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その3

急にこの先のことが心配になったのり。

早速、めるに相談を持ちかけるが…

「ねえ、める…あたしさ、この先、貴族になったらどうしようって思ってさ…めるだったら、どうする?」

「へっ?えっ?何?貴族?」

「そう、貴族。」

「貴族って、貴族って、あの?貴族?」

「そう、だから、その貴族よ!」

「えっ?えっ?何?のり、この先、もしかしたら貴族になるかもって思ってんの?」

「えっ?うん。そう。」

あはははははは。

「何?どしたの?める?」

あはははははは…あはははははは…ひゃっひゃー…ぶぶぶぶぶぶぶ〜!

いいだけひとしきり笑った後、まだ余韻が残るも、キョトンとしているのりと向き合った。

「の…のり…本当に本気で…んふふ…この先、貴族になるやもしれない…ふふ…って…そ、そうだの?んふ、ふふ。」

「え〜っ!そうだよ〜!」

「マジ?」

「マジ本気!マジ本気!」

「…あ、あ、そうなんだねえ…ふふふ…で?貴族になったとして…何が心配なの?」

「あ〜…そうそう、毎日さ、ドレス着る…。」

「えっ?あっ!えっ?ドレスの方?」

「そうだよ!なんで?貴族ったら、ドレスじゃん!」

「あっ、そっち?あたし、てっきり平安貴族だと思ったから、十二単衣の方かと思ったけど…。」

「えっ?めるは逆にそっち?和風の貴族だった?」

私はコクンと頷いた。

「えっ!そうなんだあ…意外!めるは和風の貴族側だったんだあ…そっかあ…あたし、そっちは全然思い浮かばなかったわ…マジで…もうさ、ドレス着る洋風の貴族しか頭になかったもん。」

「へえ、そうなんだねえ…なるほど〜…で?ドレス着るのの何が心配?いいじゃん!毎日、綺麗な格好できてさ…それはヤダの?」

「ああ、うん、ドレス、綺麗だから着たいなあって思うんだけどお…でもさ、コルセットでギューってキツく締め上げるじゃんかあ、あれがちょっとしんどそうって思ってさあ。」

「あ〜、コルセットかあ…確かに、苦しそうだよねえ…。」

しばし、2人は黙りこくった。

沈黙を破ったのは、める。

「あ、でもさあ、うちのお父さんも毎日コルセットしてるけど、着けてる方が腰、楽だって…。」

「あっ、めるんちのパパ、腰のヘルニアの手術したんだっけか?」

「そうそう、あたし達が小6の冬だよ!そん時になんか型とって、プラスチックっぽい素材のやつと、メッシュ地にいっぱい金属の棒が付いてるやつと、2種類作ったんだよねえ。でね、腰をこうグッと固定すると、すんごく楽だし痛くないって…だから、ドレスは大丈夫なんじゃない?ちょっとトイレが大変そうだけどねえ。」

「そっか、そうだよねえ…トイレ問題忘れてたよ…じゃあ、じゃあ、和風にするかな…着物の方が楽かもしれないし…。」

「それは〜…甘いかもよ。」

「えっ?そう?」

「うん、だってさ、十二単衣だからね。」

「そっか、貴族だから…。」

「そうだよ!十二単衣ってぐらいだもん、12枚も着物重ね着してるんだよ!」

「そっか…あ、でも、帯外せば、ババーって前開けてすぐ脱げるじゃん!そしたら、トイレも楽なんじゃない?パンツとブラだけになっちゃうけどさ。」

「えっ?着物の時って、下着着けないんじゃなかった?あれ?違ったっけ?」

「え〜…じゃあ、下から風入ってふぁっさふぁっさ寒いんじゃない?あんなに上はいっぱい着てるのに、下半身ふぁっさふぁさって…。」

「それは…さすがにヤダね…あ、ところで、十二単衣時の帯ってさあ、12枚越しに締めてるんだっけ?だったら、ものすごい長さになりそう。」

「いやいや、1番上は羽織ってる感じじゃなかった?確かそうだよ!教科書とかの絵で見たことあるもん!だから…う〜ん、そうだねえ、帯は上から2番目辺りで締めてるんじゃないかなあ?着物って、ボタンとかチャックとかマジックテープとか付いてないもんねえ…ただ着ると、前が全開だもんねえ。」

「そうだねえ…。」

再び沈黙の2人。

一体どれぐらいの時間が経ったのだろう。

静まり返った空気をぶち破ったのは、のりだった。

「…あ〜…じゃあさ…あたし…貴族になるの…やめるは…なんか…着るものだけでも、相当無理そうだもん。」

「そっか…そうだねえ…その方がいいかもねえ。」

「うん…あたし、ストレッチ素材大好きだし!寒い時期は暖か素材、暑い時期は着るだけで涼しくて汗とかすぐ乾く素材が好きだからさ!」

「だよねえ!」

そう相槌は打ったけれど、そもそも、あたし達くんだりが貴族になれる訳もなく。

特に和風の貴族なんて、もうこの世に存在すらしないだろうに。

万が一、万が一でも、どっか外国の貴族にでも見初められたら、あるいは本当に貴族になれる可能性もあるかもしれないけど…。

けれども、今は現代。

自分達が想像している様なドレスだの、十二単衣だの、今時着るのか?

などなど…モヤモヤした気持ちも残しつつ、このどうでもいいやりとりがすこぶる楽しかったと感じるめるだった。

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願いします。

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