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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第2章 ラビューニャ・ハラスメントとセクシュアルなお姉さんたち

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第58話 らびゅらびゅデート(出発)

 かくして俺とラビュはふたりきりでお出かけすることになった。

 男女ふたりで休日にお出かけ。

 

 デート。

 そう表現するとなんだか面映ゆいが、ラビュがそう言い、俺が頷いたのだからこれはデートに違いない。


 まあ目的だって似たようなものだしな。


 ラビュと一緒に遊びまわって、彼女が楽しんでくれたらそれで大成功。

 

 たとえ慰めの言葉がラビュの心に響かなくても、それまでの時間を楽しく過ごせたのなら、今回の目的は達成できたといって過言ではないのだ。

 

 もっとも今回のデートは、連城村の復活を狙う俺にとって大きなチャンスであることも忘れてはいけない。


 ふたりきりの時間というのは、ラビュのことを知るチャンスであると同時に、俺という人間を知ってもらう良い機会でもある。

 ここで俺の評価が上がれば、ラビュが連城村の一員になってくれる可能性も高まるはずで、是が非でもポイントを稼いでおかないとな。

 

 ――さて、そこで質問だ。

 

 デートをするうえで、正しい服装とはなんだろう?

 

 相手が好みそうなファッションにするべき?

 自分のテンションがアガる服装こそ正義?


 もしくは正しい服装なんて無い、そんな答えもありえるだろう。


 だがあえて言おう。それは逃げだ。


 だってデートをするうえで、これさえ着ておけば絶対に間違いないと断言できる服が、この世の中には存在しているのだから。


 ただし――学生限定で。


◇◇◇◇◇


 デート当日の早朝。

 自室で出掛ける準備をしていた俺は、あらかじめ出しておいた冬用の制服を手に取り、うっとりと眺めた。


 そう。デート服の大正解、それは学校の制服である。

 

 それも詰襟タイプの冬服でなくてはならない。

 

 ウソだと思う人は、俺のように実際に手に取り眺めてみればいい。

 

 この漆黒の制服が放つ、息苦しいほどの重厚感と言ったらどうだ?

 誰だって、思わずひれ伏したくなるだろう。

 

 それだけではない。

 アクセントのように縦一列に配置された金色のボタンは闇夜に浮かぶ蛍のように神秘的に輝き、首元まできっちり閉めるためのホックは外からは見えなくとも頑丈な金属製で、学生が心の内に秘めた冷たい情熱を表しているかのよう。

 

 断言しよう。

 デート相手がこの格好で現れたら、どんな女性だってイチコロだ。

 

「よし……」

 

 俺もラビュをイチコロにするべく、さっそく制服を着用して鏡を眺めてみた。

 ……悪くない。いや、かなり良い。


 襟のホックまできちっと止めると、我ながらほれぼれとするような男前が鏡に映った。

 もちろんこれは、俺がイケてるメンズ、通称イケメンだと言いたいわけではない。

 制服が持つパワーが、俺のしょぼくれた顔面に魔法をかけてくれたのだ。

 

 ……村にいたころの俺が、こんなオシャレな格好をした自分を見たら卒倒するかもしれないな。

 そんなことを思い、ひとりでクスクス笑いながら部屋を出た。



「じゃあ、行ってくる」


 一応リビングにも顔を出し、スマホ片手にソファで寝そべっているみなもに声を掛けた。

 からかわれる可能性があるので無視して出発したかったが、ここで声も掛けずに出掛けると数日レベルで拗ねる可能性があったので仕方が無い。


「ま、まっておにいちゃん」


 来た。

 案の定だ。

 

「なんだよ? もうすぐ待ち合わせの時間だから、急いでるんだけど」


 無論嘘だ。

 

 万が一にも遅刻するわけにはいかないし、時間の猶予はかなりみている。

 今から出れば余裕で1時間前には待ち合わせ場所に着くことだろう。


 とはいえこう言っておけば、いくらみなもといえど絡んでくることはあるまい。

 俺は意外と頭脳派なのだ。


「……」

 

