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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第2章 ラビューニャ・ハラスメントとセクシュアルなお姉さんたち

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第41話 いざゆけランジェリーショップ

「ここなの……?」


 みなもの言葉は疑問形ではあったが、どう考えても違うだろうと確信しているように思えた。


 土曜日、御城ケ崎の案内で訪れたその場所は、繁華街にある女性向け商業ビルの一角。

 ただし、彼女が入ろうとしているのはどう考えても工事中のテナントで、白いパネルで周囲を覆われている上に、近日オープン予定なんて看板まで置かれているのだ。


 どこか違う場所と勘違いしているのではないだろうか。


 とはいえ看板の前に立った御城ケ崎は、やたらと堂々としていた。


「心配ご無用です……ここは我が御城ケ崎家が経営しているお店なので……オープン前ですが入る許可がおりました……」


「えっ! じゃあもしかして、看板に書いてあるGojo(ゴジョー)って……」


「うん。ここ、ユーラのお家がやってるんだよ」


「ウソ!? 高級ブランドじゃん!? 高すぎて私には買えないって!」


 ファッションに詳しいみなもが驚愕するほどか。


 たぶん女性向けとしては最上位クラスなのだろう。


「代金はお気になさらず……。今回試着したものはすべてわたくしが買いあげ、みなさまにプレゼントいたしますので……」


「い、いいの……?」


「もちろんです……その代わりどこのブランドの下着を使ってるか聞かれた際は、Gojoとお答えください。特にラビュさんはお願いしますね……」


「分かってるって!」


 なぜか下手したてにでる御城ケ崎と、これまたなぜか胸を張るラビュのやり取りを見つつ、俺はつぶやく。


「なんかあれだな。スポンサー契約的な感じだ」


「実際そのようなものです……。御城ケ崎の下着ブランドは、幅広い年齢層から支持されていますが、値段の関係から若年層はどうしても弱く……。そこで皆様のお力を借りさせていただくことにしたのです……」


「力を借りる?」


「はい……若い女性層へアピールするには、下手に広告を打つよりも、同年代の女性に口コミで広げてもらうのが一番ですから……」


「ほー」

 

 なるほど、いろいろなやり方があるものだ。


 ただ正直に言うと、今回集まったメンツの口コミ拡散力にはあまり期待できそうにないと思う。

 ラビュや倉橋、そしてナギサ先輩。

 あまり友達が多いタイプではないよな。

 

 ギャルの柚子島あたりがいればまた違ったんだろうが……。


 そんなことを考えつつぼんやりしていると、なにか勘違いでもしたのか御城ケ崎が申し訳なさそうな表情を俺に向けた。


「ただ……Gojoでは男性向けはやっておりませんので……」


「別にいいって」


 俺はあくまでも、ラビュと話す機会が欲しくてついてきただけだからな。


 そもそも俺の場合、下着が無くても別に平気だし、高級ブランドなんて無用の長物というやつだ。


「いいえ、そんなわけにはまいりません……光太郎様には後日、わたくしが手縫いした男性用下着を差し上げますのでどうかお許しを……」


「いやホントに気を遣わないでくれ。マジでマジでマジで」


「お兄ちゃんは自分で縫えるからね」


「うん、そうなんだが、別にそういう意味で断ったわけではない」


 そんな心温まる会話を交わしつつ、白いパネルに備え付けられた扉から、御城ケ崎の先導でテナントの中へ。


「ほう」


 一歩足を踏み入れるとそこは華やかな女性用下着が所狭しと並べられていて、みなもの付き添いで下着売り場自体は見慣れている俺にとっても新鮮な驚きがあった。


 しかし高級ブランドというわりには落ち着いた要素がなく、ピンクを基調としたかなり派手なショップという印象だな。

 若い女性向けだからか?

 それとも下着屋は、高級ブランドもこんな感じなのだろうか。


「それでは皆様、お好きな下着をお選びください……試着ももちろん可能です……ただ感想を聞かせていただきたいので、試着の際は必ずわたくしに声をかけてくださいね……」


 御城ケ崎は俺たちにそう告げたあと、お店の奥にいる店長らしき若い女性に声を掛けに行っていた。


 なんだかんだでしっかりしてるよな、御城ケ崎は。

 俺と同い年なのに、すでに社会人のような風格がある。


「ねえねえおにいちゃん」


 ぼんやりしていると、服の裾をクイクイ引かれた。


「おにいちゃんじゃないけど、なんだ?」


「あたしの下着、もう決めてくれた?」


「……こんなにたくさんあるんだし、ちょっとくらい自分で選ぼうとか思わないのか?」


「思わない」


「むう」


 即答されてしまった。

 さすがにそろそろみなもの下着調達係は卒業したいところだが、肝心のみなもにそのつもりが無さそうなのが困りものだ。


「もしかしてみなも君の下着は、いつも連城くんが見繕っているのかな?」


 やはり異様な関係に映るのだろう、ナギサ先輩が不思議そうに尋ねてきた。

 けれどみなもは気にした様子もなく、平然としている。


「はい、そうなんです。結局あたしの下着姿を見る人なんておにいちゃんくらいしかいないので、だったらおにいちゃんの好みで選んでもらうのが一番かなって」


「なるほどね」


 なかなかにアレな発言だったと思うが、ナギサ先輩はある程度こちらの事情を知っていることもあってか、普通に納得してくれたようだ。

 彼女以外に聞いている人がいなかったのは幸いだったな。


「へー、光太郎君とみなもちゃんってそういう関係なんだ?」


 いや聞かれてた。


 神出鬼没の倉橋は、今回もその気配を感じさせないまま俺の背後に潜んでいたようだ。


「そういう関係ってなんだよ」


 念のため聞いてみると、倉橋はキョトンと首を傾げている。


「恋人とか?」


「ええっ!?」


 倉橋の発言に、驚愕した様子のみなも。


「恋人って……やっぱり他人の目からは、そう映っちゃう? 弱ったなぁ……」


 そんなことを言いつつ、俺の腕に絡みついてきた。

 

