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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第3章 変態パラダイスマンション

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第74話 みなも主催! おにいちゃん誘惑大作戦! その1(みなも視点)

 おにいちゃんに告白をしてから、早数日(はやすうじつ)


 いまやこのマンションは地獄のような様相を呈していた。

 お母さんのわけのわからない気まぐれによって、住人が今までの倍以上に膨れ上がったのだ。


 そんなことある?

 だって自宅だよ?

 あり得なくない?


 ただ幸いなことに、みんな悪い人ではなさそう。

 そのうえナギサちゃんに至っては、おにいちゃん曰く、連城村復活の協力者とのこと。


 だとすればあたしが今すべきは、みんなに牙を剥いてこのマンションから追い払うことじゃない。


 むしろその逆。

 みんなを説得して、全裸村の協力者にする……!

 

 そしてその功績をもって、ラビュにゃんこ先生と交渉するのだ。


 そうすればラビュにゃんこ先生だってあたしのことを無下にはできないだろうし、うまくいけばおにいちゃんの恋人のひとりとして認めてくれるはず。

 

 そうと決めたら善は急げ。

 そもそもラビュにゃんこ先生に先を越されたのだって、あたしがグズグズしてたから。

 同じ失敗を繰り返すつもりなんて無いのだ。

 


「よし。これで全員かな」

 

 おにいちゃんが自室に戻ったのを確認してから、ひとりひとりに声を掛け、あたしの部屋に集まってもらった。


 友達からは広いねと羨ましがられる自室も、さすがに5人も集まると窮屈だ。


 居場所がないのでとりあえずベッドに腰をおろすと、ナギサちゃんが向かいの壁にもたれかかるようにして立ち、不思議そうに首を傾げている。


「それで、話っていうのは? 連城君の姿が見えないみたいだけど、彼には聞かせたくない話なのかな?」


 素知らぬ顔で聞いてくるけど、実はナギサちゃんにだけはこれからの展開を伝えていたりする。

 つまり彼女はサクラだ。

 雲行きが怪しくなった時のフォローをお願いしていたわけだけど、予想以上に演技派みたいだし、これは大船に乗ったつもりでいて良さそう。

 

「はい、まさしくそのとおりです。おにいちゃんは健全な男子高校生。そしてここにいるのは綺麗な女の人ばかり。だからこそあたしとしては、ハレンチな展開は絶対に避けたいと思ってて」


「それはまあそうだろうが」


 ドM先輩は床の上であぐらをかいたまま、首をひねっている。

 スカートでそんな体勢になっていても下品に見えないのは、姿勢が良いからだろう。

 

「つまり、光太郎の前では振る舞いに気をつけろという話か?」


「まあそうですけど、でもうちのおにいちゃん変わってるから、『男の人の前ではこうしたほうがいい』みたいな一般的な感覚で判断すると大失敗しちゃいます。だからあたしから提案があって……」


「提案?」

 

「はい」

 

 あたしはコクンと頷いてから、慎重にその提案を口にした。


「この家にいるときは、みんな全裸で過ごすことにしませんか?」


「…………」


 返ってきたのは重苦しいほどの沈黙。

 そして信じられないものを見るような、困惑の視線。


 正直居心地は悪いけど、でも展開としては悪くない。

 むしろ順調に進んでいるくらいだ。

 

「全裸というのはつまりその……全裸ということか?」


 沈黙を破ったのは、ドM先輩。

 まったく意味のない確認だけど、気持ちは分かる。


「はい、その全裸です」

 

「それではむしろ本末転倒だろう。光太郎がいるのに、全裸で過ごすなんてハレンチ極まる。みなも嬢の中では、全裸はハレンチに含まれていないのか?」

 

 委員長さんはあたしの提案に、かなり否定的なようだ。

 この人は受け入れてくれるかもと思っていただけに、ちょっぴり残念。


「えっと、あたしっていうか、おにいちゃんの中で全裸はハレンチに含まれていないんです。だっておにいちゃんは」


「――連城村の出身だから、ですね」


「え、あ……はい」


 ほんわかした雰囲気の美人な先輩さん――たしか明星先輩といったか――から出てきた予想外の言葉に一瞬困惑したが、事情を知ってるのなら話が早い。


「知っている方もいるかもですけど、うちのおにいちゃんは()()連城村の出身で……」


「……」

 