 しかしみなもはこちらに声を掛けたきり、ぽかんと口をあけている。

 さすがに違和感があった。


「……どうした?」


「いやどうしたってこっちのセリフ。なんで学生服? しかも冬服って……」


「……デートなんだよ」


 めんどくさくなったので、きっぱりと答える。

 笑われてもいいので、会話を打ち切りたかった。


「ちょ、ちょちょ」


 しかしみなもは焦った様子でソファから立ち上がると、こちらに近寄ってくる。


「で、デート? それでなぜに学生服? え、お、お相手は?」


「ラビュだ」


「……」


 驚くかと思ったが、特にリアクションは無かった。

 その代わり、なにやら難しい顔で考え込んでいる。


 ……気になる反応ではあるが、いつまでも付き合ってはいられない。


「もう行くからな。待ち合わせに遅れる」


「いやいや待って待って! もしかしてだけど、悪ふざけとか向こうの指示とかじゃなくて、シンプルに一番いい服だからそれを選んだりしてる?」


「もちろん」


「だよね。分かってた。あのさ、学生服ってデートには向いてないよ」


「なにをバカなことを」


 あまりにも露骨な妨害行為に、思わずため息が出た。

 洋服について何も知らないと思っているのだろうが、俺だって下調べくらいはするのだ。


「俺が持つ洋服の中で、一番イケてるのがこれだ。ネットでも調べてみたが、学生服を着た男子高校生は人気があるぞ。イラストをたくさん見かけたし、どれも評判が良かった。それに俺が持っている洋服の中で、購入代金が一番高い。つまりデートにも耐えうる上等な代物ってことだろ。ほら見ろよ、この形状の美しさ。そして縫製の整い具合。初めて見たとき、俺は衝撃を受けたよ。これこそ人類の英知がつまった、正装の名に相応しい衣服だと思う」


「そうだね。じゃあ着替えよっか」


 なんだこいつ、あきらかに聞く耳を持ってないぞ。


「あのね、おにいちゃん。今回ばかりはあたしの話を聞いといたほうが良いよ。これ、デートに来ていくような服じゃないから」


「そんなわけがないだろ。からかうのもいい加減にしなさい」


「……デートの時にどんな洋服を着るべきか、他の誰かに相談とかしなかった?」


「するわけない。だってデートだ。俺という人間を知ってもらわないと意味がないだろ」


「うん、まあ、一理あるとは思うけど。それにラビュにゃんこ先生の場合、意外と喜んでくれる可能性もあるとは思うけど」


「だったら――」


「待った待った! この前、着ていったやつがあるでしょ? あれにしなよ。あの服おにいちゃんに似合っててかっこよかったよ」


 この前……。

 アレか。みなもが笑い転げてたやつ。


 まあたしかに他の連中の評判も悪くなかったから、ウソをついているわけではないのだろう。

 

 ただなあ……。

 

「たしかにアレもカッコいいとは思うけど、ラビュに1回見せたからな。特別さが薄れる」


「逆だって。むしろ事前に1回見せてるから、服が持つパワーが最高潮に高まってるよ。制服の取り扱い説明書はちゃんと読んだ?」


「と、取り扱い説明書?」


「はぁーあ、やっぱり」


 呆れた様子のみなもを見て、俺はじわじわと焦りを感じていた。

 だって、取扱説明書なんて全然読んでない。

 

 そもそもそんな物あったか……?


「洋服には、おにいちゃんが知らない効力があるの。事前に女の子に洋服を見せておくことで、2回目に見せたときさらに輝きが増すわけ」


「そんなことが……あるのか……?」


「あたしがおにいちゃんにウソついたことある?」


「いくらでもあるな」


 即答したが、みなもは負けずに言い返してくる。

 

「そのなかで、おにいちゃんにとって大事な状況だったことってある? あたし、どうでもいい場面でしかおにいちゃんをからかったりしないよ。ましてラビュにゃんこ先生とのデートなんて、あたしが邪魔するわけないじゃん。親戚になりたいくらいだし」


「…………うーむ」

 

 みなもの言葉をどの程度信用していいかはよく分からない。

 ただ、ウソをついている感じはしなかった。

 っていうか、俺のデートをぶち壊しにしたいだけなら、もっと他にやりようがあるはずなんだよな。


「ほらおにいちゃん、分かったなら、大急ぎで着替えて! どうせ待ち合わせの一時間前くらいには着く予定にしてるんだろうけど、ぐずぐずしてたらあっという間に時間なんて過ぎていくからね?」


「グッ……」


 猶予時間まで正確に読まれているとは。

 

 ……まあ今回はみなもの言葉を信じるか。


「分かった、急いで着替えてくる」


「うん、私も着替えを手伝ってあげるから」


「おう! ……おう?」


「ほらほら脱いで脱いで」


「……なぜついてくる」


「んー?」


「んーじゃない。着替えはひとりでできるから、大人しくソファにでも座ってろ」


「……はーい」

 

 渋々といった様子でソファに戻っていくみなも。


 まったく、時間が無いと言っておきながら、なぜそんなボケをしてくるんだ……。

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