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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第3章 変態パラダイスマンション

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番外編 変態村の連城シグマ(秋海ナギサ視点) その1

 全裸の変態が集うという変態パラダイス村にやってきてから、早1か月。

 初めは警戒してばかりだったわたしも、さすがにこの村での生活に慣れてきていた。

 

 ……慣れることができて我ながらびっくりだけど、でも実際この村には想像していたほどには変な人がいない。

 

 いやそうでもないか。

 みんな全裸だから、ある意味全員変ではある。

 というか変態ではある。


 でもそういうことではなくて、なんというかこう……この村の住人は変態なのに、他人に配慮できる人たちばかりだったのだ。

 

 突然わたしと遭遇したときも、彼らは機敏に動く。

 薄汚い裸がわたしの目に入らずに済むよう、手に持っている物や周囲の草花で自身の身体を隠してくれる。


 なんだか気を遣わせてしまって、かえってこちらが申し訳なくなるくらいだ。


 まあ向こうが変態なのが悪いから、べつに申し訳なく思う必要なんてないんだけど……。


 とにかくそんな感じなので、村での生活も意外と悪くない。

 なんといっても自然に囲まれているところが気に入った。


 今もコウちゃんに似合う綺麗な花を探すために家の裏手にある花畑に来ていたのだけれど、びっくりするくらい広いうえに様々な花が咲き誇っていて……こんな素敵な場所を都会で探すのはちょっと不可能だろう。


「ふんふふ~ん」


 コウちゃんにプレゼントするお花、なにがいいかな~。


 まあ今回は『お洋服に馴染んでもらおう大作戦』の第一段階だから、正直渡す花は何でもいいんだけどね。


 とりあえずコウちゃんにお花を渡して、その反応を探る。


 喜んでもらえたら、その花を活用したお洋服をお母さんと一緒に作って、コウちゃんにプレゼント。

 

 コウちゃんは普通の服は苦手みたいだけど、そのへんに生えてる草花を身体に巻き付けるのはむしろ好きみたいだから、好みの草花がたくさんついてる服なら案外すんなりと着衣してくれそうなんだよね。


 これも彼を真人間に戻すための、深遠な計画の一部。


 やっぱり将来のことを考えれば、洋服は着れるようになっておいたほうがいいもんね。

 裸を隠すのは当然の配慮だと、まだ幼い今のうちに分かってもらわないと。


 まあもっとも……。


「……コウちゃんの裸だったら、別に隠す必要なんて無い気もするけど……」


 思わずつぶやく。

 そしてハッとする。


「あ、いや、ちがうちがう! 別に変な意味じゃなくて、コウちゃんはわたしと年齢的には大差ないけど情緒の面ではまだ子どもといっても過言ではないから、子どもが裸なのはむしろ普通だという一般論として主張したのであって、私は変態とは違うからまさかそんな、コウちゃんの裸を見たいという下心で言っているわけが――」


「ふーん、悪くないね」


「え!?」


 突然背後から声が聞こえ、わたしは驚愕した。

 

 もしかして今の独り言、聞かれてた……!?


 まずい、変態だと思われる……!


 慌てて振り向くと、そこには大柄な女性が立っていた。

 言うまでもないが、もちろん全裸だ。


 うん……まああれだよね。

 この人のほうが明らかに変態だし、何を聞かれていたとしても特に問題ない気がする。

 

 とりあえず素知らぬ顔で、用件だけ聞いておこう。

 

「あの、なにか?」


「いや、うわさは聞いてたけど、悪くないと思ってね」


「えっと……」


 うわさ?

 この人、わたしのことを知ってる感じだけど……。


 でもわたしのほうはこの人のことをまるで知らない。

 

 驚くほど筋肉質で、クマと取っ組み合いのけんかをしても普通に勝てそうなくらい腕が太いショートヘアの女性。そして全裸。

 かなりインパクトのある見た目なので、さすがに会ったことがあれば憶えていると思う。

 

 全裸だからこの村の住人なんだろうけど……。


 でも他の人たちと違って、こちらに遠慮する様子がまるで見えない。

 全裸で堂々と仁王立ちするその姿は、わたしの不安を煽るのにじゅうぶんなものだった。


 ……もしかしてこの人、悪い人なのでは……?

