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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第2章 ラビューニャ・ハラスメントとセクシュアルなお姉さんたち

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第52話 重ね着シュアルさん

 華真知管理官に連れられてやってきたのは、管理局内にある『特殊訓練室』という小さな部屋だった。

 

 見た目の印象は病室に近い。

 中央にベッドが2台並んでいる以外は棚などもなく、椅子がいくつか壁に寄せて置かれているだけ。

 飾りっ気があると訓練の邪魔なのかもしれないが、それにしてもなんだか寂しい場所だ。


「よいしょっと。では光太郎さんはこちらにどうぞ」

 

 背もたれ付きの椅子を部屋の奥から引っ張り出し腰掛けた華真知管理官は、目の前のベッドを指し示す。


 向かい合う形でベッドの端に座ると、華真知管理官がメモ帳を取り出した。

 

「さて、それでは特訓についてですが……対セクシュアル・ハラスメントということで、一応考えてみましたわ」


「おお、早いですね」


 移動中に考えてくれていたとは、さすがは特別対策室のメンバー。

 エリートの名は伊達ではないな。


 華真知管理官は感心する俺をよそに、メモ帳をペラペラとめくっている。

 おそらくそこには、彼女が蓄積した過去の催眠データが書かれているのだろう。

 

「……セクシュアル・ハラスメント。彼女は嫌がる相手に性的なイタズラをすることを好む。となれば、光太郎さんを心身ともに弄ぶ方法もおおむね想像がつきます」


「それはいったい……?」


「身体の動きだけ取れないようにして、けれど意識は残す。彼女はそういう卑劣なやり方をするはずですわ」


「そ、そんなことができるんですか? 華真知管理官も?」


「まあ、やろうと思えばできますわね」


 まじかよ、拷問のやりくちじゃん。

 裏切り者から情報とか聞き出すときに使うやつじゃん。

 

 本当にこの人が味方側にいてくれて良かった。

 催眠術の使い手が2人揃って革命軍の側にいたら、俺なんかじゃ手も足も出なかったかもしれない。


「今回は初回ですし、ひとまずは催眠というものを実際に体験するだけにしておきましょうか。場所や服装などの具体的なシチュエーションは、光太郎さんが考えていただけます?」


「……シチュエーション?」


「ええ。催眠は、決して万能ではありません。掛けられた側に催眠を解こうという強い意志があれば自力で解除することができるんです」


「自力で催眠を解く! それです、俺が特訓したいのはまさにそれなんです!」


「もちろんわかってますわ。ですが、急いては事を仕損じると申します。ですのでまずは体験から始めましょう。こんな刺激が来たら理性が吹き飛ぶ――そんな催眠を掛けてさしあげます。最終的にそこから抜け出せるようになれば、セクシュアル・ハラスメントの催眠も恐れる必要はありませんしね」


 理性が吹き飛ぶような催眠……?

 それってつまり……エロス体験ってこと!?

 

「い、いいんですか……?」


 思わず欲望が駄々洩れの反応をしてしまった。

 

 華真知管理官も俺の考えていることに察しはついただろう。

 けれどそんな反応に慣れているのか、こちらを馬鹿にするでもなく優しく微笑んでくれた。

 

「もちろんそれがどれだけ変態的な内容だったとしても秘密は厳守いたしますから、ご安心を。それにあくまでも催眠世界のなかで起きる出来事ですから、罪に問われることはございません。ああそれと、もし口頭でシチュエーションを伝えるのが恥ずかしければ、紙に書いてくださいな」


「な、なるほど。たしかに口頭はちょっとあれですね」


 華真知管理官から紙を受け取った俺だが、手に持ったまま躊躇してしまった。

 だって、口頭だろうと紙に書くのだろうと俺の欲望を知られてしまうわけで。

 恥ずかしさは変わらない。

 

 ……とはいえそんなことを言っている場合じゃないんだよな。

 

 抜け出したくないほど理想的な状況を生み出す催眠、それを打破できるようじゃないと、シュアルさんが俺を陥れようとしてきたときに対抗なんてできるわけがない。


「……書きました。これでお願いします」


「拝見いたしますわ」


 俺の欲望が書かれた紙に、ジッと目を落とす華真知さん。

 

 なんかこの状況恥ずかしいな……。

 性癖がバレバレになるわけか。


 俺から頼んでおいてなんだが、マジで呼吸が止まりそうだ。


 と。


 華真知管理官がフッと顔を上げ、何とも言えない表情でこちらを見てきた。


「……質問をしてもよろしいでしょうか?」


「質問?」


「え、ええ。その……互いの考えに齟齬があると、催眠を掛ける際に困りますから」

 

「あ、はい、もしかして書いた内容が分かりにくかったですか? もちろん大丈夫です、なんでも聞いてください」


「それではその……『登場人物:セクシュアル・ハラスメント』『場所:海』。この指定はまあ理解できます。彼女が催眠を掛けるのなら、本人が出てくる可能性は高い。海というのも高校生にとってはとても刺激的な場所でしょうし、素晴らしいチョイスだと思います」


「ありがとうございます」

 

「ただ最後の……『服装指定:重ね着10枚以上希望』というのはいったい……?」


 困惑の表情の彼女に、俺は力強く頷く。

 

「セクシュアル・ハラスメントが、10枚以上重ね着した状態で登場することを希望するということです」


「……水着ではなく重ね着?」


「えっと……俺の好みでいいんですよね?」


「え、ええ。それはもちろんですわ。ただ、ちょっと意外で……」


 意外?


