その5
のりの手を借りて、早速、「小エット」を始めためる。
のりの掛け声に合わせて体を動かしていると、そこに思いがけない人がやって来て…
「え〜とねえ、え〜と、左手は軽く曲げて〜…グーを胸の辺りに構えて〜…そうそう、そんな感じそんな感じ。」
「のり〜…足は?足出すのはどういう風?」
「あ、え〜とねえ、足は〜…ただ普通に前に出せばいいよ!無理して蹴る動作にしなくても、とりあえず前に出せばオッケー!」
「わかった〜!」
「いい?じゃあ…いくよ!ハイ、パンチ!パンチ!パンチアンドキック!そうそう、いいよ〜!める初めてにしては上手〜!」
「え!ホント!えへへ…。」
「じゃあ、める〜…続けるね〜!ハイ、パンチ!パンチ!パンチアンドキック!パンチ!パンチ!パンチアンドキック!…いいね〜!…じゃあ、次、反対側ね〜…反対側やったら、すぐ続けて、右からやるよ〜!」
少しだけ息が上がった私は、頭上に両手で大きな丸のオッケーサインを出した。
「よ〜し、じゃあ、少しテンポ上げてくね〜!」
オッケー!
「ハイ、パンチ!パンチ!パンチアンドキック!パンチ!パンチ!パンチアンドキックアンド、ジャンプアンドターン!」
「ええ〜っ!のり〜!キックの後のジャンプアンドターンって…はあはあはあはあ…あははは…何?」
「え?ああ、なんかいいかなあって…ダメだったあ?」
「はあはあはあ…いや…ダメじゃないけど…急…だなあって思って…。」
「そっかあ…じゃあ、ごめ〜ん!」
「あ、ううん、そんな謝ることじゃなくてさ…なんつうか…。」
上手く説明できなかった。
「あ、いいや、いいよ〜!のり、逆にごめ〜ん!やってもらってるのに…ホントごめ〜ん!」
「ううん、こっちこそ、全然…気にしてないよ〜!める大好き〜!じゃあ、いくよ!ハイ、パンチ!パンチ!パンチアンドキックアンド、ジャンプアンドターンアンド気をつけ!」
「はあはあはあはあ…急…急な気をつけ…あははは…。」
のりに手伝ってもらい、私は運動に励んだ。
途中、どちらからともなく、いきなり笑いが湧き上がり、何度も休憩を挟んでは、2人ともその場でひとしきり笑った。
そろそろ掛け声担当ののりも、動き担当の私も疲れ始めて来たタイミングで、少し遠くから聴き覚えのあるハンサムボイス。
のりと同時に声の方を向くと、そこに笑顔の亀梨くん…と、鶴崎くん。
「鬼塚さんと山田さん!な〜にやってんの?」
「えっ!あっ…。」
ど、どうしよう、緊張しちゃって、これ以上声出ない。
みるみるうちに顔が赤くなっていくのを感じる。
「あっ!あ〜…あのねえ…その…めると遊んでたの…ねえ、める。」
私はコクンと頷くしか出来ない状態。
それと同時に、心でのり、ナイス!と叫んだ。
どうやら私が緊張し過ぎて、フリーズしかけているのをよ〜く理解した模様ののりは、いつになく頼もしかった。
「へえ…どんな遊び?良かったらさ、俺たちも一緒に遊んでいい?」
亀梨くんのありがたい申し出に、のりはすかさず「いいよ〜!」と答えた。
「え〜とね、あたしの掛け声に合わせて、その通りに動くだけなんだけどね…じゃあ、ちょっと、やってみるね!あ、いい?める?」
私は激しく頭を上下に振った。
それはさながら「ヘッドバンギング」の様だった。
「ハイ、パンチ!パンチ!パンチアンドキック!パンチ!パンチ!パンチアンドキックアンド、ジャンプアンドターン!」
めるのキレのある動きを手本に、次から亀梨くんも参戦。
何度かやっていると、亀梨くんのツレの鶴崎くんがのりの掛け声に合わせて曲をかけ始めた。
そうなると、音楽につられた形で、続々と人が集まり、集まった人達も一緒に動いて楽しい雰囲気に包まれた。
すると、ギャラリーの中の誰かが、この集まりをニュックニャックに投稿したらしく、いつのまにか私達、思いがけずバズってしまった。
それが良いのか、悪いのかはわからない。
でも、ハッキリとわかっていることは、これがきっかけで隣のクラスの亀梨くんと仲良く話せたこと。
今までは姿を見るだけで幸せでキューンとなってた私だけど、亀梨くんと…あの亀梨くんといっぱいお話できちゃった!
きゃはーん!
あ〜…嬉し〜〜!
のり、ありがとう!
のり、大好き!
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。