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国境越え

80話 国境越え


「見れば見るほどおもしれー動物だよなーそいつ」


「面白い? この子の名はジロー。普段はおとなしいけど、怒らすと怖いのよ。このまえ、クマを一撃で倒したの」


「そうなのか。ちょっとティアみたいだな」


「どこが? あたいは、こいつみたいに鎧で武装はしてない」


「怒らすと怖いとこだ」


 まえのレオの馬車とローラ・レイの鎧ネズミに代わったようなものだな。

 日傘をさす女、レオもだったが、もっと大人のローラは優雅だ。


「ロラン好き!」

「え、なんだ急にエスタ」


 エスタは外を行く時はオレが手をつないで歩く。他人が見たら仲のイイ恋人同士に見えるだろう。

 嫌ではないが、胸像だった時と違いイマイチ覇気がない顔。

 でも、もともと惚れた顔で、トロンとした目で、その可愛いい声で言われると悪い気はしないが、コレはエスタの意志では言ってない。


「アニタだろ」

「アニタ、好き!」

「ルルレット好き!」

「グッピー好き! ティアーナ好き! ミシェール好き!」


「そーだよ。アニタもみんな好きだ!」


 やっぱりな。


「私は、ないのねアニタちゃん」


「ローラ今日、一緒だと知らなかったから、今夜教える」


「アニタのオモチャみたいになってるなぁ……」


 オレもナニか教えたほうがいいかな。

 今はオレにべったりだが、そのうちアニタに。


「エスタ、おまえ自分はわかるのか?」

「エスタ……エスタ好き!」


 わかってないみたいだ。


「エスタ、わたしはエスタだ、言ってみな」


 オレはエスタを指差し言ったら、エスタはオレを指して。


「わたしエスタ!」

「じゃなく、おまえがエスタだ」


 オレに向けたエスタの指をエスタに向かせて。


「エスタ!」


 すると。自分で自分を指し。


「エスタ、エスタ、エスタ好き!」


 わかったのかなぁ。まともになるまでホネがおれそうだ。

 元の魔女のロメーンでは、なくオレの好きなエスタにするのか。

 よし、気長にやってみるか。


 半日ほど歩くと国境に着いた。警備兵が居るが入るより出るのは罪人、指名手配者じゃなければ簡単だ。


「吟遊詩人のローラさんじゃないですか。オレ王都であなたの歌を聞いてファンになりました。コレ俺が描いた肖像画ですサインくれませんか」


 オレと同じくらいに見える若い兵士だ。

 ふところから丸めた紙を出して言った。

 やっぱりローラは綺麗だからな気持ちはわかる。


「おい、職務中だぞ……ヤン。すまん、俺のタオルにも書いてくれ」


 この中年オヤジもか。


「次のおまえらは、夫婦か?」

「おっさん、よしてくれ! 他人だ」

「槍持って一人旅か?」

「ああ、俺は武術家だ。隣の国のとある貴族に槍術を指南しに行く」

「その背で武術家?」

「背の高さは関係ないだろ。何ならやってみるかぁ」

「いや、いい。通れ次」

「あたいも武術家だ」


 ティアーナは、マントを、開けて双剣を抜いた。

 相変わらずマントの下はオレのやった乳あてと小さな黒い下着に剣ベルト。


「わかったから剣をしまえ」


 若い警備兵は顔を赤くして言った。


「次、家族四人か。 旅行かな?」

「彼氏と妹よ、あたしにこんな大きな子供がいるように見える」


 今、急に作った設定だ。俺はルルの彼氏か、まあいいけど。


「ルル姉の妹のアニタとエスタよ」

「エスタ、エスタ、エスタ」

「わかったから行け」

「次、女の一人旅か?」

「前の彼氏の愛人」

「はあ? そうか、おい、彼氏。モテモテだな、どちらかに殺されないよう気をつけてな」


 物騒なこと言うな!

 ミシェール、愛人って。


              つづく

 

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