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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第2章 ラビューニャ・ハラスメントとセクシュアルなお姉さんたち

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第63話 油断大敵……?

「にひひっ、それじゃあ……」


 いつもの調子を取り戻したラビュは、俺にお姫様だっこをされたまま、妖しく笑う。


「分かってるよね……?」


「ああ……分かってる」


 そう、彼女のお願いはまだ終わっていないのだ。


 ――ねえコータロー。キスして……?


 そのお願いが。


 今更ながら周囲に人が居ないことを確認する俺だったが、ラビュは気にする様子もなく、大胆に俺の首に腕を回した。


 ……ラビュの口から漏れて伝わる、とぎれとぎれの震える吐息。

 彼女の潤んだ瞳をジッと見つめながら、いよいよ訪れる運命の瞬間。


「キス……するぞ」


「キス……するね」

 

 なぜか主導権をアピールしてくるラビュ。

 そしてその宣言通り、こちらにぐんぐん近づいてくる彼女の顔。


 俺も慌てず騒がずゆっくりと唇を近づけていき。

 横顔を夕陽に照らされた俺たちは――深くて甘い口づけを交わすのだった。

 



「……キスして欲しいってラビュが言い出したのに、なんでラビュもキスしてきたんだ……?」


 駅への帰り道。

 ご機嫌なラビュと手を繋ぎつつ、そんなことを聞いてみた。


 別に本気で気になったわけでもないが、ラビュのことならなんでも知っておきたい気分だったのだ。

 

「そだっけ? でもどうだってよくない?」


「どうだっていいってことはないぞ。これからは恋人としてキスする機会も増えるだろうし、もし俺からキスされるのが嫌ならあらかじめ知っておきたいからな」


「んー、別にコータローからキスされるのが嫌だったってわけじゃなくて……」


 ラビュはモゴモゴと口ごもってから、繋いだ腕をぶんぶん振り回す。

 

「……あの時は我慢できなくなっただけ! コータローとキスできるのに、それをただ待ってるだけなんて、できるわけないじゃん!」


「ほう。待ちきれなかったのか」


「うん。待ちきれなかった」


「…………」


「…………」

 

 無言でその場に立ち止まった俺たちは、互いに軽く目配せ。

 

 頷き合ってから、ササッと近場の建物の柱の陰に移動する。

 極太の柱が周囲の視線を遮ってくれることに感謝しつつ、うっとりと見つめ合う。

 

「……ラビュ」


「……コータロー」


 盛り上がった恋人同士は、どんな状況からでもキスにもっていける。

 今の俺は、そのことを身をもって体感していた。


 もし今後、街中でいちゃつくカップルを見たら、絶対に応援してあげよう。

 そんなことを思いつつ。


「キス……するぞ」


「キス……するね」


 やはりキスの主導権に関しては、譲らないのが俺たち流。


 だんだんと互いに顔を寄せていき、吐息さえも混じり合うそんなタイミングで。


 ――ラビュのスマホが鳴った。


「……えいっ」


「むぐっ」


 ぐう、ラビュめ。

 動きが止まった俺の一瞬の隙をついて、無理やりキスしていきやがった。

 

「にひひっ、油断大敵だよね」


「ったく……」


 などと呆れた雰囲気を出しつつ、まんざらでもないのが今の俺だ。

 実際、あそこでキスのお預けを食らったほうがよほどがっかりしたことだろう。


 一方キスの主導権争いで一歩リードしたラビュは、楽しそうに笑いながらスマホを取り出し――そして怪訝そうな顔になる。


「……ユーラからメッセージが入ってる……」


「ん?」

 

 画面を眺めて眉をひそめていたから、てっきり迷惑メールかと思った。

 御城ケ崎から連絡がきて、そんな顔になるか?

