒髪少女が苦労人だということだけは伝わってくる説明だ。


 きっとラビュのワガママに振り回されているのだろう。


「ご、ごほんっ!」


 と、なにやら咳払いが聞こえた。

 見ると御城ケ崎が顔を赤くしながらこちらを見ている。


「ご、御城ケ崎ゆらと申します……いまも言葉につまってしまいましたが……男性の方との会話が不得手(ふえて)で……これからも一緒にいると、いろいろご不快な思いをさせてしまうかもしれませんが……」


「いや、気にしすぎだろ。言葉につまったくらいで迷惑とか、そんなことないから」


「ありがとうございます……そう言っていただけると助かります……ちなみに趣味は隠し撮りです」


「突然なに言ってんの!?」


「この部屋にもいくつか隠しカメラを設置させていただきました。今はラビュさんのスカートの中を撮影しております」


「流れるように犯行を自白してくる!」


「あの、別に自白とかではなく……せっかく同じ部員になれたわけですから――」


 御城ケ崎は、キリッとした表情で俺を見た。 

 

「光太郎様には、隠し事をしたくなかったのです……」


「カメラは隠してるのに……?」


 我ながら正論だと思うが、御城ケ崎の隣でラビュは首を振っていた。


「ラビュが許可したから」


「許可?」

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