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16話 獣人の里3

ふぅ、何とか間に合いましたぞ!

 「うーん、とりあえずどうしようか」


俺は一人床に座り込んで考え込んでいた。こんな里の住民、そとに放つわけにはいかない。なにせ、子供を余裕で殺すような奴らだ。


「って待てよ?なぁ、そこの君!」


俺はそう言って、シーラの弟に手招きをする。すると、俺が手招きしているのに気づいて、小走りで近づいてきた。


 「なにか用ですか?聞きたいことがあれば、出来る限りお教えしますが」


出会った時と比べて、だいぶ緊張がほぐれたみたいだ。ちなみに、俺たちの冒険譚を聞かせたときに親しくなったから名前を聞いたのだが、どうやら名前はもっていないみたいだ。

まぁ、それは今はいいだろう。


「あぁ、ちょっと気になってな。新しい里にやってきたんだろ?なんで前の里を離れることになったのかは聞かないが、ここに越してきたのはいつぐらいの話なんだ?」


弟君にそう聞いたら、弟君はなんでそんなことを聞くのだろう?みたいな顔をしたが、答えてくれた。


 「ここらにやってきたのは1ヶ月くらいまえです。前の里に住めなくなった時、ここら辺に別の里があると聞いて」


そう答えた。そこで、俺は思う。なら、この獣人達が外に出てくる心配はないのではないか?と。

恐らくだが、複数予備の里があるのだろう。今の里に住めなくなったら、別の所に移るだけだ。ここに住めなくなっても、すぐに別の里へ移動するだろうからな。とりあえずはこの里をぶっ壊すだけでいいだろう。少しでも時間を稼いで、シーラに近寄る獣人どもの対処を考えれば何とかなる。


「よし、これでいこう。あとはプランをたてれば。ま、さすがに明日処刑されるとかは無いだろう。準備とか時間がかかりそうだし」


俺はそう言って、プランをたてるためにまた考えこんだ。


▽▼▽▼


ゴーン、ゴーンと鐘を鳴らす音が聞こえる。朝の合図である。


「もう朝か。時間がたつのは早いな。ある程度プランを立てるのは完了したが、、、」


ちなみに、プランをたてるうえで色々実験してたら、魔力が残り6割くらいになってしまった。だいぶ使ったな。ある程度プランをたてることはできたが、もう少し考えないとどこかでぼろが出ると思うが、昨日ここに入れられたばかりだから、今日処刑ってことは無いだろう。

俺はそう考えて、暇つぶしに魔力の圧縮とかやっていると、


 「そこの女!時間だ!こっちこい」


そう言って、獣人の看守が手招きする。が、俺は気にせず魔力を練り続ける。なにせ、今日俺が呼ばれるわけないからな。そう考えていると、


「無視をするな!そこのたれ耳のお前だ!」


そう言って、俺を指さす門番。…は?


 「なるほど?これはつまり、あれだ。物語とかでよくあるフラグ回収とか言うやつか」


 俺がそう言っていると、しびれを切らしたのか看守が牢に入ってきて、俺をつかむ。


 「なに言っているかは知らないが、いいから来い」


そう言って、俺の腕を引っ張ってくる。

女の子に触れるとか変態か?まぁ、さっきから言動が全く女っぽくなかったが。実際女じゃなくて男だし。

 何て考えていると、門番は俺をずるずると引きずって歩き出した。


 「えっと、これから処刑されるかんじ?」


 引きずられながら俺がそう聞くと、看守は小さくうなずく。


 「はぁ、もう少し長く生きたかったのです」


ま、あくまでジョークだ。だって俺、死なないし。


「……」


流石に話題が重すぎたからか、看守は黙り込んでしまった。

 俺が思うに、この看守は俺たちにとっての常識人に近い。感性がずれているところもあるだろうが、俺たちと似通った感性の持ち主だろう。こういう人は、あまり殺したくない。そう考えながら、しばらく引きずられると、見覚えのある所にたどり着いた。


