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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第2章 ラビューニャ・ハラスメントとセクシュアルなお姉さんたち

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第44話 思い出話

「なあ、ラビュ。大事な話があるんだ。聞いてくれるか」

 

「大事な話……」


 試着室の中ラビュは目を伏せ、パチパチとまばたき。

  そしてなにやら緊張感を漂わせながら、上目遣いでこちらを見つめてきた。


「あのね、一応確認なんだけど……」


「ああ」

 

「それってエッチなお願いだったりする?」


「そういうのではない」


「しょっかー」


 彼女は露骨にがっかりしていた。


 ラビュらしい反応ではあるが、話が変な方向に向かっていきそうで、俺はちょっと慌てた。


「そういう話じゃないけど、でも俺にとっては大事なことなんだ。――ラビュの安全に関わることだから」


「……安全?」


「ああ。ちょっと前置きが長くなるが……聞いてくれるか?」


「……うん」


 ラビュが素直に頷いてくれたことにホッとしつつ。

 

 ……昨日も散々考えてみたが、結局のところ革命軍の悪質さを理解してもらうには、なによりもまず連城村と父さんの素晴らしさを知ってもらわないといけない。


 そうでないと、父さんに対する『変態村の変態村長』などという世間の悪評に、惑わされてしまう可能性がある。

 変態犯罪者である連城双龍を監禁している革命軍の行動にも一理あるのでは……なんて思われると、今回の作戦が失敗に終わりかねないのだ。


 だから俺は軽く咳払いをしてから、ゆっくりと口を開いた。

  あの懐かしい日々を……俺がもっとも満たされていた少年時代の全てを、ラビュに伝えるために。


「――幼いころの俺は、いつも裸だった」


「え……!?」


 突然の告白に驚いた様子のラビュを、俺はじっと見つめる。


「家にいるときはもちろん、野山を駆けまわるときも裸、学校に登校するときも裸、そして授業を受けるときでさえ俺は裸のままだった」


「ちょ、ちょっと待って、コータロー。急になんの話を……」


「先生に注意されなかったのかって?」


「聞いてないよ」


「そんな経験一度もない」


「そっか。でも聞いてないよ」


  こちらが一方的に説明することに困惑気味なラビュだったが、それでも俺は話し続けた。


  俺の幼いころの記憶を。あの美しき連城村で過ごした日々と――その終焉を。

  そして、話は佳境にさしかかる。


「逮捕された父さんは――脱獄したらしい。火事が起きたどさくさにまぎれて、拘置所から姿を消したのだとか。けれど俺は、嘘だと思う。だって本当に父さんが脱獄したのなら、なによりも先に俺の前に姿をあらわしてくれるはずだ。俺がどれほど心配しているかわからない父さんじゃ無いし、絶対に来てくれる。それなのに、いまだに連絡すら寄越さないなんて、どう考えてもおかしい」


「うん……うんうん! ラビュもおかしいと思う!」


  だんだんと俺の話に引き込まれたようで、ラビュも目にうっすらと涙を浮かべながら頷いていた。


  ここだ、と判断した俺はバッと勢いよく両手を広げる。


「そして分かったんだ! 父さんの居場所が!」


「ど、どこなの!?」

 

「――変態革命軍。それこそが拘置所を襲撃し、父さんを誘拐・監禁していた凶悪極まりない犯罪組織の名前だ」


「へんたい……かくめいぐん……」


  記憶を探るような表情になったラビュだが、特に心当たりはなかったようだ。

  そんな彼女に、ゆっくり頷いてみせる。


「人を人とも思わないような、ろくでもない連中なんだ。なにかに利用できると考えて父さんを誘拐したみたいだけど、当然父さんは協力を拒否。その結果、今も監禁は続いてるわけだ。そしてそんな変態革命軍は……もしかすると次に、ラビュを狙うかもしれない」


「ラビュを……?」


「ああ。ハラスメント家が持つネームバリューは、彼らのようになんの後ろ盾も無い犯罪組織にしてみれば喉から手が出るほど欲しい代物。だからラビュも、危険なことに巻き込まれないよう注意してほしい。仲間になるように誘われても、絶対にその場では頷かずに俺に連絡してくれ」


「そっか……。うん、ありがとコータロー。誘われても絶対にそんな奴らの仲間にはならないから、安心していいよ」


 よしっ、思いのほかすんなり納得してもらえた。

 練りに練った俺の話術が、うまく嵌まったのだろう。


「じゃあ、ラビュはお着換えするから、ちょっと外に出ててもらえる?」


「ああ、もちろんだ」

 

 笑顔のラビュに促され試着室を出る。

 話が済んだ以上、彼女の機嫌を損ねるリスクを負う必要は無い。

 

 試着室のカーテンを閉めホッと安堵の息をつく。

 

 とりあえずこれで最悪の事態は防げた。

 あとは時間を掛けてゆっくりとラビュの勧誘を進めていけばいいな。


 ◇◇◇◇◇

 

「ありがとね、ユーラ。イッパイお世話になっちゃった」


 全てが終わって、ホクホク顔で総括するラビュ。

 彼女の胸元には、『Gojo』のマークが入った大きな買い物袋がある。


 結局、自分たちで選んだ商品以外にも、御城ケ崎セレクトとでも言うべき大量の下着のプレゼントがあったのだ。


 かなりの出費だったろうに、御城ケ崎は涼しい顔で笑っている。


「お気になさらず。こちらも眼福でしたので」


「がんぷく?」


「目がしあわせという意味です。おかげさまで、皆様の下着姿を大量に拝むことができました」


 ……試着の際は声を掛けろというのは、そういう狙いがあったのか。

 でもそれって単なる覗きでは……?


「ほっほー。でもだったらラビュもガンプクだったよ。ユーラの下着姿はレアだもんね」


「うっ……」


 恥ずかしそうに顔を背ける御城ケ崎。

 まあお互い様か……。


 真っ赤な顔で上品に手を振る御城ケ崎に見送られながら、俺たちはショップ「Gojo」をあとにしたのだった。

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