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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第3章 変態パラダイスマンション

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第75話 みなも主催! おにいちゃん誘惑大作戦! その2(みなも視点)

 ――それから30分後。

 準備が整ったあたしたちは、おにいちゃんをリビングに呼び出すことにした。


 呼び出し役を買って出てくれたのは、明星先輩。

 意外だったけど、この人もわりと協力的だ。


「なんですか? 話があるってことですけど」


 おにいちゃんは疑うこともなく、明星先輩に連れ出されたようだ。

 そのちょろさ、ちょっと心配。


「はい、それなんですけど……ちょっとこのあたりに立っててもらえますか?」


「はい? このソファの前ですか? まあ、別にいいですけど……」

 

 ソファの陰に潜むあたしは、おにいちゃんが予定の位置に着くのを見計らってから、ゆっくりその場に立ち上がった。

 

 異様な気配を察したのか、フッと振り向くおにいちゃん。

 その視線があたしの姿を捉え――次の瞬間、目がカッと見開かれた。

 

「……お、お前、なんだその格好は……」


 そしてなにかに怯えるかのようにジリジリと後ずさりしていく。


 機を逃すまいと、あたしは体を揺するようにして移動を開始。

 じわじわとおにいちゃんに近づく。

 

「どーお、おにいちゃん? あたし、かわいい?」


 ギラギラした食い入るような視線が、あたしの全身をなめまわしているのが分かる。

 ――大量の重ね着をした、雪だるま状態のあたしを。

 

「お、おまえ、そんなはしたない格好はやめろ!」


「はしたなくなんかないよ。ただ重ね着してるだけじゃん」


「ぐ、ぐぐう」


「まあ確かに効いてるようだ。私としては、みなも嬢がただ着ぶくれしているだけにしか見えんが……」


「かわいいのはかわいいよね。雪だるまみたい」


「………………」


 遠くから見守るギャラリーの声は、おにいちゃんの耳には届いていないらしい。

 相も変わらず瞳をぎらつかせ、こちらをじっと見ている。


 あたしはそんなおにいちゃんの理性を完全に消し去るため、さらによたよたと近づく。


「ね、おにいちゃん、感想は? かわいい?」

 

「ぐうううっ!」

 

 荒ぶるおにいちゃんは、心の葛藤に打ち勝つためか、勢いよくこちらを指さした。


「そのやけに分厚いジャンパーが生み出す、丸みを帯びた独特のフォルム! 思わずむしゃぶりつきたくなるような、肉感的な服装! いくら何でも卑猥すぎる! みなも、いますぐその服を脱ぎなさい!」


「肉感的……?」


「卑猥……?」


 疑問の声があがるなか、あたしはさらに接近。


「ふふふ。見てよ、おにいちゃん。あたし歩くの下手だから」


「ぐううううう! そのトテトテとしたペンギンのような拙い歩きが俺の心を惑わせる! というかお前、ブーツの素材も分厚いじゃないか、いったい何を考えているんだ! あと室内で靴を履くな!」


「その注意が最後に来るんだ……」


「一応新品なんで、汚くはないんですけどね」


 みんなの声を聞きつつ、とうとうおにいちゃんの目の前にまでたどり着いたあたしは、どや顔で尋ねる。


「ちなみにおにいちゃん。これ、何枚重ねしてると思う?」


「……な、何枚なんだ?」


「――49枚だよ」


「49枚ィィィ!?」


「さっきから大興奮だねぇ、光太郎くん」


「なんというか重ね着の枚数で興奮する人は初めて見たな」


「それはそれとして、49枚は確かにすごいよね」


「本当は50までいきたかったんですけどね。残念なことに、洋服が破れそうだったので諦めることにしたんです」


 たしかにあれは惜しかったと明星先輩の言葉に内心同意しつつ、あたしは前かがみになっているおにいちゃんの頭をなでなで。


「ほ~ら、お兄ちゃん、いいこいいこ」


「や、やめろぉっ! ひっつくなぁ! 袖で俺の頭をなでるなぁ!」


 よしよし、ずいぶんへろへろになってるみたい。


 ここで第二陣の投入といこう。

 あたしは背後を振り向いた。

 

