その31
お話の続きです。
のりとめるのクラスに転校生が来た。
公園でのりと2人向かい合ってブランコに立ち乗りした、あの日。
あたしに頼む前、死にそうな程深刻な顔だったのり。
もしもドラマの様に、本当にタイムリープしてしまったら…と、考えていたそうだ。
やってみて成功させたい気持ちと、万が一成功したとして、その後ちゃんと元の世界に戻って来られるのか。
戻って来られなかったら、あたしを巻き込んでしまって申し訳ない、どう責任をとったらいいのかなどなど、考えれば考えるほど迷いの迷宮に迷い込んでしまったと。
それでも、やっぱりやってみたい。
冒険してみたいと思ったって。
可愛いなのり。
一緒にいるとますます楽しいよ。
あの後、のりが観たと言う昔のテレビドラマを、あたしも観てみた。
なるほど!面白い!
でも…内容が…粗い設定と雑な内容に加え、学生役の若い俳優さん達の棒読みの演技が斬新だと思った。
現代みたいに「伏線を回収する」ことはほぼ無く、「え?あれは?どうなったの?」がいっぱい。
なのに、物語はどんどん進んで。
…昔はおおらかだったんだねえ。
細かいところは追っちゃダメ!野暮ですよ!って感じなんだねえ。
ドラマを観たそれぞれで「勝手に上手く腑に落ちて」って言う「体」(てい)なんだねえ。
そういう感じで、のりもあたしもいつの間にかハマってしまっていたようだ。
だからか、今日、転校してきた「野口基」君のことを、妙に警戒して遠巻きに見てしまった。
のりと「もしかしたら…宇宙人だったりして…。」だの、「違う次元から来たジプシーなのでは?」だの、「遠い未来から来た未来人の場合も…。」だの、多分普通の転校生の野口君を随分勘ぐってしまった。
それから数日経つと、今度は「どこかの階段から転校生の野口君と一緒に転がって落ちて、体が入れ替わったらどうする?」などと心配する様になっちゃった。
けれども何も起こらない。
起こるはずもない。
のりとあたしにとり憑いていた妙なものは、中間テストが来週に迫ってきたことで、ようやく空気の様に薄まった。
テストがすっかり終わった後、のりと2人で再び公園に寄った。
今度はそれぞれでブランコに腰かけて乗った。
夕陽を眺めながらゆっくりブランコを漕いだ。
すると、茶色いプードルを連れた野口君が通った。
「あ、野口君…。」
あたし達に気づいた野口君が、プードルと一緒にブランコの方へ。
「やあ!」
爽やかな笑顔の野口君と、あたし達、やっとちゃんと話せた。
とっても明るくて面白い野口君。
勝手に警戒していて申し訳なかったな。
のりもあたしと同じ気持ちだったようだ。
可愛い可愛いプードルは、「プルちゃん」だって。
それはさておき…プルちゃん、可愛〜〜〜〜〜い!
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。




