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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
終章 変態革命

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第110話 囲んで叩く……?

「別に御城ケ崎を舐めてるわけじゃありません。ただ父さんは明らかに別格の力を持っていて、室長ひとりで抑えきれると思えないんです」


「かもしれねえな。でもだからこそ、ひとりずつ確実につぶしていくべきだろ。まずは目の前にいる相手を、3人で囲んで叩く。油断なんてしてる場合じゃねえぜ」


 即座に言い返してくる留岡管理官の言葉は、たしかに正論のように思える。

 でも本当にそうなのだろうか。

 

 いま目の前に立っている御城ケ崎は、俺たちがかつて手こずったラビュをも上回る戦闘能力の持ち主。


 HENTAIレボリューションパワーを駆使する戦闘経験豊富な相手に、真っ当に「囲んで叩く」戦法をやったとして、果たして通用するのだろうか?


 そしてもし通用したとして、戦闘後に城鐘室長をフォローできるだけの余力を残せるだろうか……?


 ……かなり厳しい気がする。

 

「油断してるわけじゃないんです。――俺には御城ケ崎を単独で抑え込める秘策があります! 俺の判断を信じてください!」


 御城ケ崎を見据えたまま、声を張り上げた。

 

 もちろんなんの根拠も示さず、勢いだけで主張したって信じてもらえるはずがない。

 留岡管理官も獅子宮管理官もそのあたりに関してはシビアで、こんな言い方では絶対に納得してもらえないという確信があった。

 

 でもだからこそ。

 俺はこうして勢いだけの主張をすることにしたのだ。


 ふたりの訝しげな視線を頬に感じつつ、ただ御城ケ崎だけを見つめ続ける。


 なんでもいい。俺の態度から違和感を感じ取ってくれさえすれば……。


「……そこまで言うのだ。ここは彼に任せよう」


「けっ、あとで泣き言を言っても聞かねえぞ」


 悪態をつきながらも、ふたりの管理官は身をひるがえす。

 

 その対応に俺は内心ほっとしていた。

 

 いくら非常事態とはいえ、いつものふたりであればこんなに簡単に引き下がるはずが無い。

 つまり俺の考えを察してくれたというわけだ。

 

 もちろん確かめることなんてできないから、今はただ信じるしかないが……。


 そしてそんなふたりが向かう先――割れた窓ガラスの付近では、室長と父さんの攻防が今も続いていた。


「……城鐘家の噂は聞いたことがある。先祖代々のギャンブラー気質が祟って、君のご両親などはとうとう身を持ち崩したという話だったけど……車の爆発さえも利用して突っ込んでくるところをみると、君もどうやらその悪癖を受け継いでしまったみたいだ。先行きは暗いんじゃないかな」


「ほう、我が家の現状まで把握してもらえていたとは嬉しいね。ただ一つ訂正させてもらおう。我が城鐘家はあくまでもトレーダー気質なだけ。そしてトレーダーとギャンブラーとは似て非なる人種なのだよ。その戦い方の違いに気付かない限り、私の勝利は揺るがないさ」


 挑発の言葉を投げ合いながら、呼吸の合間合間に蹴りを放ち拳を突き出し……。

 室長も父さんも必殺のタイミングを狙っているようで互いにけん制が続き、実質的な膠着状態に陥っていた。


 が。

 

「ぬううううううん!」

 

 そんな状況をぶち壊すように、獅子宮管理官が突撃していく。

 一方で留岡管理官は、いつでも追撃に動けるように後方に控えていた。


 そのことを確認した俺は、意識を目の前の相手に戻す。

 

 御城ケ崎ゆら。

 彼女は臨戦態勢に入るでもなく、余裕の表情でこちらを見ていた。

 

 まあ、そんな反応も特に意外ではない。

 御城ケ崎が留岡管理官たちの移動を妨害しなかったのだって、彼女にしてみれば俺と1対1で戦うほうが望ましかったから。

 

 つまり彼女にとってこの展開は理想的なもので、慌てる必要なんてないのだ。


 でも。

 ――この展開を望んでいたのは、俺だって同じだ。


「なあ御城ケ崎」


「……」


 静かに声を掛けるが、彼女は無言。

 俺の不意打ちを警戒しているようだが、そんな反応もこちらにとっては望ましい。

 

