のりとめる
幼稚園時代からの幼なじみ、のりとめるの普段の何気ない会話と、ほんわかしたやりとりです。
「なんかね、なんかあ…あたしい、今、超さんざめきたい気分〜!」
「…は?」
「いや、だから〜、だ〜か〜ら〜、だからだから〜、あたしね〜、今〜、超さんざめきたい感じ〜!」
「…いや、だから…は?」
「ヤダ〜、これ伝わってる?あたし言ったの、伝わっておる〜?」
「ん?」
「んや、だ〜か〜だ〜…あっ!だかだっつっちゃったじゃんかあ〜!も〜う!マジ〜!マジで伝わんない雰囲気〜?めるには全然伝わってない雰囲気〜?だったら〜、超マジ信じがたいってかあ、信じるも信じないもあなた次第っつう感じ〜?」
「えっ?はっ?ん?何?どういうこと?」
「えーっ!はあ?こっちこそめっちゃはあ?なんすけどお!めるとあたし、幼稚園の時からずっと一緒で、こうやってずっと一緒じゃんかあ〜!なんつうかあ、めるとあたしは〜、靴下で言うところの〜、右足と左足じゃんかあ、手袋で言うところの〜、右手と左手じゃんかあ、お箸で例えるところの〜、こう、こうさあ、その、なんだ…。」
右手でお箸を持つ仕草をしながら、じっと手を見つめ、想像のお箸の位置をどう説明したらいいのかと、立ち止まり考えているこの人、鬼塚のり。
私、山田めるとは「親友」という関係性。
一応。
一応、今のところって感じ。
初めて出会った幼稚園時代から、わりとずっとこんな風だ。
他の人からは、「付き合いづらくない?」などと聞かれることもしばしばあるけど、私はそうは思わない。
むしろ「面白い」と思う。
一緒にいて、こんなに面白い人っていないんじゃないかな?
家族だって、ここまでではないもの。
「…ん〜…ねえ、める〜…お箸ってさあ、左右に並ぶこともあるけど〜、上下の時もあるねえ…。」
「ん?あ!うん、そうだね。」
「…ん?あれ?あたし、今なんの話してたっけか?ん?」
「ん〜…のりとあたしは手袋や靴下やお箸って…あ、違うか?靴下と手袋は言うところの、で、お箸は例えるところの、だった、かな?」
「…そうだった、そうだった…けど、なんでそんな例えしたんだったかねえ…?」
それは…ずっと一緒にいるのに、なんで話通じないの?って、言いたかったからだと思うけど…。
のり、最初の「さんざめく」の部分、すっかり忘れちゃってるみたいだし、これから話戻して、いちいち説明すんのめんどくさいし…。
ここで私がそうしちゃったら、のりの為にならないってのか、甘やかしちゃダメだよねって思うから…ここはひとつ、じっと待ってよう。
きっとすんごくイライラしちゃうだろうけど、我慢できなくなって、教えちゃいたくなると思うけど…ここはグッと堪えて。
…なんで、私が堪えなきゃならないんだろう…?
…
まあ…いっか。
だって、多分、のりってば、さっき国語の授業で習ったばっかだから、「さんざめく」使いたかっただけっぽいもんなあ。
わかるんだ〜、のりの気持ち。
だって、私も覚えたての新しい言葉は、すぐにでもさらっとかっこよく、使い慣れてる風に使ってみたいもん。
ただ、ただ、実際は使う時、超緊張しちゃって、「噛まない様にすんなりと。」って、何度も何度も脳内で練習するんだけど、いざ口に出してみると、見事に噛んじゃう。
あれって、なんなんだろう?
噛むまい、噛むまいと思えば思うほど、すぐ噛んじゃう。
なんなら、出だしから噛んじゃうんだよねえ。
私だけなのかなあ?
それとも、みんな大概そうなのかなあ?
ふと隣にいるのりを見る。
のりってば、もう違う話してやんの。
「…だって〜…ほらっ!める〜…いいの〜…そんなボケっとしてて!亀梨君、折角こっちに手え振ってくれてるよ〜!チャンスじゃん!チャンスチャンスじゃんかあ!」
「えっ?う、嘘っ!えっ!嘘っ!こっち、えっ?亀梨くん、こっち、めっちゃ見てる〜〜〜!マジマジマジマジ〜!マジ?えっ、うっそ、マジで〜!やべ〜…のり、あたし、どうしよう、どうしよう、今、今あたし、超さんざめきた〜〜〜〜い!」
「だべ〜!」
あはははははは!
あはははははは!
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話は緩やかに続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。