 はあ。

 ふたりきりならともかく、人前でふざけるのはやめて欲しいものだ。


 それに倉橋も倉橋だ。

 俺とみなもが恋人じゃないことくらい、当然分かっているだろうに。


「あんまり変なことを言わないでくれよ。こいつが俺のことおにいちゃんって呼んだのは、倉橋だって聞いてただろ」


「うん、聞いてたよ。でも光太郎くん、おにいちゃんじゃないって否定してたよね?」


「むむむ」


 ぐっと言葉に詰まった。

 たしかにその通りだ。


「それは従妹だからで……っていうか、そのあたりのことは自己紹介のときに説明しただろ……」


 なんとなく言い負かされた感はあるが、それでもまだこちらに理があると思う。

 待ち合わせ場所である駅前広場に全員揃ったときに、みなもが俺の従妹であることは伝えているのだ。

 恋人なわけが無い。


「たしかに説明はされたよ。でも従妹で恋人なのかなって。ほら、従妹なら結婚できるって聞くし、普通にあり得るでしょ?」


「はいありえますよね! そうです、従妹は結婚できるんですよ!」


「だとしても俺たちには関係ないだろ。ほら、さっさと離れろよ」


 頭に軽くチョップすると、ようやく俺の腕にしがみついていたみなもが離れてくれた。


「も~、おにいちゃんムキになりすぎ。痛いって」


「はいはい、悪かった悪かった」


 適当に返事をすると、みなもは口を尖らせていたが、それ以上文句を言う気も無いようだ。

 代わりというわけでもないだろうが、ナギサ先輩が困ったように眉を寄せている。

 

「まあ仲が良いのは結構だけど……。下着を買う時は他のお客さんに迷惑にならないように気をつけたほうがいいよ。下着売り場に男の子がいるのは、どうしても異様な光景に映るからね」


 ナギサ先輩らしい配慮だ。

 とはいえ俺だって当然そのくらいのことは気にしているわけで。

 

「大丈夫です先輩。みなもの下着を買いに行くときは視力検査方式を採用しているので、俺は店内に一歩も足を踏み入れていません」


「……視力検査方式?」


 首を傾げる先輩に、みなもはしっかりと頷いてみせた。

 

「あたしがショップの中で気になった下着を両手に持って、遠くのほうにいるおにいちゃんにそれとなく見せるんです」


「そしたら俺が、右とか左とか指示を飛ばすわけですね」


「……叫ぶってこと? 『右!』 とか『左!』とか」


「そんなことしたら、むしろ迷惑じゃないですか」


 思わず笑ってしまった。

 先輩は発想がかわいいな。

 

「電話を鳴らすんです。1回で切ったら右、2回なら左、みたいな感じで」


「なるほどね。それならまあいい……のかなあ……?」


 首をひねっているナギサ先輩。

 納得できないというより、そもそもそんな面倒なことをしないといけない理由が理解できていないようだ。


 でもそれについては俺だって分からない。

 

 すべての元凶は自分一人で下着を買おうとしないみなもなので、彼女に聞いてくれとしか言いようが無い。


「それで結局なんだけど……」

 

 そんな俺たちをニコニコと楽しそうに眺めていた倉橋が、不意につぶやく。


「光太郎君はみなもちゃんの下着を選ぶの?」


「ん~」


 場合によっては倉橋や御城ケ崎あたりに下着選びを頼んでもいいかも……と思ったが、頭をさすりながら口を尖らせているみなもを見て気が変わった。


 ここで冷たくすると、ラビュ勧誘作戦に支障が出るレベルで拗ねるかもしれない。

 機嫌を取っておいたほうがいいな。


「軽く見た感じだと……これとこれがいいんじゃないか?」


「じゃあ、それにする」


 みなもに似合いそうな下着をいくつか選ぶと、彼女の機嫌はあっという間に直っていた。

 この単純さはみなものいいところだ。


「試着くらいはしたほうがいいんじゃない?」


「えっと、でも、おにいちゃんが選んでくれたやつなので。デザインもサイズも問題ないと思います」


「いやそんなに信用されても困る。試着させてもらえよ」


「だいじょぶだって。今までだって、おにいちゃんが選んでくれるのはオーダーメイドかなって思うくらいぴったりのばっかだったし」


「そうは言っても、俺はお前が手に持ってるのを選んでるだけだからな。今回とは事情が違う」


「違わない」


 みなもはやけに自信たっぷりだ。


「おにいちゃんは私の下着姿を毎日のように観察してるから、無意識のうちにぴったりサイズの下着を選べてるわけ」


「また誤解を生みそうなことを……」


「でもおにいちゃんがサイズ選びで失敗したことないじゃん」


「まあ、そうだけども」


 我ながらよく分からない特技だが、たしかに適切なサイズの洋服を見繕うのは得意なんだよな。


 ただそれが下着選びにも当てはまるのか疑問だ。

 そもそも平日は叔母さんがいるので、言うほどみなもの下着姿を見ているわけでもないし。


「コータロー!」


 そんなとき聞こえてくるラビュの大声。

 店の奥まで探索に出ていた彼女は、パタパタと小走りでこちらに戻ってくる。


「どうしたんだよ、そんな大声だして」

 

「すっごくたくさん下着があって選びきれないぃー! だからコータロー、ラビュに似合いそうな下着を選んで!」


 彼女は妙にニヤニヤしていて、俺をからかうつもりのようだ。

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