 顔を見回した限り、全員が「あの」に込められた意味を理解してくれたらしい。

 全裸の変態たちの聖地としてニュースでも散々やってたから、今でも知名度は抜群なんだろうね。


「おにいちゃん、子どもの頃はずっと全裸で過ごしてたんです。もちろん村の人たちも裸だったんで、だから全裸の女性なんて見慣れてるんですよ」


「それは……まあそうなのかもしれんが……」


 ドM先輩の勢いが露骨に弱まってる。

 やっぱり連城村の名前を出したのは正解だったみたい。

 

「逆に都会での洋服を着る生活ってやっぱりおにいちゃんとしてはつらいみたいで、そのこともあってこのマンションでは基本的に全裸で過ごしてたんです」


 これに関してはちょっと嘘をついた。

 おにいちゃんは普段から裸で過ごしているわけでは無い。


 でもそのくらいのことを言って皆の罪悪感を煽っておいた方が、これからの話がスムーズに進むはず。

 そもそもおにいちゃんに全裸を好む生態があるのは単なる事実だしね。

 

 なんにせよ大事なのは、ここからだ。

 あたしは兄想いの妹を演じるため、思いっきり悲壮な表情を作った。

 

「でも皆が来たことで、おにいちゃんの全裸時間が消えてしまった……おにいちゃんいっつも頑張ってるから、せめてプライベートな時間くらいはくつろいでほしいじゃないですか。だから皆さんにも全裸……それに抵抗があるのなら、せめて下着姿で過ごして欲しいんです。そうじゃないと、おにいちゃんのメンタルが壊れちゃう……!」


「タロタロが裸になるだけじゃなくて、ウイカたちも脱がなきゃなの?」


「はい。そのほうが全裸村を思い出して、おにいちゃんの至福度が上がるので」


「そっかあ、やっぱりねー」


 あれ?

 なんかこの人はわりと乗り気みたい。

 

 さすがはギャル先輩、露出に物怖じしないなぁ。

 勧誘相手として考えると一番の狙い目かも。

 

「うーん」


 唸り声をあげているのはドM先輩。

 こちらはギャル先輩とは違い、露骨に渋い顔だ。

 やりたくないって感情がはっきりと出ている。

 

「それはもちろん、光太郎の負担にならないよう私も譲歩したいとは思うが。しかしさすがにうら若き男女が、同じ空間で全裸で過ごすというのはなんとも……」


「でもおにいちゃんは相手が全裸だろうと、本当になにも気にしてないんです。むしろ服を着てるほうがエッチな目で見られちゃいますよ」


 これも多少の誇張はあれど、単なる事実だった。

 重ね着にエロスを感じるタイプのおにいちゃんは、下着姿にも水着姿にも興味を示さないし、裸の女の人にだって見向きもしないのだ。

 

「みなも君がそこまで必死に主張するのだから、実際にそうなのだろうとは思う。だが、じゃあやってみるかというには、あまりにも今までの常識と違いすぎるというか……」

 

 それはまあそうだと思う。

 ためらっちゃうのも当然だよね。

 

 でもだからといって、諦めるわけにはいかない。

 だってこの全裸作戦にはおにいちゃんだけでなく、あたし自身の健やかな生活も懸かっているのだ。


 ……今までは翌日が休みの日は決まっておにいちゃんの部屋に潜入して、バレないように洋服を脱がせたりして全裸を堪能していたけど、今後はそれができない。

 そしてお風呂に乱入するのも難しくなる。


 つまり――裸のおにいちゃんを眺める機会が、2週間もなくなっちゃう!

 そんなの絶対ありえない!

 

「……実験をしてみませんか? それを見れば、あたしが言っていることの意味が分かってもらえると思います」


「彼の前に全裸を晒せということか? さすがにそれは――」


「いえ、そんな無茶はいいません。むしろその逆、重ね着実験をしようと思うんです」


「重ね着?」

 

「はい。全裸村で育ったおにいちゃんは、全裸の女性ではなく重ね着をした女性に興奮するんです。その様子を見てもらえれば、あたしが言っていることを理解できると思います」


「それを私にやれと?」


「いえ、とりあえずあたしがするつもりですけど……。ちなみに、あたし以外でおにいちゃんにエッチな目で見られても良いという方はいますか。もちろんドM先輩でも構わないですよ」


「……」


 みんなの顔を見回す。

 先輩たちは躊躇。

 ヒカリちゃんは聞いているのかいないのか、ぼんやり。

 

 そんななか心得顔でナギサちゃんが足を一歩前へ踏み出す――その寸前。


「ウ、ウイカがやってもいい?」


 ギャル先輩が声を上げていた。

 やっぱりこのひとは素晴らしい。

 

 村人候補筆頭だ。


「もちろんです。じゃああたしと一緒に重ね着の限界に挑戦して、おにいちゃんを全力で誘惑してみましょう」

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