「きっと御城ケ崎も、いろんな出来事の積み重ねがあってそこに立っているんだと思う。でもはっきり言って、いまの俺には御城ケ崎の相手をする余裕が無いんだ。これから父さんを止めて、暴走状態の母さんのことも元に戻さないといけない。だから悪いな。――ここからは本気でいかせてもらう」


「どうぞご自由に」

 

 余裕たっぷりな御城ケ崎をじっと見つめながら、俺は自身の洋服に手をかけ。

 そして鋭く叫ぶ。

 

「――瞬脱(しゅんだつ)ッ!」


 勢いよく脱ぎ捨てられ、バッと虚空を舞う洋服たち。

 その隙間を縫って、俺は全力で前進する。


 みなぎるパワーが、洋服の代わりに俺の全身を包んでいた。

 

 確信する。

 今の俺は、間違いなくHENTAIレボリューションパワーすら超えた力を持っている……!

 

 御城ケ崎に全裸ボタルという大技を意識させるための脱衣だったが、結果的にこの判断は俺にプラスに働いたようだ。

 慣れ親しんだ全裸姿になることで、ラビュから吸収したパワーをフル活用するためのスイッチが入ったのだ。


 これなら策を弄さずとも勝利をもぎ取れるかもしれない――いやもぎ取るべきだ!


 脳内を駆け抜ける思考の勢いそのままに、余裕の表情が消えた御城ケ崎に向かって、俺は全力で突っ込んでいき。

 そして間合いに入った瞬間、握り込んでいた両こぶしを、バッと開いた。


「変態封殺術奥義――全裸千手(ぜんらせんじゅ)!」

 

 全力で放った無数の張り手は、自分でも驚くほどの超重量級の破壊力!


 御城ケ崎も迎撃しようと手を伸ばしてくるが、そのいずれもかいくぐり、次々と彼女の身体に打撃を与えていく!


「くっ……」


 スピードでもパワーでも負けていることに気付いたのだろう、御城ケ崎の顔が歪んでいた。

 一撃ごとに数十センチメートルずつ押し込まれていく彼女の背後には、早くもコンクリートの壁が迫っている。


 この勢いで全身を叩きつければ、いくら御城ケ崎でもその衝撃で昏倒は免れないだろう。


 どうせなら――。

 どうせなら反撃を許さず、この勢いで押し切りたい……!


「うおおおおおおおおお!」

 

「……!」


 さらに攻勢に出る俺だったが――その瞬間、御城ケ崎の瞳が輝くのを見て失策を悟る。


 攻めの意識が俺の動きにわずかな歪みを与え、自分でも気づかないうちに『千手』に大振りが混ざっていた。

 

 そしてその(りき)みを見逃す御城ケ崎ではない。


 彼女は一瞬の隙をついてその場にしゃがみ込むと、勢いよく身体を前方に投げ出す。

 それはまるで猫のようなしなやかな動き。


「このっ……!」


 慌てて捕まえようとするが俺の手はむなしく空を切る。

 

 宙を舞い華麗に床を転がった御城ケ崎は、跳ねるようにして立ち上がると、すぐさまこちらに向き直った。


「なるほど。どうも光太郎様のことを少しばかり見くびっていたかもしれません」


「……俺も同感だよ」


 その俊敏な動きもさることながら、こちらの攻撃が直撃していたにもかかわらず息ひとつ乱していないという事実に、俺は内心舌を巻いていた。

 

 油断はしていないつもりだったが……結局、その考えこそが油断だったのだろう。

 

 今では立ち位置が逆転し、今度は俺が壁を背にしている。

 追い込まれた状況ではあるが……。


「もう油断はしない。次で決める」


 つぶやきながら拳を握りしめた。

 そして右手を軽く引き、半身に構える。


 ――それは全裸ボタルの構え。


 そのことに気付いたのか、御城ケ崎が薄く笑う。


「やはり光太郎様の自信の源はその技でしたか。しかし全裸ボタルではHENTAIレボリューションパワーを吸収することはできない。……双龍様の話を聞いていなかったのですか?」


