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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第1章 放課後のナギサ先輩

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第23話 駐在さん

 みなもが着替えのために部屋へと姿を消し、それから数分後。


「これでいいんでしょ」


 戻ってきた彼女は、紺色の妙にテカテカした生地を身にまとっていた。

 あまり洋服の種類に詳しくない俺でも、それが何かすぐにわかった。


「……いやお前それ水着じゃん。っていうかスクール水着じゃん。そりゃ、下着よりは露出は抑えられてるけど、さすがにそれは……」


「は? おにいちゃんが最初に言ったよね? 人前に出ても問題ない服装に着替えろって。水着ってその条件を満たしてるんですけど?」


「それは場所によるだろ。海とかプールとかならともかく、部屋の中って……」


「文句があるんなら、下着に戻るよ? そもそもお兄ちゃんだって、洋服より水着姿のあたしのほうが一緒にいて落ち着くでしょ?」


「…………」


 まあたしかに、それはそう。

 みなもの言葉はまったくもって正しい。


 あの村を出てすでに5年近いが、いまだに俺にとって『普通の格好』は全裸なのだ。


 そしてそれは自分だけでなく、周囲に対しても同じ。 

 はっきり言って洋服を着ているみなもと一緒にいるのは気づまりだったし、そのことには彼女自身かなり早い段階で気づいていたようだ。


 でもあの村の出身じゃないみなもにしてみれば、全裸のほうが抵抗があるわけで。


 彼女なりにお互いの妥協点を探った結果が、下着や水着という露出度の高い格好なのだろう。

 つまり彼女の生活スタイルは、俺への気遣いから生まれたといっても過言ではない。


 反論できずに沈黙する俺を尻目に、彼女はソファにドスンと腰かける。


「ほら、さっさとご飯つくってよ」


「……べつにお前が作ってもいいんだぞ」


「えっ、ほんとに?」


「……あっ、いやっ、その……」


 みなもの嬉しそうな返事に、かえってこちらが慌ててしまう。

 彼女は決して料理が下手なわけではないが、わけのわからないアレンジを加えるタイプなのだ。


「料理は藤井さんがいるときだけ作る。藤井さんとそう約束したもんな? な?」


 老獪(ろうかい)な藤井さんじゃないと、みなものチャレンジスピリットは決して止められない。

 みなもをなだめすかして普通の料理をごく普通に作らせる手腕は、藤井さん特有のスキルだ。


 俺はなんだかんだでみなもに甘いし、その食材を使うとどうなってしまうのか説明できないので、どうしても翻弄され、最終的に押し切られてしまう。


「まあ、あたしはどっちでもいいけどね。ほら、さっさと作りなよ。食べてあげるから」


「……おう」


 桜川みなも。

 我が従妹殿は、本当にいやになるくらい生意気なやつだ。

 ただ――。


「おい、ひっつくな。料理中だぞ」


「いまいいところだから。黙ってて」

 