 「ここは…昨日子供が処刑されたところなのです」


俺が連れてこられたところは、昨日獣人の子が処刑されたところだった。が、床には一滴の血痕もない。すると、俺の視線に気づいたのか、


 「血痕が無いことが気になるのか?」


そう聞いてきた。別に気になってはいないが、、、まぁ参考になるかもだし聞いてみるか。


 「血液は、呪いを集めやすい。だから、綺麗に掃除するのだ。昨日も掃除係が地面に這いつくばっていたぞ。大変そうだったな」


と、教えてくれた。そして、俺はここで思ってしまった。“あぁ、この人も他の奴らと一緒か”と。いや、正確には違うだろうが。

 ここの獣人は頭のおかしいやつらが多い。そして、この獣人だけはまともに見えたが、違ったようだ。

この看守は、他の獣人とジャンルは違えど、頭がおかしい。なにせ、死刑囚と平然と話しているのだ。自分が処罰されるかもしれないのに。これを、頭がおかしいと言わずしてなんという。

そう思ったが、看守が歩き始めたのでそれはいわず、黙ってついていった。


「ここで、呼ばれるまで待機してろ」


看守についていった俺は、処刑場?の地下室の壁に括りつけられた。暇だ。一体いつ呼ばれるのか。それがわからなかった俺は、呼ばれるまで寝て待つことにした。呼ばれたら、処刑されて神化して滅ぼして終わりだ。完璧だな。そして俺は、眠りに落ちる。


▽▼▽▼


 『ちょぉっとまてえぇぇぇ!』


 目を閉じた瞬間、そんな言葉が聞こえてくる。その声は、もう聞きなれてしまったものだった。


『黒川か。それで?今度は何の用だ?』


 俺は目の前で騒いでいる黒川に声をかける。しかし、この短期間で自分から2度も姿を見せるなんて珍しいな。

 なんて思っていると、黒川がまた叫ぶ。


 『お前は!神が!どんな存在なのか!理解できて!ない!』


 と、黒川が一言ずつ叫ぶ。が、どんな存在なのか理解できないって、それは心外だ。それくらいは知っているさ。勇者時代に聖水買うとき長々と説明されたからな。


 『神って、あれだろ?なんかすっごい神聖なオーラふりまいて、加護とか与えるやつらの事だろ?』


 そう答えると、黒川はあきれた目で見てきた。


『な、なんだよ?』


俺がそう聞くと、黒川は


『お前、ほとんど理解できてねぇじゃねえか。ったく』


『う、うるせぇやい!なにか文句あるのか!』


俺が開き直ってそういうと、『自分の事なんだから把握しとけ』とごもっともなことを言われた。そして、


 『さてと、そんなことはどうでもいい。本題だ』


そう言って黒川が話始める。


 『お前、神様は神聖なオーラふりまく奴らとか言ってたよな。その神聖なオーラってなんだと思う?』


黒川がそう聞いてきたが、俺はそんなの知らない。だから答えることができなかった。そんな俺を見て、黒川は『んなこったろうと思ったよ』そう言って、説明し始める。


 『神聖なオーラ、これは体からあふれ出た神力だ。お前はただでさえ今神力が少ないのに、さらに神力を浪費してどうする?下手したら死ぬぞ?』


そう言ってきた。が、そこに一つの疑問が生じる。


 『神力の流出って、抑えることはできないのか?』


大体こういう力は抑えられると相場が決まっている。魔力だって制御しなかったらあふれ出るしな。神力も同じものだろう。そう考えた。が、黒川の反応を見るにあまりいい質問じゃないみたいだ。そして、その質問に黒川が答える。


 『確かに、流出は抑えれる。だが、神の姿であること自体が問題なんだよ。現実世界に神が滞在するのは、そこそこ神力を消費する。だから、人の姿になって神力の消費を抑えるんだ。ま、それでも多少は出てしまうがな』


そう答えた。

 そういえば、俺が神になって初めて下界に降りたとき、自動で人型になったなと、今思い出した。夜になったら解除されてたっけ。って、なんで解除されてたんだ?