 

 わたしは、いつでも逃げ出せるように後ろ足に重心をのせつつ、元気に挨拶をすることにした。

 不審者は挨拶されることを嫌がると聞いた記憶があったからだ。


「初めまして、最近この村に引っ越してきた秋海ナギサです! ちなみにお父さんは警察官で、私のことを溺愛してるので、私の身になにかあれば権力と警棒を振りかざすことに躊躇しないと思います!」


「あっはっはっは!」


 ……爆笑してる……。

 

 渾身の威嚇がまるで通じてない。


 どうやらこの人は、権力も警棒も怖がるタイプではないらしい。


 なにそれ、めっちゃヤバい人じゃん……。

 

「いやあ、気合の入ったいい挨拶だね、気に入ったよ」


「は、はあ」


 そんなこと言われても、まったくもって嬉しくない。

 むしろ恐ろしい。


「ナギサちゃんのことは、光太郎から話を聞いてるよ。素敵な洋服を着た、とっても綺麗で面白いお姉ちゃんと仲良くなれたってはしゃいでたけど……なるほど、たしかに面白いね」


 ……この人コウちゃんと知り合いなの?


 そしてコウちゃんがそんなことを?

 わたしが、とっても綺麗なお姉ちゃんって?


 ふ、ふ~ん。

 へーそうなんだ。


 まあ子どもって表現が拙いから、特に深い意味も無くそういうこと言ったりするよね。

 

 だから別に本気にするわけじゃないけど……。

 綺麗なお姉ちゃんね、ふ~ん。


「……コウちゃんのお知り合いですか?」


「うん? んーまああれだ。知り合いっていうか、普通に母親だよね」


「え!?」


 い、意外だ。

 こんなに筋肉ムキムキな人が、コウちゃんのお母さん?


 コウちゃんのお父さんには会ったことがあるけど、体格的には普通の人だった。

 物腰やわらかな優しい感じの村長さんで、確かにコウちゃんのお父さんだなぁという印象。


 でもこの人は、全然違う。

 コウちゃんのお父さんくらい、片手でひねりつぶせそうな雰囲気だ。


 ただそう言われてみると、顔の造り自体はどこかコウちゃんと似たものを感じるような……。

 大きな身体のインパクトにかすんでいたけど、意外と美人系の顔立ちだし。

 

「私の名前は連城シグマ。よろしくね」


「あ、はい、よろしくお願いします」

 

「それにしても悪くないね」


「……さっきから言ってますけど、それってどういう意味ですか?」


「ああ、ナギサちゃんは脚が素晴らしくイイって思ってさ」


「脚が……」


 彼女の視線を追って自分の脚を見下ろしハッとした。


 この村に来た当初はいろいろと警戒していたのでロングスカートばかりはいていたが、今日は変に浮かれていたせいか昔から気に入っていたショートパンツ姿だったのだ。


「セ、セクハラはやめてください!」


 慌てて両手で脚を隠しつつ、抗議の声をあげる。

 けれどコウちゃんのお母さんは、こちらを気にした様子もなく笑顔のままだ。


「あはは、意外とませてるね。でも別にそういう意味で言ったわけじゃないんだ。今日は、光太郎の新しいお友達に訓練をつけてやろうと思ってね。ナギサちゃんは脚がいいから、そっち方面でいこうと思っただけだよ」


「……そっち方面? それに訓練って……いったいなんの訓練なんですか? 避難訓練?」


「いや、戦闘訓練さ」


「……」


 何この人。

 やっぱり変。


「別にわたし、誰とも戦う予定なんてないですけど……」

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