女神下の死闘
96話 女神下の死闘
「ほう女神見物ですか。アレはもう」
「見たわよ。凄く大きくて、びっくりしたわ。北で見た神殿の女神像も大きかったけどそれ以上ね」
「私も世界中まわっていろんな建造物を見た。やはり故郷のアレが一番だ。ところで、あなた方の中に武術の心得のある方がいますね」
「護衛だ。世の中物騒だからな。旅をしてよくわかった」
「言えてます。私も、ここを出る前はひょろひょろの痩せっぽちでした。イイ師匠につきましてね。今じゃこの身体に拳闘術等を身につけました」
とハリーは腕を曲げて力こぶを見せた。
「大概の強者でも対等に闘えます」
けっこうな自信家だ。
なるほど、この男が帰ってきたんだ、これからの勢力争い変わりそうだ。
ガルガンダ ザンクレ邸
「殺されたのか……」
「酷い遺体でした。殺ったのはわかってますマンダニに傭われている用心棒の二人組」
「役人は」
「無駄です。奴等もマンダニに……」
「マンダニのボスは」
「エゴン・モローという男で、表向きはまともな商人なんですが裏は汚ねぇ男でして、儲けるタメなら悪どいまねを平気で。禁制の品なんかも輸入したり。その船を海賊に護衛させたりしてます」
「海賊に……皮肉なもんだな。俺はそいつに乗って帰ってきた。が、傭われた連中には罪はない。キャプテンはいい男だった。船の積荷の中には奴隷もと聞いたが」
「ええ、他国で捕まえた女奴隷を娼館で働かせて荒稼ぎを、近辺の町にも店をだし。奴隷だから給金は出さない。アコギな商法です」
「なんでオヤジは殺された」
「エゴンのヤロー港を仕切るつもりでさ、それにはウチが邪魔なんでお頭を……」
「ハリー様、詰め所にこんな手紙が」
「『ガルガンダのお頭殺しで、こちらに妙な疑いが、この事についてはちゃんとした話し合いをしたい。明日正午女神像の下で待つ。マンダニ頭領エゴン・モロー』なんだこの教養のない手紙は。早い話、女神像の下で決着をつけるという果たし状じゃないのか。ハリー様、コレは罠です」
「白昼堂々と……往来で」
「お頭様も昼間……女神参りの帰りに。コレは奴等の宣戦布告」
「面白い。この誘いのるか」
翌日正午女神像前。
「おかしいなぁ 頭領はどうした」
「そっちこそ話し合いに大勢で、しかも武器まで」
「武器はお互い様だ。おまえの槍はなんだ」
女神像の頭の中。
「頭領。やはり連中、戦支度で」
「この望遠鏡とやら、よく見える。アレがキレ者というマガ・ザンクレの息子か。筋肉バカにしか見えんぞ。キレ者とは、キレやすいのキレなんじゃないのか」
「で、武器を持ったチンピラ二人と何を話し合うんだ」
「話し合いは、今してる。果たし状を送ったろう。コレは正式な武術の果たし合いだ。それに答えて来た以上死んでも文句は言えねぇ」
「随分まわりくどい事を。なら、そちらも死んでも文句は言わないんだな」
「ほう、あの筋肉男、素手で鬼どもとやるつもりらしい」
「やはり筋肉バカですな」
「頭、あいつらが親父様を」
「だろうな……」
「お頭のかたき!」
おおっ!!
「おい、待て!」
「小物どもが大勢で、出たぞ。二人で奴らは大丈夫なのかヴァンデル」
「心配いりません。まあ見ていて下さい」
「ガハハハハ、雑魚なんぞ何人かかって来ても屁でもないわ」
「雑魚で疲れさせる策ではないのか」
「おまえはその程度の者か」
「いや、アニキこそ」
「誰がじゃい」
「見ろ、ヴァンデル。面白いほど、ヤロー共が殺られてる」
「コレがホントの高みの見物ですなぁ頭領」
まずいなぁ。みんな殺られちまうじゃないか、クソっこうなれば。
「おっ来たな大将!」
「オレらに素手でくるとはいい度胸だ! 邪魔だどけ!」
「がっ!」
「ゲンゴ! おのれ!」
「トオッ。オレの振りをかわした! 筋肉野郎素早いな」
「邪魔だどけぃカイ、ガイラ様の連射突きうけてみろ!」
「かしらっ」
「うぐっ」
「雑魚ども邪魔をするな」
「見ろ、とうとう立ってるのが三人になったぞ」
「邪魔な雑魚はいなくなった」
こいつらあれだけの人数と闘って息一つ切れてない。なかなかの強者。
素手ではきついか。
「おお武器を出したか」
「相手が武器を持った二人だとな」
「アニキ、こいつはオレ一人で。そんな短棒二本じゃ素手と変わらねぇ」
「こいつはあまり使いたくなかたんだが。木じゃないぜ金属製だ当たれば骨は砕き頭は潰れる」
トアアアアア
カンカンカンカン
「よけてるだけでは勝てないぞ!」
カッキーン
ザッツ
「う、腕が!」
「ホラ、ちょっと攻撃したら腕が一本落ちたぜ」
「うぐっ、このぉお。これでどうだ棒は二本のままだ」
「こいつ、棒を切れた腕に。おぃああああ」
カンカンカン
「そっちこそよけてばかりだなぁ、あたったたたた」
カンカン
ブッスツ
「おまえの負けだ死んでもらう」
「ぐっは」
「おお、赤鬼が腹に穴を」
「黒鬼なら首を落としてましたよ。見世物は終わりました。帰りましょう」
つづく




