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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第3章 変態パラダイスマンション

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第98話 崩壊する日常 その6

「父さんが……革命軍のリーダー……」


「意外でしたか? だとしたら、こちらこそ意外に思います。作戦に綻びが生じるとしたらそれは光太郎が原因だろうと双龍様はいつも気にしていらっしゃいましたから」


「…………」


 ブラフ。

 その可能性を考えつつ、彼女の言葉を信じそうになっている俺がいた。


 父さんが革命軍に味方している。


 それは父さんが死んだという可能性よりは、はるかにましで。

 でもある意味では、もっとも受け入れがたいこと。


「なぜ父さんが革命軍なんかに……」


「本人に直接聞かれては?」


「それができたら――」


 思わず反発しそうになったが、彼女の落ち着いた表情を見て、嫌がらせで言っているわけでは無いことに気付く。

 

「……父さんに……会えるのか?」

 

「管理局の本部を制圧した今、革命軍に恐れるものなどありません。双龍様のもとへとご案内いたしましょう。わたくしは、そのために光太郎様を探していたのです」


「父さんに……会える……」


「どうぞこちらへ」

 

「……」


 彼女の言葉に従い、歩き出そうとした俺だったが……すぐにその場で立ち止まる。


「どうかされましたか?」

 

 不思議そうな表情でこちらを振り返る御城ケ崎を見て、俺は内心舌を巻いていた。


 あれほど警戒していたのに、いつの間にやら彼女の話術に取り込まれかけている。

 

 もし特別対策室の皆がうまく逃げおおせていたら――いや、そもそも襲撃の話が嘘だとしたら。

 ここで革命軍を自称する彼女にノコノコついていくのは、わざわざ人質になりにいくようなもの。

 あまりにも馬鹿げている。


「……父さんの居場所を教えてくれ。後で自分で行く。革命軍に恐れるものはないんだし、もちろん構わないよな?」


「申し訳ありませんが、それはできません」


「できない? なぜ?」


「今このタイミングであること。それが最も重要なのです。落ち着いた状況で会話ができるのは、今夜が最後となる可能性がありますから」


「…………?」


 意味が分からなかった。

 革命軍が日本の変態管理のシステムを変えたとして、それがどうして俺と父さんが会話できなくなることに繋がるんだ……?


 今夜が最後かもしれないという言葉からは、どうしても不吉なものを感じてしまうが……。

 

「それに光太郎様はここを離れたあと、マンションに戻られるおつもりなのでしょう? それは無意味です。今頃はシュアル様が、ナギサ様の身柄を拘束するために、マンションを制圧しておりますので」


「……」


 あいかわらず言葉の真偽は不明だが……。

 そんな話を聞いて、大人しく御城ケ崎についていこうと思えるはずがない!


「瞬着!」


 袖から勢いよくボクサーパンツを射出した俺は、結果を確認することなく身を翻し、その場を駆け出す。


 もはやなりふりかまっていられない。

 他に潜んでいる敵がいようと知ったことか。


 とにかく全力でこの場を離脱だ!


 ひとまず大通りに出て、ナギサ先輩に連絡を――。


「……っ!?」


 疾走開始からわずか数秒、両足に違和感があった。

 なにかが絡まってる……!?


 だめだ、うまくバランスが保てない……!

 

 衝撃を殺しつつ地面に倒れ込んだ俺は、すぐさま上体を起こし足元を見る。


 俺の足に巻きついているのは……御城ケ崎に向けて射出したはずのボクサーパンツ……?


 まさか投げ返してきたのか?

 この一瞬で?


「プレゼントをお返しするのは失礼かもしれませんが……さすがに男性用の下着は持て余してしまいます」


 御城ケ崎はゆっくりとこちらに近づきながら、胸ポケットからなにかを取り出すと、見せつけるようにひらひらと振る。


 それは……トランクスだった。

 その柄に見覚えがある。

 

 ――俺がさっき逃げ出そうとしたときに、牽制目的で放ったヤツだ。

 まるで消失したかのように、影も形も見えなくなったあの下着。

 

 それが御城ケ崎の手元にあるということは……。

 

 俺はてっきり周囲に潜んでいる誰かの手で対処されたと思っていたが、実際は見えなかっただけで御城ケ崎が回収していた……?

