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見習い管理官・連城光太郎とハーレム狙いの少女たち  作者: 阿井川シャワイエ
第3章 変態パラダイスマンション

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第93話 崩壊する日常 その1

「はあ……」


 マンションの自室にたどり着いた俺は、真っ暗な部屋の電気をつけ、ベッド目掛けて勢いよく倒れ込む。

 そして心地よい疲労感に包まれたまま枕に顔を埋め、今日の出来事をぼんやりと思い返していた。

 

 プール、楽しかったな……。

 昼食後も散々泳ぎ、結局外が暗くなるまで遊びまわったんだから、ほぼ一日中あの施設にいたようなものだ。


 ラビュと御城ケ崎の退院祝いという名目だったが、終わってみれば誰よりも俺自身がプールを堪能していた気がする。

 

 ただ結果的にではあるが、御城ケ崎に悪いことをしてしまった。


 別れ際、去り行く俺たちを名残惜しそうに見ていて……。

 

 そりゃそうだよな、自分以外の部活メンバー全員が、俺のマンションに向かって行くんだ。

 仲間外れにしたわけではもちろんないが、御城ケ崎がそう感じてしまうのも無理はないだろう。

 

 俺だって逆の立場なら、やっぱり寂しいだろうし。

 

 ここは、招待してもらったお礼も兼ねてなにか彼女のテンションが上がりそうなプレゼントでも考えておくか?

 もらいっぱなしというのは性に合わないし、それもいいかもしれない。

 

 しかし御城ケ崎が喜びそうな物か……。


 ……盗撮系のなにか?

 いやいやいや、それはさすがに……。


「……ん?」


 枕に顔を埋めたまま物思いにふけっていると、マンションの外から嫌な気配がした。


 これは――。


「露出魔……か」


 また面倒なタイミングで出没するものだ。

 いや、露出魔が出ていいタイミングなんて無いのだから、いつだって面倒ではあるが。

 

 しかしこの露出魔に関してはまたちょっと別で、腐れ縁と言うかなんというか……とにかくこういう疲れを感じているときに相手をしたいタイプでは無かった。

 

 ――露出魔。

 ぶっちゃけ俺は同類なので、奴のことを悪しざまに罵る資格なんて無いが、このおっさんが放つ変態オーラは特に凄まじく、遠く離れた場所で犯行に及ぼうとしていても自然と俺のアンテナが感じ取ってしまう。

 そして感じ取った以上は無視することもできないので、状況を確認するためにオーラの発生源まで赴かないといけなくなるわけだ。


 今までは犯行を寸前で防げていたこともあり身柄の確保まではできていないが、夜の闇と共に定期的にやってくる、俺の睡眠を妨げる迷惑極まりない相手だった。

 

 もっとも4月ごろに出没したのを最期にしばらくご無沙汰だったのでついに引退したのかと思っていたのだが……どうやら活動を休止していただけだったらしい。


 ……しょうがない。行くか。

 幸いまだ部屋着に着替えてないし、明日の朝になって被害者が出たというニュースを聞くのも嫌だしな。

 

 と、その前に一応ナギサ先輩にも声を掛けておこう。

 危険度は低い相手だが、だからといって安全とも言いきれない。

 いざという時の保険は大切だ。


 俺は軽くため息をついてからベッドを離れ、廊下に顔を出す。

 すると、ちょうど部屋着に着替えた彼女が部屋から出てきたところだった。

 

「先輩、俺ちょっと出てきます」

 

「……大丈夫? 私も行こうか?」


 さすがは先輩、話が早い。

 俺と違って変態の気配を察することができないのに、こちらの態度からなんの話かすぐに分かったらしい。

 

「いえ、男の露出魔なので、ナギサ先輩がいるとかえって興奮して面倒なことになりかねません。それに何度か応対したことのある相手なんで、大丈夫です」


「そっか……油断はせずに気をつけるんだよ」

 

