表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
終章 変態革命

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/135

第106話 VSドレッド・ハラスメント 後編

「ラァァァビュ! アイラァービュー、ラァァァービュ!」


 この催眠世界を脱出するため、俺はこうしてアホみたいに床の上を転がりながらも着実に証拠を積み重ね続けていた。

 すべては心の疑念を完全に消すため。

 元の世界に一刻も早く戻るため。


「ラァァビュ! どうして死んだんだぁぁ! ホワイ! ホワァァァイ!」


 ドレッドさんの服装にしても彼女が立っていたキッチンにしても、もともとこの催眠世界は、俺が見たことの無い情報ばかりで構成されていた。

 連城村の写真という例外はあるが、それはたまたま俺が彼女の著作を見ていたからという、単なる偶然に過ぎないだろう。

 つまりこの世界はドレッド・ハラスメントの記憶をもとにしているという俺の予想は、恐らく正しい。


 そう考えてみると、この『生首ラビュ』には明らかにおかしな点がある。

 それは髪の長さだ。

 このラビュの髪は、妙に短いのだ。


「ラァァァァァァァァァァァビュ! カムバック、ラァァァァァァァァァァァァビュ!」

  

 そして、印象に残る出来事だったからよく覚えているのだが、このラビュの髪の長さは、彼女が『カンリシャ』として目覚めたあの日のものと酷似していた。


 そうなると、さらに思い当たることがある。


 それはラビュの表情だ。

 生首にしてはやけに穏やかなその顔に見覚えがあった。


 ……カンリシャとして目覚めたあと、俺の『全裸ボタル』をその身に受けて気を失った時のラビュの表情。

 あれとそっくりなのだ。


「ホワイ! ホワァァァァァァァァァイ!」

 

 そしてドレッド・ハラスメントは、留岡管理官に連行される直前、そんなラビュの寝顔を見ていた。間違いなく見ていた。

 

 つまりこの生首は、ドレッド・ハラスメントが最後にラビュに会った時の再現。


 だとするとこの生首は絶対に間違いなく、本物のラビュではありえない。

 だって所詮は過去の状況の再現に過ぎないのだから。


 ……この世界を覆う疑念は完全に消え失せ、確信が俺の心を満たした……!

 

 今こそ行動の時!

 

 俺は、ラビュの生首(偽)を天に掲げ、堂々と叫んだ。

 

「すいません、これラビュじゃないです! 今までさんざん大騒ぎしておいて申し訳ないんですけど、でもだって違うから! ほら見てよ、ドレッドさん! このラビュ、今のラビュより顔が幼いよ! 髪の長さもぜんぜん違うし! これを本物のラビュと言い張るのはさすがに無茶だって! もっと娘の変化に敏感にならないと嫌われちゃうよ、ラビュって意外とそういうの気にするから! でもまあ別に今はそんな話がしたいわけじゃなくって、これはドレッドハラスメントが作り上げた催眠世界での出来事に過ぎないってことを俺は主張したい! 目を覚ませ、俺よ! 元の世界へ、今こそ帰還の時!」


 狂騒の中、突如ふわっと爽やかな風が俺の全身を駆け抜けていき。

 

 それが合図だったかのように、暗闇が覆う世界に光が満ちていく。


 眩しさに目を細める俺が立っていたのは……管理局のエレベーターホール。

 

 そして目の前にはドレッドハラスメント。

 彼女はなぜか呆れた表情で立っていた。


「……催眠の解き方が独特すぎるのよ、あなた」


「なんとでも言え」


 毒づく。

 実際、いきなり催眠を掛けてくる人にわけの分からない嫌味なんて言われたくはなかった。


「まったく。暴れ回るおかげで拘束し損ねたわ」


 とはいえ、未だにぶつくさ言っているところを見ると、嫌味ではなく本気で呆れていただけなのかもしれないが……。


「たしかに凄い催眠の解き方でした」


「御城ケ崎……?」


「エレベーターの壁にぶつかってもなお走り続けたり、床をごろごろ転がってエレベーターホールに戻ってきたり……あまりにも滑稽な姿で、つい吹き出してしまったほどです」


「そっか……」


 たしかになんとでも言えとは言ったけど、まさか当事者でもない御城ケ崎にそこまで馬鹿にされるとは思わなかったな……。


 別にいいけどさ……。 


「まあ光太郎君に催眠が掛かりにくいのは予想していたけどね」


 なんとなく気落ちする俺の目の前で、ドレッドさんは溜息まじりに首を振っている。


「2重に催眠を掛けるのは、さすがに無理があったみたい」


「2重……?」


「ええ。もう5年前になるかしら。あの村で貴方に催眠をかけていたのよ。母親のことを忘れるようにね」


「……!」


 その言葉を引き金として。

 

 今まで不思議なほどに実感の無かった母親という存在が、だんだんと色づいていくのが分かった。


 記憶が戻っている……?


 そして最後に思い浮かんだのは……連城村を蹂躙する、母さんの姿……。

 それは明らかに理性を失っていて……。


「うっ……」


 思わず頭をおさえる。

 立つことすら覚束ない俺の背中に、ドレッドさんが優しく手を添えてくれた。

 

「一応言っておくけど、これは双龍の提案で、私は反対したのよ? 長期間の催眠は、光太郎君の身体にも害になりうるって。まあ、貴方の心が傷つくところを見たくなかったんでしょうけど……」 


「母さんが……連城村を破壊した……?」


「そうね。そして彼女はいまも、暴走状態のまま封印されている」


「え……?」


 俺の記憶にあるのは、暴れまわる母さんと、それを迎え撃つ複数人の誰か。

 その後、母さんの姿を見ていないことを考えれば、その結末は分かり切っていたと思っていたが。


 もしかして、違うのか?


「母さんは……生きてる……?」


「……どう言えばいいのかしら」


 ドレッドさんは天井を見上げた。

 どうやら、言葉を慎重に選んでいるらしい。

 

「双龍は……貴方のお母さんを再びこの世界に解き放とうとしているの。……暴走状態のままね」


「!?」


 暴走状態のまま?

 それはつまり、連城村を破壊した、あの状態……?

 

「……私はここで降りるわ。本音を言えばもう少し時間を稼ぎたかったけれど、催眠を解かれちゃうとどうしようもないもの。悪いけど私は我が身が可愛いし、娘たちのことはもっと可愛いの。ごめんなさいね、ゆらちゃん」


「いいえ、構いません。あとのことはわたくしにお任せください」


「ええそうね。……貴方にとっても良い結果が出ることを祈っているわ」


 そんな意味深な言葉を残しつつ、彼女は立ち去るのだった。


「どうぞ、光太郎様」


「……あ、ああ」


 相も変わらず無表情な御城ケ崎に背中を押されるようにして、エレベーターに乗り込む。

 

 ……疑問なんていくらでもある。

 けれど今更、御城ケ崎やドレッドさんを問い詰める必要なんて無い。

 

 ……いよいよだ。


 ようやく父さんと会える……!

次回より、他者視点の過去回想が4話続きます。

クライマックスに向けて必要なのでそうなったわけですが、普段とは違うタイミングで番外編的な話が始まるので事前にご報告です。


ちなみに回想が終わった後は、最短で4話ほど投稿して完結となります。

まだ書き終わっていないのでなんとなくの目安です。


ふわふわした案内で申し訳ないですが、最後までお付き合いのほどよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