「聞いてたさ。でもやってみないと分からないだろ」


「……はあ」


 深いため息。

 無鉄砲さを嘆くその仕草には、呆れよりもむしろ余裕を感じる。

 

「仕方がありません。光太郎様の底が割れた以上、警戒は無意味。わたくしも本気を出さざるを得ないようです」


 そう言って御城ケ崎は、懐からカメラを取り出した。

 

 俺の打撃を受けたせいか、そのレンズはひび割れていたが、それを見ても特にショックを受けた様子はない。

 むしろその傷を愛おしそうに撫でてから、彼女はこちらに視線を向ける。


「御城ケ崎家が考える、変態管理にもっとも大切な要素。それは――『情報収集』。その人物のありとあらゆる思考・行動パターンを収集、解析することで未来予知にも似た行動の先読みが可能となるのです。そして光太郎様の情報はすでに収集が完了しております。たとえ、全裸ボタルが我々に通用したとしても、当たらなければなんの意味もない」


 ……思考や行動パターンの収集? そしてその解析による未来予知?

 はっきりいって前提条件の時点で夢物語の類に思えるが、少なくとも御城ケ崎は本気で言っているようだ。


「『未来予知なんてできるはずがない』。それは当然の発想です」


「……」


「ですが光太郎様もすぐに理解できます。なぜ数多ある城守のなかで、御城ケ崎家だけがここまで繁栄することができたのか。そしてなぜあれほどの問題を起こした御城ケ崎知代の娘であるわたくしが、未だに御城ケ崎家に名を連ねることが許されているのか。それらはすべて、この力のおかげなのです」


 そういって彼女は、自身の胸に手をかざす。

 そして彼女らしくも無いギラギラした瞳をこちらに向けた。


「起動せよ! 未来眼(みらいがん)――」

 

「――荒縄縛り!」


「なっ!?」


 突如背後から飛んできた荒縄が、なにかの技を放とうとしていた御城ケ崎の身体を一瞬で縛り付け、完全に拘束する。


「全裸荒縄縛り!」


 ここぞとばかりに俺も追従した。

 2重3重に荒縄で縛り付けた結果、御城ケ崎は先ほどの俺みたいに全身ぐるぐる巻き。

 完全に芋虫状態だ。

 

「…………」


 呆然とした様子の御城ケ崎。

 その視線の先には、留岡管理官が立っていた。

 荒縄を御城ケ崎の背後から投げつけたのは、もちろん彼だ。


「……手を……出さないはずでは……」

 

「ああ? こいつに任せるって言ったのを真に受けたのかよ。あんなもんウソに決まってんだろーが」


「うそ……?」


「カンリシャ級の敵相手に、見習い管理官をひとりで立ち向かわせるわけねえだろ。ただ、こいつだってそんなことは分かってる。にもかかわらずあんなに強気で言ってくる以上、なんかあると思うのは当然だ。んで、いつでもフォローに入れるよう警戒してる最中に、テメエに思いっきり隙がありゃあ、そりゃ捕まえるわな」


 そう、俺の狙いはまさに留岡管理官の解説通り。

 御城ケ崎に1対1を意識させた状態で、留岡管理官たちに不意打ちしてもらうことで、素早く安全に戦闘を終わらせたかったのだ。

 

 つまり囲んで叩く作戦は、裏で継続していたというわけ。

 

 さすがに細かい意図までは伝わっていなかったようだが、それでも臨機応変に対応してくれるとは、さすがはベテラン管理官といったところか。

 本当に頼りになる先輩だ。

 

「……俺にしてみれば、御城ケ崎に恨みなんてないし、争う理由もないんだ。消化不良かもしれないけど、すべてが終わったらいくらでも文句に付き合う。だから今はそこで大人しくしててくれ」


 床に転がる御城ケ崎に、それだけ声を掛けた。

 

 彼女は何か言いたげに眉をひそめていたが、その返事を待つ余裕はない。


 だって父さんと室長たちとの戦闘は、今も続いているのだ。

 

 俺は留岡管理官と共に、室長たちのもとへと駆け寄り。

 そして――。

 

「父さん!」

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