 

「どんな内容だよ?」


「それが……」


 困惑の表情のラビュが差し出した画面には――。


 『――今すぐ旧校舎の地下に来て』 


 それだけが書かれていた。


「旧校舎の地下……どういう意味だ?」


「分かんない。……地下って『機械室』のことかな?」


「まあ旧校舎で地下って言われたら、あの鉄扉しか思い浮かばないな。でもあそこって立ち入り禁止だろ?」


「そーだけど、扉の前までなら普通にいけるし、そこに来てってことじゃない?」


「……かもしれんが」


 そもそも今日は休日で学校は休み。

 なぜラビュをそんなところに呼び出すのか、ちょっと意味が分からない。


「休みの日でも、学校って入れんのかな」


「運動部の人は練習とかしてるみたいだし、入れるんじゃない? それにほら、ユーラは警備の人とも知り合いだろうから……」


「ああ、そっか」


 あの学園の警備システムは、御城ケ崎家の物を使ってるんだっけか。

 そう考えると御城ケ崎が旧校舎にいてもおかしくはないな。

 

 あのあたり一帯に張り巡らされた個人的な監視カメラの調整なんて、休みの日でもないと難しそうだし。


「でもラビュに何をして欲しいのかよく分からないし、直接聞いてみるね」


「ああ、そうな」


 ここでふたりで悩むより、本人に尋ねるのが一番いいわな。


 ……しかしスマホを耳にあてるラビュの表情は、冴えないままだ。

 

「――んー、呼び出し音はするんだけど、出ないね」


「そうか……」


 いま連絡が来たばかりなのに、すぐ折り返し電話をしても出ないのか。

 なんかちょっとあれだな。

 不安になってくるな。

 

「えっと……しょーがないし、ラビュは一応学校に行ってみるつもりだけど……」


「ああ、それなら俺も行く」


「いいの?」


「そりゃまあ、恋人だしな」

 

 別に危険があると思うわけでもないが、かといってひとりで行かせる気にもなれない。

 

 メッセージの文面が、妙に雑なのが違和感なんだよな。

 いつもの御城ケ崎なら、要点が分かりやすい簡潔な文章を書きそうなものだが、今回はどういう用件で呼び出してきたのかも分からないし……もしかしてそこまで書く余裕がなかったのか?


 ……誰かに追われてる最中だったり……?


 いやでもそれなら『助けて』とか、『警察を呼んで』とか書くよな。

 わざわざラビュを危険な場所に呼び寄せる必要性もないし。


 そういう意味では、サプライズパーティの呼び出しメールとでも言われたほうが、しっくりくるくらいだ。

 というか、そうであってほしい。

 階段を下りた途端に、背後から御城ケ崎がクラッカーを鳴らしつつ現れ『おふたりは恋人になったそうですね。おめでとうございます』とでもお祝いしてくれれば、俺は心底ほっとするだろう。

 驚かされたからといって、絶対に怒ったりはしない。

 

 ……もっともその場合は俺たちが恋人になったことをなぜ知っているのかという恐怖はあるけど……。

 でもそこは御城ケ崎だし……。

 

 いやしかしなんにせよ、今はそんな妄想の世界に逃げ込んでいる場合ではない。


 御城ケ崎と連絡が取れない以上、最悪の事態が起きている可能性がある。

 現実的な対処が必要だ。


「だめだ。こっちも出ないな……」

 

 学校への移動中、念のため叔母さんや、風紀担当教員である宇佐先生にも連絡してみたが、どちらも電話に出てくれなかった。


 まあ叔母さんは出張中だし、先生だって休日なわけで、急な連絡に気付かなくても仕方がない。


 ただ……職員室に電話しても、誰も出ないのが気にかかる。


 日が落ちてしまったとはいえ、まだ時刻は19時前。

 さすがに誰かひとりくらいはいるんじゃないだろうか。


 ……なんというか、状況に不自然さを感じる。

 まるで罠に誘い込まれているような、そんなひりつく感覚。

 

 それは単なる被害妄想とばかりもいえない。

 

 なんといってもうちの学校は、変態管理局と提携しているのだ。

 それは世間一般にも広く知られた事実であり、そしてつい最近は変態管理官見習いさえ輩出している。

 

 そうなると……変態革命軍が襲撃対象の施設として選んでもおかしくないのでは……?


 念のため。

 なんの問題も無いとは思うが本当に念のため、ナギサ先輩経由で特別対策室にも一報を入れておくことにした。


 こういう時ナギサ先輩は嫌な顔をせずに連絡役を引き受けてくれるので、本当に助かる。


 ……そういえば、慌てていたせいでラビュと恋人になったことを伝えそびれてしまった。


 でもまあそれは、あとで落ち着いてから話せばいいか。

 

 いまはとにかく、俺の心配が杞憂に終わることを祈るばかりだ。

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