俺がそう考えると、黒川は思考を呼んだのか、速攻で『それは答えられない』と言った。どうやら、答えてくれそうな雰囲気ではないな。


 『仕方ねぇな。だが、いつか教えてもらうぞ』


俺はそう言ったが、黒川は答えてくれそうにないな。と心の中で少し苦笑いをする。


『まぁ、神の姿になったら神力消費して、めんどくせぇからとにかく死ぬなってことだ。わかったか?』


もういろいろ説明が面倒くさくなったのか、黒川は端的にまとめる。そして、おれはその黒川の質問に


『できる限りのことはする』


と答えた。その回答を聞いた黒川は少し不安そうな表情をしながらも、


 『そうか。それじゃ、しばらくはお前の顔は見たくない』


そう言い残して、消えていった。そして俺も、だんだん現実世界へ意識が引っ張られていった。


▽▼▽▼


 「さてと、今何時くらいなのかな」


黒川との会話を終え、目覚めた俺は時間を確認する。


「8時50分か。だいぶ寝たな」


 体感時間は数分程度、ここに連れてこられたのは7時くらいだから、大体2時間寝たのか。


「それよりも、神力か。体内にどれくらい残っているのか実感しずらいな。何となくだがまったくもって増えている気がしない。魔力のように時間経過では戻らないらしいな。今度黒川に聞いてみるか」


 と、ぶつぶつと独り言を言っていると、看守がやってきた。


 「時間だ」


そう言って、壁の拘束を外す看守。そして、俺の腕にロープを巻いて、歩き始める。

 カツカツと階段を上る。なんか、独特な緊張感があるな。また死を体感できると思っていたから少し残念だが、この緊張感を味わえただけ良しとしよう。

 そして、俺と看守が地下から出ると、そこには多数の獣人がいた。そして、隣の看守が声を上げる。


 「この者は我ら獣人の文化を否定し、混乱を招こうとした!よってこの者を斬首刑とする!」


というと、剣を持った男が歩いてきた。


 「あぁ、なるほど」


俺は男の剣を見て、そんな言葉を漏らした。なにせ、その剣は、昨日武器屋で見た剣だったからだ。近くで見るとよくわかるが、普通の人間なら、呪い無効とか無い限り近づいただけで死にはしなくともそこそこダメージはあるだろうな。


 「一体何人その剣で殺してきたのかやら」


まぁ、100や200とかそんな程度の人数じゃないだろう。ぱっと見そこそこ古いものだし、もしかしたら1000は殺してるかもしれないな。

俺はその剣を見てそんな感想を抱く。そして、その男が近くまでやってきたとき、俺を案内した奴、あの男の獣人が出て来る。そして、


 「最後に、言い残すことはあるか?」


と、お決まりの質問を投げかけてきた。


「そうだな………」


俺はしばらく悩む“フリ”をして、


 「二度目だ。どっかーん」


俺がそういうと、直後物凄い熱風と、石つぶてが飛んでくる。ま、俺は結界を張っているかダメージはないが。そう、俺が起こしたのは、水蒸気爆発だ。魔法で威力を落としているから死にはしないはず。

 前回使ったときは、炎と水だけを使って発生させたが、今回は水と炎と土を同時に発生させたからな。しかも、土は超圧縮されている上、2回に分けて作ったから石つぶて、いや、土つぶてが飛ぶわけだ。


 「さぁ、ぶっ壊すぞー!」


俺は拳を天に掲げ、創造魔法を発動させる。


「召喚!召喚!召喚!召喚!召喚!」


俺は、小型の爆弾と、俺自身のゴーレムを創り出す。このゴーレム、強化版だ。

昨日実験して知ったが、分身スキルだと能力が半分程度になるが、創造魔法で創り出した分身だと3/2くらいの能力を出すことができる。

 俺はたちに小型の爆弾を持たせて、里の周りに設定するように指示を出す。すると、俺の分身たちは一目散に走り出した。


 「塀とか破壊したら、移動せざるをえないだろう」


 これが、俺の考えた極力殺さないための作戦だ。ま、穴だらけだけどな!


 「さてと、いい感じにハマってくれるといいんだけど」


▽▼▽▼


~獣人の里付近~


 最弱の神サルアが里で水蒸気爆発を発生させていたころ、里の近くでその音を聞いた少女がいた。


 「この音、まさか!・・・私はやり遂げるよ。“お兄ちゃん”」


もうすぐ、1章終わると思います。終わる終わる詐欺じゃないですよ!本当に、終わると思います。

こう言っちゃなんですけど、明らかな伏線もはりましたし。

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