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吟遊詩人

85話 吟遊詩人


「私と契ろう」


 なんてミシェールに言われたオレは、部屋から逃げ出した。


 どうしたんだ。ミシェール。突然あんなコトを。


 やはり、ミシェールはアレを嫌っている。でも、なぜ? アレは、世間に害をおよぼす物なのか? 


 それともオレに嫉妬? まかさ、エスタに恋しているオレにミシェールが。

 あの行動は。しかし、女があんなコトをしてくれたのに。逃げ出したオレ。

 ミシェールに恥をかかしてしまったかな。


 よけいなコト、ミシェールに聞いたばかりに、なんだかおかしなコトになってきた。

 ミシェールはオレを好きなのか? 

 グッピーが、一目惚れするくらいだからミシェールは美人だ。

 別にオレも嫌いじゃない。でも、オレはあの像に恋してしまったんだ。見た目だけじゃないかと言われてるが、あの顔を見てビビッと。


 コレからどんな顔してミシェールと会えば。

 こういう時はオレより大人のグッピーにでも相談してみるか。でも、グッピーはミシェールを。


〘聞こえる?〙


 ん、また。あの声が。


〘聞こえる、ロラン〙


「聞こえるとも、君は誰だ?!」


〘捜して! 女神を。捜して〙


「女神だって、やっぱりマコーナか!」


 返事がない。

 女神って、やっぱりあのマコーナだよな。他に女神は知らない。

 確かに女神と。女神に会えばあの器のエスタが。


「おい、聞こえるか! あんたはロメーンなのか」


 だめだ。返事はない。



 町中の三人。


「エスタの着替え買ったし、さてアニタ。何処か行きたいトコある?」


「あそこの人の集まりはなんだろ?」

「なんか、楽器の音がする。吟遊詩人かしら。見たいアニタ?」

「行って見よう」


「さあ、この町初の私ローラ・レイ。まずは『天空の恋歌』を一曲」


 女性の吟遊詩人ね。

 キレイなフリフリの付いた白いドレスで竪琴のような楽器を抱えて弾きながら歌いはじめた。

 何とキレイな声なのかしら。


「ねぇ、お姉ちゃん。あの人の横にいるのは、なんていう動物かな?」


 その吟遊詩人の女性の横に奇妙な動物が。

 背中に鞍のような背もたれが付いた椅子みたいなのがあるから、アレはあの人の乗り物ね。でも、なんだろうはじめて見た動物。

 まるで大きなネズミに鎧を着せたような。

 動物好きのルルさんとしては正体を知りたい。


   パチパチパチパチ


「ありがとうございます。では、物語をこの話は木彫りの人形が人になるまでの不思議なお話」


 え〜コレはまた。

 あたしは、横で甘木をしゃぶってるエスタを見た。


「お姉ちゃん、エスタの話みたいだね」

「そうね、聞いて見ようか」


   ポロロン


「ある木彫り職人の少年は、自分の好みのままに女の子の人形を彫りました。その出来上がりに大変満足した少年はその木彫りの人形を家に持って帰り、寝床の棚に飾りました。そして少年は人形に語りました。

♪ラララボクが彫ったからだけどぉ〜君はなんてカワイイんだぁあ いつまでも見ていられルゥルゥ ボクだけのキミぃ」


「なんかロランみたいだねウフ」


 けっきょく最後まで聞いてしまい残った小金を全部カゴに入れてしまった。

 少年が作った木彫りの人形は女神に人間の少女にしてもらい二人は幸せに暮したという話だったけど身近に感じた話で感激してしまった。


「お姉ちゃん。イイ話だっね。アニタ泣いてしまった」


「アイネ、アイネ、ア〜イネェ」


 エスタが、物語の木彫りの女の子の名前を覚えてしまった。

 あ、そうだ。


「あのぉその動物はなんですか?」


「あ、よく聞かれるの。ヨロイネズミって、答えてるわ。それだとわかりやすいでしょ。名前はジロー。おとなしい生き物よ」


 吟遊詩人のローラさんはカバンからヤサイを出しあたしに。


「あげてみて、コレ好物だから」


「わぁ食べた。アニタもやりたい」

「ハイ、お嬢ちゃん」


「ありがとう。ホラ食べな」


 あ、エスタが手を出した。エスタもやりたいの?

 エスタはローラさんがくれた野菜を自分の口に。


「ダメよ、エスタ。それはヨロイネズミさんの」


「ウフフフ。可愛い方ね」


「すみません」


「いいわよ、お腹すいてるのかしら。ソレは人間も食べられるから大丈夫よ」


「あの……さっきの話は有名なんですか?」


「アイネの話ね。アレは南方で聞いた話を私が作り変えたの。だからね本当の話とは違うのよ」


「え、アレは本当にあった話なの」


「違うわ。そういう本当ではなくて、私が聞いたお話と今のはちょっと違うという事よ」


「あ、そうか。でも、人形が女神様に人間にされたのは本当?」


「そうね、聞いた話も私の話も女神は同じね」


「そうか、やっぱり女神様はなんでも出来るんだね」


 って、アニタは、あたしとエスタを交互に見た。


「あのね、この子は人形だったんだ」

「こら、アニタ。変なことは言わない。エヘヘまだ、子供なもので」


「ふ〜んそうなのね。だから、この子には魂がないわね」


 えっそんなコトわかるのローラさん。


「そう。エルフの賢者に人間にしてもらったから。空っぽなんだよ」


「エルフの賢者」


「そのおねえさん、見た目若いのに何百年も生きているんだよ」


「エルフは長寿だからね。その賢者はおねえさんだったのね。そうか……」


 なんか、知ってるのかしらこの人。

 この人の瞳、緑色。あのエルフみたい。



 宿の食事場。


「遅かったな、ナニかあったのか」


「別に、エスタの服をどれにしようか迷ったわ」


「悪かったなルル。オレじゃ女の服はわからないからな。それに下着は……」


「町にすっごくキレイな吟遊詩人の人がいたんだよ。それでさぁ。ヨロイネズミっていう動物を連れてた」

「鎧ネズミ?」

「グッピー知らないの」

「いろんなの見たが、ネズミが鎧付けてんのか?」

「人が乗れるくらい大きいんだ」


「ソレはさっき見た」


「ティアーナも見たの」


「宿の納屋に居る。持ち主も……来た」


 あっローラさん。宿はココに。


「あの人が吟遊詩人なんだ……綺麗だ。嫁にしたい」


              つづく

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