 俺にしてみれば、そんな言葉が出てくることのほうがよほど意外だった。


 女性の刺激的な姿を追い求めれば、自然とそれは『重ね着』に落ち着くだろうに。

 なぜみんなそんな簡単なことも分からないのか不思議でならない。


「女性のボディラインがもっとも美しく見えるのって、やっぱり重ね着を4枚以上してからじゃないですか」


「そう……ですの?」

 

「ええそうなんです。ただ相手は天下に名だたるセクシュアル・ハラスメント、そのくらいのことは当然理解しているはず。だとしたら、俺を誘惑する際は限界ギリギリ……10枚以上の重ね着で攻めてくる可能性がある」


「ど、どうでしょう……そこまで重ね着をすると、着ぶくれして雪だるまみたいになるかも――」


「それがいいんじゃないですかっ!!」


「えっ、えっ?」


 未だに理解できていない様子の彼女に、俺は思わず肩を落とす。

 

「はっきり言って、がっかりです……。まさか特別対策室に所属する変態管理官ともあろう方が、着ぶくれの良さを理解してないとは……」


 ファッションに興味がないのは仕方が無い。

 でも『着ぶくれ性癖』に疎いのはさすがになあ……。


「そ、そんなに重大なことですの?」


「当然です。いいですか、華真知管理官。『着ぶくれ』は近年の変態界で特に注目されているホットワード。流行の最先端といっても過言ではありません。動画配信サイトでは、幾人ものうら若き女性が着ぶくれによってお金を稼いでいるんですよ」


「そうですのね……。正直聞いたことがありませんが……ま、まあそこまで思い入れがあるのでしたら、むしろ問題はありませんわ。これでいきましょう」


「はい、お願いします!」


「ではそのまま静かに深呼吸をしてください」

 

 そう彼女が告げると同時、周囲を甘い香りが漂う。

 さっそく催眠が始まったらしい。

 

 以前ラビュにしてみせたのと同じように、華真知管理官は俺の目の前で扇子をゆっくり閉じていき、そして――パッと勢いよく開く。


 その瞬間、俺は海辺に突っ立っていた。


「う、うおおぉ」


 これはすごい……!

 見渡す限りに広がる海と、足元にまで打ち寄せてくる波。

 砂浜を踏みしめる感触まで再現されている。

 

 どう見ても現実世界としか思えない。

 シュアルさんに催眠を掛けられたときは、身体が重く意識を乗っ取られたような感じだったが、今はそういう違和感すらない。


 ……これを『解く』のはかなり大変そうだ。

 

「あら? 可愛いお客さんね」


「……!?」

 

 背後からシュアルさんの涼やかな声が聞こえてきて、俺の胸は高鳴った。

 

 この景色のクオリティの高さを考えると、その姿は本物とそん色ないはず。

 振り向かないという選択肢はもちろんない。

 

 彼女の魅力的な姿を見たうえで、この催眠世界から抜け出さないと訓練にならないのだ。

 

 俺は深く息を吐き呼吸を整え、そして振り返る。

 そこには――。


「う、うわああああああああ!」


「――強制ストップですわ!」


 華真知管理官の声が響き――次の瞬間、俺は先ほどまでいた訓練室に戻って来ていた。


「はあ……はあ……」

 

 ……いや違うか。

 俺はさっきからずっとここにいたんだ。

 催眠パワーによって海辺にいた気になっていただけ。


 しかし……しかし凄かった……。


「だ、大丈夫でしたか? ものすごい悲鳴を上げていましたが……」


「……大丈夫です……ただ……」


「ええ」

 

「シュアルさんが……あのセクシュアル・ハラスメントが……」


「セクシュアル・ハラスメントが?」

 

「――11枚も重ね着をして出てきたんです!」


 叫ぶ俺を見て、華真知管理官はキョトンとしていた。

 

「……10枚以上の重ね着を希望されてましたわよね?」


「ええ。俺はあくまでも10枚以上としか頼んでいないのに、まさか11枚で出て来るなんて……」

 

「誤差の範囲では?」


「いいえ、重ね着の枚数というものは増やせば増やす程、着るのが難しくなっていくもの。それは華真知管理官も分かりますよね?」


「ええ、まあ……」


「重ね着界隈では、10枚を超えてからの1枚はそれまでの10倍の価値があると主張する人までいるほどです。つまり11枚の重ね着は実質20枚!」


「その計算はさすがに無茶な気がしますわ」


「ふふふ、俺もそう思っていましたよ、実際に見るまではね。……いやあ凄かった。シュアルさんが雪だるまの化身みたいになってたもんなあ」


「それが魅力的な姿なんですの? 雪だるまが?」


「ええ!」

 

「すごく良い笑顔でうなずいて……」


 華真知管理官はなぜか変な顔をしている。

 

「ま、まあそこまで魅力を感じるのは、むしろ良い傾向です。この調子で特訓を続けましょう。いずれ状況に慣れれば、私が強制終了しなくても自力で解けるようになりますわ」


「…………」


 あ、そうだ。

 それが目的だっけ。

 雪だるまシュアルさんの、麗しき艶姿に興奮してる場合じゃない。


 むしろ、「雪だるま? そんな丸っこい姿態に魅力なんていっさい感じないね!」くらいのことを言えるようにならないといけないんだ。


 せっかく華真知管理官も協力してくれるんだ、がんばるぞ!

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