 

 だとすると御城ケ崎は、俺の想像をはるかに超えるスピードの持ち主ということに……。

 

「――いいことを教えて差し上げましょう」


 御城ケ崎は、地面に座り込む俺の目の前で立ち止まると、穏やかに微笑んだ。


「光太郎様がその身に纏う変態オーラは、確かにすさまじいものがあります。それだけのオーラを放ちながら、よく日常生活を送れると感心しているほどです」


「……なにが言いたい」


「光太郎様の目から見て、わたくしの変態オーラはどれほどのものでしょう?」


「……ない。ほとんど感じない」


「うふふふふ」


 不気味な笑い。

 それは俺の回答が不正解であることを物語っていた。


 御城ケ崎は、ゆっくりと立ち上がる俺に余裕の表情を向けている。


「おかしいとは思いませんでしたか? こんなに変態的な言動を繰り返すわたくしから、オーラをほとんど感じないことに」


「それは……」


 たしかに不思議に思ったことはあった。

 

 盗撮行為にしろ普段の発言にしろ、御城ケ崎の言動はとてもじゃないがアウトなものが多い。

 

 もし彼女が放つ変態オーラがラビュと同レベルだったとしても、驚きはしないだろう。


 御城ケ崎は戸惑う俺を見て、満足げな表情を浮かべる。


「光太郎様は、変態が放つオーラの意味を勘違いされているのです。変態オーラとは、その変態が持つ変態性の高さを示すものではなく、その時点での欲望の強さを示しているにすぎません」


「欲望の強さ……?」


「ええ、すべての人間は、多かれ少なかれ変態的な願望を抱えて生きています。しかし同時に、適度に欲望を発散させて暮らしている。だからこそ、通常は極端に変態オーラが高まることもないのです」


 でもあの男のオーラはかなりの高まりを見せていて……それは皆みたいにうまく欲望を発散できていなかったせい?

 ラビュのオーラの強さもそういうことだったのか……?

 

「……凄まじい変態オーラを放つ人間は……ただ生き方が不器用なだけ……?」


「良い表現ですね」


 御城ケ崎は静かに笑う。

 

「もちろん例外はあるでしょうが、うまく欲望を発散できないという意味では、おおむねその認識で良いかと。逆に言えば、どれほど大きな欲望を心に秘めていたとしても、それをきちんと発散することさえできていれば変態オーラが極端に高まることは無い。変態パワーを感じないから強力な変態ではないというのは、単なる勘違いです。つまり――」


 御城ケ崎はうっとりとした表情で右手を天に掲げる。


 その直後、彼女の手にまばゆいばかりの輝きが宿った。


 いや、手だけではない。

 一瞬のうちに、彼女の全身は神々しい金色のオーラによって覆われている……!


「……な、なんだよそれ……」

 

 気圧されるように。怯えるように。

 俺はじりじりと後退していく……。


「うふふ。やはり連城の血は優秀ですね。その力が存在していることさえ理解できれば、当然光太郎様も感じ取れるわけです」


 止まらない全身の震え。

 俺の本能が、力の差を感じ取っているのか……?


「ご、御城ケ崎……おまえの……その全身を覆う金色の輝きは……!」


「――HENTAI(へんたい)レボリューションパワー」


「HENTAIレボリューションパワーだとぉ……!」


「何者にも奪われることのない真なる変態のかがやきが、ここにある」


 御城ケ崎はそう言うと、怯える俺を見て薄く笑った。

 その嗜虐的な表情に背筋が凍る。

 

 よくわからないが、とにかく嫌な予感しかしない。


 ここは『千手』で応戦を――。


「がっ!?」


 衝撃は背後から。

 いきなり腕をひねりあげられ、気付いたときには地面にねじ伏せられている。

 

 くそっ……やっぱり隠れている敵がいたか……!


「逃げることは不可能だとお判りいただけましたか?」


「えっ……?」


 けれど頭上から聞こえてきたその声は、御城ケ崎のもので……。


 まさか……あの一瞬で背後に回った……?

 そして俺を力づくで拘束している……?


 この出力の高さはカンリシャとして目覚めたラビュ並み……いやスピードに関しては、明らかにそれ以上なのでは……。

 

「ですがご安心ください、そもそも逃げる必要などないのです。わたくしはただ単に、光太郎様をご両親のもとに案内したいだけですから」


 その優しさで装飾された言葉が、俺の頭にさらなる混乱を生む。


 ――両親のもとに案内する。

 わざわざそんな表現をする以上、そこには当然俺の母さんも含まれているわけで。


 でも俺の母さんはすでに死んでいる。


 ……つまりこれは、父さんに会わせたあと俺を殺して天国に送るぞという殺害予告……?


 それともきちんとお墓参りしろという親切な提案……?

 

「ついてきていただけますね?」


「……」


 なにが待ち受けているのか分からない以上拒否したいのが本音だが、彼女との力の差は歴然。

 というか、すでに拘束されているのだから俺に拒否権なんてものは無い。


「……わかった」


 そうだ、ここは前向きに考えよう。

 父さんに会わせてくれるというんだから、会わせてもらおうじゃないか。


 どう動くかなんてその時に考えればいい。


 ……それでいい、はずだ。

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