その19
土曜日の朝、迎えに来てくれたのり。会場へ向かう道中、めるの両親の話になるも…
朝早く、のりが迎えに来てくれた。
「おはようございまあ〜す!今日は、あの、宜しくお願いしま〜す!」
のりのママさんが運転する軽ワゴン車の後部座席に乗り込むと、早速レッツゴー!
「後ろの荷物、すごいねえ。」
これを今日売るんだと思うと、自然と気合が入った。
「ああ、そうそう、今日、うちの親がお祭りに行けないけど、皆さんに宜しくって言ってました。」
「え〜、そんなの全然気にしないで〜!ところで、めるちゃんのパパさんとママさん、今日はお仕事か何か?」
運転しながら、バックミラー越しにのりのママさんが言った。
「あ、いえ、今日は…その…2人で、日帰りの温泉バスツアーに出掛けてまして…。」
「へ〜!いいなあ〜!ねえ、どこ行くの?」とのり。
「ああ、なんかね、高速に乗るらしいから、結構遠くまで行くんじゃないかなあ…ものすごく朝早く出掛けてったもん。」
「へ〜、そうなんだあ。」
「だってね、朝、5時半に駅前に集合して、そっからバスに乗り込んで高速でしょ?確かね、色々寄るって。」
「へえ、例えば?」
「え〜とね、確かね、順番はちょっとわかんないんだけどね…え〜とね、確か、どっかの観光農園でいちご狩りするんだって。」
「わっ!いいなあ!イチゴ〜!僕も食べた〜い!」と、助手席の優馬君。
「なんかね、ハウス栽培のところだから、季節とか、天候とか、あんま関係ないんだって…いつでも、大体、美味しいイチゴがいっぱい採れるって…あ、で、そこ、別料金払うとね、山盛りの生クリームのボウルかなんか…まあ、よく知らないけど、なんか入れ物にどっさり山盛りの生クリーム入ってるやつがあって、それに自分で収穫したイチゴをつけて食べると絶品って言ってた。」
「わあ!食べたい〜!」
のりと優馬君、そして、のりのママさんが声を揃えた。
「だよねえ…そこ、他にもイチゴのソフトクリームとか、イチゴのクレープとか、イチゴジュースとか、イチゴのプリンだとか、まあ、色々あるらしいよ…そんでね、後はね、確か海の近くの食堂だったか、ドライブインだったかで、名物のすごい山盛りの海鮮丼を食べるって言ってたな…それと…どっかの道の駅で、旬の野菜の詰め放題もやって…後、そうそう、洋菓子も和菓子も作ってる、そこの地元の大きいお店にも寄るんだって…後ね、なんか山奥にある、なんだか湖の近くの温泉に入って…後ね、お肉!そう!これまたどこかちょっとわかんないんだけど、観光酪農場だったかな?そこでバーベキュー食べるって…後、まだ、どっか、寄るって言ってたけど…ごめん、忘れちゃった…えへへ。」
「なんかすごいねえ、そのツアー…あたしも行ってみたい!ねえ、ママ、今度、みんなで行こうよ!」
「そうねえ、行きたいねえ…で、めるちゃん、そのツアーって、やっぱりお高いんでしょ?」
「あ〜…確か、1人7〜8千円ぐらいじゃなかったかなあ…確か1万はいかないって言ってた気がするけど…。」
「えっ!安い!安いんじゃない?それ!」とのり。
「だよねえ…いちご狩りに、そこの観光農園でなんとかって品種のイチゴ1パックもらって〜、山盛りの海鮮丼食べて〜、そこではなんか海老とかホタテとかの詰め合わせのセットもらうって…後、野菜の詰め放題は3種類付いてくるらしくて、それ以上やりたい人は自腹って…そして、焼き菓子とか、あんこを使った和菓子の小さい詰め合わせももらえるって言ってたかな…それと温泉だもんねえ…そして、バーベキューにお土産は、自家製のベーコンとかウインナーの小さい詰め合わせと、チーズやバターの試食セットと、小さい瓶の牛乳も貰うって…すごいよねえ。」
「まあ、でも、寄るとこ、寄るとこで、結局、あれこれいっぱい買っちゃうもんねえ、お土産…それで採算が合うってのか、バス会社も元取れるとこあるんだろうねえ…提携してる色んなところとかもさ…。」
のりのママさんの言う通りだと思う。
うちの親、出かける前にものすごい上機嫌で、「お土産いっぱい買って来るから!」と、「晩御飯、楽しみにしててね〜!」なんて言ってたっけ。
だから、それらの寄った場所で、晩御飯なんかもどっさり買ってくるんだろうなあ。
「それで、出発は大体朝の6時ぐらいだったとして、帰りは?何時ぐらいなの?」
のりのママさんに尋ねられ、「え〜と…確か…え〜と…そうですねえ…夜の7時着って…あくまでも予定ではって話ですけどねえ…。」と答えた。
「ひゃあ〜!12時間以上!楽しそうだけど…なかなかハードな旅だねえ…。」
のりがそう言うと、すかさず優馬君が「旅行って、大概そんな感じじゃない?」って。
まだ、10歳になったばかりだと言うのに、この中で1番大人だと思った。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。