 心配そうな彼女に頷きを返し、静かに玄関から抜け出た。

 

 1階の自動ドアを抜け頭上を見上げると、そこには真っ暗な夜空が広がっている。

 

 ……あの露出魔は、たいていこういう夜に犯行に及ぶんだよな。

 まるで明るい月を恐れるかのように。

 

 ちなみに村にいたときの俺はどちらかというと、星々に照らされながら露出したいほうだった。

 特に満月の夜なんかは最高で……だからあの露出魔の気持ちは、正直よく分からない。


 ――と。


「……いた」

 

 露出魔の気配を辿り夜道を進むこと数分。

 繁華街の外れにある薄暗くてだだっ広い公園にたどり着き、周囲を注意深く観察すると、あっけないほど簡単にその姿を見つけることができた。

 

 気温が上がってきたこの時期に、茶色のロングコートを着て帽子にマスクまでした不審な男。

 公園の奥にある管理小屋らしき建物の陰に身を隠し、遠くを散策する学生カップルに憎しみの籠った視線を向けている。

 こちらに気付いてはいないようだ。


 様子を窺っていると、ほどなくして学生カップルは公園を立ち去り、周囲にひと気は完全になくなった。

 彼はあらたな獲物を探るように、周囲を見回し――公園の入口に立つこちらの存在に気付いたようだ。

 

 途端、奴の顔に怒りが浮かぶ。

 

「またテメエか……!」


 光栄なことに向こうにも俺という存在は認識されていたらしい。

 まあ当然か。

 何十回も遭遇して、そのたびに取り逃してるもんな。


 そして今回もまたそうなりそうだ。

 今のところは犯行に及んでいない様だし、身柄を確保するわけにもいかない。

 ここは適当に追っ払うことにしよう。


 もちろん素直に帰るわけが無いから、しばらく後を追い回し、犯行を完全に諦めさせる必要があるだろうが……。


「いい加減、屋外での露出行為は諦めるんだな」


 俺は露出魔に近づきながら、静かに語り掛けた。

 

「俺はしつこいぞ。どこまでもつきまとってやる。お前が犯行を諦めるその瞬間までな」


「……ストーカーかよ。気持ちわりい」


 憎悪の籠った暗い瞳をこちらに向けてくるが、俺は意に介さない。

 

 実際、奴のあとを追い回すストーカーとしての覚悟を固めた直後だからな。

 事実を言われてもそうだねとしか返事ができない。


 とはいえ気軽に同意して相手を調子づかせるわけにもいかないので、俺は軽く首を振ってみせた。

 

「くだらん戯言はやめて、さっさと家に帰れ。夜の闇がお前の味方をしてくれると思ったら大間違いだぞ。最近は物騒な連中も増えた。自分は被害者にならないというのは、単なる思い上がりだ」


 それは本心からの忠告。

 この露出魔の放つオーラはかなり目立つから、革命軍が目をつけてもおかしくない。

 薬物の実験台になるのは、こいつだって嫌だろう。


「……」


 こちらの言葉に感じ入ったわけでもないだろうが、相手は無言。

 いつもならそろそろ逃げだす頃だが、そんな様子もない。

 

 なにか俺を出し抜くための秘策でもあるのだろうか?


 俺は相手の動きを警戒しつつ、互いの距離を測った。

 

 ……大丈夫、ここはすでに俺の間合いだ。

 どんな手段を取ってきたとしても、瞬着での制圧は容易い。

 

 大人しく帰るのならそれでいいし、もし暴れ出しても適切に対応できる。


 ……だがどうも様子がおかしいな?


 露出魔は逃げるわけでもなく、かといって向かってくるわけでもない。

 怒っているような泣いているような、表現に困るなんともいえない表情を浮かべたまま、こちらをジッと見ている。


 そして長い沈黙の末に、ようやく口を開いた。


「……おまえ、連城村の出身なんだってな」


「……っ」

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