「出番だよ、ギャル先輩!」


「う、うん。どうかな、タロタロ……?」


「キッチンの奥から雪だるまの2体目が出てきたぞ」


「ぐぐう……」


「連城さんは早くも片膝をついてますね」


「ね、タロタロ……」

 

 あたしと同じようにぺたぺたと歩みを進めるギャル先輩は、おにいちゃんの目の前で立ち止まり、恥ずかしそうに顔を伏せた。

 

「ウイカいま、何枚重ね着してると思う……?」


「な、何枚なんだ?」


「19枚だよ」


「19枚ィィィ!?」


「19枚でも大興奮なんだ……」


「お兄ちゃんは4枚以上重ね着すると興奮するからね。それ以上は誤差みたいなものだし」


「それはあれだな。冬が大変だな」


「でも寒い季節はお兄ちゃんも重ね着してるから、その分なんかテンションが低くって。だからこそおにいちゃんが薄着になる夏場に重ね着をする、これが一番効くわけ」


「そうなんだ! メモメモ……」


 なぜかメモを取り出すひかりちゃんを尻目に、おにいちゃんの瞳は欲望に曇り始めていた。


「ち、ちなみにだけど……重ね着の詳細を聞いてもいいか……?」


「詳細?」


「ああ……おそらくTシャツで枚数を稼いでるんだろ? トレーナーは何枚着てるんだ……? 分厚い生地が全体に占める割合はいったいどれくらいになる……?」


「ええっとぉ……」

 

 予想外な質問に、困惑するあたし。

 おにいちゃんの重ね着好きっぷりを甘く見てたかも。

 

 正直に言うと、あんまりちゃんと覚えてないんだよね。

 あらかじめリストでも作っておけばよかった。

 

「まずはもちろん下着だろ……?」


「え?」


 下着?

 

「えっと……確かに下着は付けてるけど、重ね着の枚数には含んでないよ?」


「含んでないの!?」


 ありのままに答えただけなのに、おにいちゃん的には意外だったみたいで、驚愕の表情を向けてくる。

 なるほど、普通は下着も含むのか……。


「い、いや待て! だとしたらお前の重ね着枚数は……」

 

「あ、そっか。下着も含んでいいんだったら、50枚の大台に乗ったね」


「50枚ィィィッ!」


「ガッツポーズが出た……」


「あれ? だったらウイカも20枚だよ」


「20枚ィィィッ!」


「ああ、今度は逆の手でもガッツポーズが出た。両手を上げてるから、ほとんどバンザイだ」


「ね、ねえ、妹ちゃん。タロタロも大喜びしてるみたいだけど、ここからどうすればいいの?」


「もちろん仕上げだよ」


 困惑気味のギャル先輩に、あたしは堂々と頷いてみせた。

 おにいちゃんは喜びのあまり重ね着の内訳なんてどうでもよくなってるみたいだし、ここまで付き合ってくれたご褒美をあげないとね。

 

「おにいちゃんは肉体的な接触にはすこぶる弱いからね。このまま密着にいくよ!」


「や、やめろ! そんな恰好でおまえたち……やめろ! 年頃なんだから、あんまり人をからかうんじゃ……や、やめろぉ!」


「なんか洋服のバケモノにまとわりつかれてるようにしか見えんな」


「ですね。ですがあの連城さんの興奮っぷりをみれば、みなもさんが嘘をついていなかったことは明白です。……きっと裸の私が目の前にいても、連城さんは気にしないのでしょうね」


「……まさかとは思うが。瑠理香はやるつもりなのか? その……例のやつを」


「さあ、どうでしょう」


 そんな、先輩組のふたりの会話を小耳に挟み、あたしはにんまりと笑った。


 どうやら今回の重ね着作戦は思った以上の成果がありそうだ。


 となると、さっそく次の段階にいってみてもいいかも?


 明らかに興味津々なギャル先輩と、意外と乗り気な明星先輩を誘って、このマンションの一室を全裸村に変えるのだ。

 うまくやれば、おにいちゃんに気づかせることなく実行できるはず……。


 ギャル先輩と一緒におにいちゃんにまとわりつきながら、あたしは密かに次の作戦を練るのだった。

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