「ゲームやるんならソファでやれよ。危ないだろ」


「大丈夫だって、おにいちゃんの背後に隠れてるから」


「お前の心配をしてるんじゃない。俺が火傷するっていってる」


「……ったくしょーがないなー」


 呆れたようにつぶやく彼女は、スマホをテーブルの上に置き、背後から俺に軽く抱きついてくる。


「これでいいんでしょ」


「……いや離れろよ」


「なんで? ちゃんとゲームはやめたよ」


 きょとんとした顔で聞き返してくるみなもを見て、俺は言葉につまった。


 怒られている理由が本気で分かっていない、なんてことはもちろん無いだろう。

 ただ単に、とぼけているだけ。


 みなもはかなりの寂しがり屋なのだ。

 叔母さんがいないときは特に顕著で、一日中俺にべったりと引っ付いてくる。


 こうも懐かれると、ちょっとやそっと生意気な言葉を吐かれたからって、嫌いになれない。


 むしろ可愛いくらいで……だからついつい甘やかしちゃうんだよなあ……。


◇◇◇◇◇


 スプーンを頬張り、みなもは目を見開く。


「うっま」


「だろ?」


「は? おにいちゃんが作る料理が美味しいのなんて、当然なんですけど?」


「なぜお前が偉そうなんだ……」


 などと言いつつ、作った料理を褒められれば俺だって悪い気はしない。


 パパッと作ったチャーハンを、まるでご馳走のようにニコニコの笑顔で食べてくれるみなもは、いつもながら料理のし甲斐がある相手だ。

 俺も鼻歌まじりに食べ始めると、つけっぱなしにしていたテレビから、馴染みのある声が聞こえてきた。


「――昨今、問題視されております変態の急増に関しましては、我々も大変心を痛めておりまして、変態管理局の局長といたしましては、ぜひとも日本国の総力を挙げての変態管理官育成への支援を望む次第であり……」


 ――ピッ


「昨夜未明、全裸の変態が逮捕されました。逮捕された男は、先日刑務所を出所したばかりで――」


 ――ピッ


「昨夜20時頃、帰宅途中の会社員に対し、突然あらわれた男が陰部の露出を試みるという事件が起きました。場所は東京都の――」


「どこも変態的なニュースばっか」


 みなもはテレビのチャンネル片手に、つまらなそうに口をとがらせている。


「朝くらいもっと明るくて面白いのをやればいいのに」


「……そうだな」


「あれ? なんかいま映ってる喫茶店見覚えがあるよ。この変態が出た場所って、お兄ちゃんの学校に近くない?」


「たしかに。徒歩圏内だ」


「……おにいちゃん、昨日帰りが遅かったよね? この犯人まだ捕まってないみたいだけど……まさか?」


「ばかなことを言うんじゃない。昨日は本屋に寄って遅くなっただけだ」


「そんなにムキにならなくても冗談だってば。そもそもおにいちゃんが全裸を披露したくなったら、おウチで私に見せつければいいだけだもんね」


「しないっての」


 などと適当に返事をしつつ、俺は一番最初のニュースに出てきた、威厳のある中年男性のことを考えていた。


 変態管理局の局長――秋海伊千郎(あきうみいちろう)

 そう、俺が住んでいた連城村の駐在さんであり、ナギサ先輩の父親でもある彼だ。


 なんとなくナギサ先輩の言葉が思い浮かぶ。

 

 『君の故郷を壊したのが私の父親なんだから、恨むのも当然だろう』。


 ……あのとき本人にも伝えた通り、ナギサ先輩のことを恨むわけがない。

 そして、俺が『駐在さん』を恨んでいるかというと、別にそんなこともなかった。

 

 父さんが日本の法律を犯していたのは事実であって、田舎の村だからと言ってそれが免責されるわけでもない。

 つまり秋海伊千郎氏は警察官としての職責を(まっと)うしただけ。

 

 そのことで彼を恨むのは、単なる逆恨みだ。


 そう。

 だから俺は()()()()()()彼を恨むつもりはなかった。


 ただ――。


 連城家には、代々伝わる家宝が二つあった。


 一つは連城家の家訓、変態管理3箇条。

 連城家としての心構えを説いた家訓である。

 

 そして問題となるもう一つが――変態管理実践書(じっせんしょ)

 その名の通り連城家が長い年月をかけまとめ上げた、変態管理の秘伝の書である。


 俺は、駐在さんからその書物の存在と内容を聞いた。

 つまり、秋海伊千郎氏は実際に変態管理実践書を目にしたはずで、隠し場所だって知っていたわけだ。


 そしてそんな彼は、父さんを逮捕した直後から突如として変態管理の才覚をあらわし、いまでは変態管理局の局長にまで上り詰めている。


 彼がもともと変態を管理できるような、優れたスキルの持ち主だったという可能性もなくはないだろう。

 

 だがもし秋海伊千郎氏が、連城家の秘伝の技を盗み出し、それによって成果を上げていたとしたら?


 そしてその口封じのために父さんをいまだに監禁状態においているとしたら……。


 ――秋海伊千郎。

 彼を許すことなど、できるはずがない。

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