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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第2章 ラビューニャ・ハラスメントとセクシュアルなお姉さんたち

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第64話 暗中模索

「……お?」

 

 学校にたどり着くと、普通に正門が開いていた。

 グラウンドも照明設備によって明るく照らされ、校舎も部分的にではあるが明かりが点いている。


「……職員室、誰かいそう。よかったぁ~」


「だな」


 最悪の事態さえ想定していただけに、職員室に光が灯っているのはかなりの安心材料だ。


「とりあえず職員室に寄って、先生に状況を説明しておくか。不法侵入と思われても困るし」


「うん!」


 ラビュとふたり、足取り軽く学校の敷地内を進んで行き。


 ――けれど実際に職員室にたどり着いた俺たちは、その場で立ちすくんでしまう。


「……なんで誰もいないんだよ……」

 

 がらんとした職員室は、明かりが点いているだけで無人だった。

 誰かがいた形跡も見当たらない。

 

 電気が点いている、ただそれだけといった様相だ。

 

「…………」


 意気揚々と職員室の扉をあけたラビュも、今では俺の腕にしがみついている。

 異様な状況に、恐怖を感じたのだろう。


 本音を言えば俺もビビっていたが、ふたりして震えていてもしょうがない。

 

「とりあえずラビュは、もう1回御城ケ崎に電話してみてくれ。俺は叔母さんに連絡を取ってみる」


「うん……」


 なんでもいいから情報が欲しい所だったが……案の定というべきか、叔母さんとも御城ケ崎とも連絡が取れなかった。

 宇佐先生も同様だ。


 まるでこの世界に、俺たちしかいないような心細さ。


 ただ幸いなことに、ナギサ先輩には連絡がついた。

 すがるような気分で、電話越しに状況を説明する。

 

「はい、そうなんです。とりあえず職員室には着いたんですけど、どうにも様子がおかしくて」


『そっか……。さっき城鐘室長とも話したんだけど、室長は今回の事態に革命軍が関与している可能性が高いと考えているみたいだ。いま、先行して留岡さんと獅子宮さんがそちらに向かってる。とりあえずふたりと合流できるまで、君たちはその場から動かないように』


「わかりました。……どのくらい掛かりそうですか?」


『10分ほどで現着。本人たちはそう言ってたね』


「10分!」


 ありがたい。

 そのくらいの時間なら、なにごともなくやり過ごせそうだ。

 

『幸い、ふたりともかなり近くにいてね。とはいえ、そちらの事態が急激に進行する可能性もある。だからマズいと思ったら、合流のことは一旦忘れて即座に学校を離脱すること。その時は、こちらへの連絡も後回しでいい。とにかくキミ達の身の安全が最優先だからね』


「はい、そうします」


『じゃあ悪いけど、そろそろ電話は切るね。くれぐれも周囲の警戒は怠らないように』


「ええ」


 本当はいつまでも話していたいところだが、たしかにそれだと異常事態が起きた時に気付くのが遅れそうだしな。


 電話を切った俺は、不安を煽らないよう軽く笑顔を作ってから、ラビュに向き直る。

 

「ナギサ先輩と話したんだけど、管理局の人たちがこっちに向かってるそうだ。合流できるまでは、この場で待機しよう。ただ、なにかあったらすぐこの学園から逃げ出すから、脱出の心構えだけはしておいてくれ」


「う、うん」


「とりあえず……」


 俺は周囲を見回し、応接机の上に置かれた手のひらサイズの懐中電灯を手に取る。


「これは借りとくか。なにかと便利そうだ」


「目くらましにもなるしね」


「……だな」


 やはりラビュも、この状況を生み出した『誰か』の襲撃を想定しているようだ。


 まあ本当にそんな奴がいるのか今の段階では何とも言えないところだが……でも城鐘室長も、革命軍の関与を疑っていると言ってたな。


 あの人は俺が知らない情報を持っているはずだし、革命軍のやり口も把握しているはず。

 まあ、油断するべきじゃないよな。

 

 気を抜けない10分間になりそうだ。


 と。

 

 ――リロリロリン!

 

「わわっ……!」


「……!」

 

 静寂を切り裂くように、ラビュのスマホが鳴った。

 聞きなれた音色だが、このタイミングはさすがに驚く。


 ラビュもかなり驚いたようで、アワアワとスマホをお手玉していたが、なんとか両手でつかみ画面をのぞき込んでいた。

 

「あっ、ユーラからメッセージがきてる!」


「……! 内容は?」

 

「ちょっと待ってね。えっと……『機械室に閉じ込められてしまいました。申し訳ないですが、キーボックスの右上にマスターキーがあるので、それを持って来てください。ここは、内部からは開かない構造のようです』……だって」


「…………」


「……どう思う?」


「いやなんつーか……怪しいと思う」


 ラビュをがっかりさせるようなことは言いたくないが、さすがにウソもつけない。

 最初のメッセージに比べるとかなり分かりやすい文面だが、どうしても違和感が拭えなかった。

 

「……さっきも思ったが、なんで御城ケ崎はラビュに助けを求めるんだ? しかも電話じゃなくメッセージって……。普通に考えれば学園内で閉じ込められたら、まず職員室に電話するだろ。もし連絡が取れなかったとしても警備担当の連絡先は知ってるはずだし、それがダメでも警察とか……とにかくもっと、どうにかできそうな相手に助けを求めると思う。家で寝てるかもしれないラビュにメッセージを送るだけっていうのは、いくらなんでも変だ」


「うん……なんかラビュも、ユーラ本人じゃなくてなりすましっぽいなって思ってた。……じゃあとりあえず、このメッセージはスルーして、管理局の人が来るまではここで待ってる?」

 

「そうしよう。やっぱりそれが一番安全そうだ」

 

 もっともなりすましだとしたら、連絡が取れない本物の御城ケ崎の現状が気にかかるわけだが。

 

 これについては考えても答えが出るとは思えないし、すべては特別対策室のふたりと合流してからだ。


「でも……」


 お客様用のソファに座ったラビュは、スマホを眺めながらつぶやく。


「うん?」


「なんかこの文章、ラビュたちが職員室にいることが分かってる感じしない? ほら、『キーボックスの右上にマスターキーがあるので、それを持って来てください』のあたりとか」

 

「……言われてみれば、たしかに」


 どこにいるか分からない相手に送る文章としては違和感がある。

 少なくともラビュが学園に来ているという確信が無ければ、こんな文面にはならないような……。

 

 もしかしてどこからか、監視されているのか?


 無人にもかかわらず職員室の電気が点いていたのは、俺たちをこの場に誘導するため?


 ……もしそうなら、ここで待機するのは良くないかもしれない。

 とはいえ、じゃあどこに移動するべきかと言われると判断に困るが……。

 

「あっ……」


 スマホの画面を眺めつつ考えていると、ラビュが小さく声を出す。

 その呆然とした響きに俺は慌てて顔を上げ――。


「…………」

 

 その光景に、愕然とした。


 目の前の廊下の電気が次々に消えていくのだ。

 停電とも違う、明らかに人為的な消え方。


 まるで誰かが、遠隔操作しているかのような。


 俺はその場で立ち上がり状況を確認しようとしたが……。

 結局のところそんなものは、無駄な足掻きにすぎない。


 音もなく消える室内灯。

 

 ……職員室が闇に包まれた。

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