別れの旅
82話 別れの旅
エスタが、生身の人のようになった。
だが、あの見開いた目に瞳が出来たのはいいが。魂のない人間とは、こんなボケ顔になるのか。
目は半開きで、いつもぼーっとしている。こうなるとは思ってなかったが、仕方がない。魂がないのだから。
人間化した時は、丸裸だった。誰かの服を借りるまでオレは裸のエスタを背負って崖を登った。
重さは像の時と変わりがなかった。下半身がついたがそのままだ。
「エルフのヒト、服くれればねお姉ちゃん」
「そうね、裸の女の子背負ってるって、ねぇ。ん〜あの像は、人になるとあたしくらいに見えるわよね。なんか裸のあたしが背負られているの見てるみたい」
「そうだな、ちょっと幼顔だよな、あのとろ~んとした目は」
「はいはい、どうせあたしは童顔ですよ」
「なんだ、その顔は俺、なんか悪いこと言ったか?」
「ヴィルヘルム、不思議なものを見たな」
「はい。像が人になりましたね。でも、アレは人なんでしょうか」
「エルフが言っていた人型の器だと。ロランはあんな物を……」
「おねえさま、あのような愛の形もあるんですね」
「愛というのは他人には理解されないものだ」
「そうですね。わたしたちの愛も」
「イータ……」
馬車に着いたらレオが自分の衣類を上から下までエスタにくれた。
服を着させるレオやルルは、まるで人形遊びをしてるように楽しんでる。
ミシェールは相変わらずの無表情でオレたちを迎えた。
オレとエスタを見てちょっとナニかを言いたそうだったが。
「ねえ、ミシェール、アニタたちが崖を降りてる時に上でナニか見なかった?」
「ナニか?」
「ええ羽根が生えたひらひらした服の天使」
「見てない」
「アニタとお姉ちゃんは見たんだ。ちょうどあの崖のあたりに」
「そう。天使が……いい事あるといいわね」
「ロメーラもそんなこと言ってた。天使見るとイイコトあるんだ」
「ティアが闘ったのは、あんなエルフだったのか」
「違う。もっと若い奴だろう。あれほどのエルフなら、あたい死んでた」
町へ帰って、一泊し、その朝。
「もう、私は用無しだろう。ロランたちと別れる事にする」
「ロメーラありがとう。それじゃあまた。何処かで会うかもな。二度あると三度目もあるらしいからな」
「そうね……さよならじゃなく、またね!」
ロメーラとイータは旅立った。
宿出て今度は別の街道を通ることに。
「ねぇロラン。今度は何処へ行くのかしら」
馬車の窓からレオが話しかけてきた。
「まだ、わからない」
「そう。こっちの道に入ったから、決めていたのかと。そのお人形さん、自分で歩けるようになって良かったわね」
「人形と言うな。エスタという名がある」
エスタはオレと手をつないで歩いている。
確かに像を背負ってた時とは違う。
自分の足でしっかり歩いている。
そして、腰の剣を背にした。
この方が歩き安い。
「レオ、靴から帽子までありがとう」
「べつにいいわ、気にしないで。私の可愛い着せかえ人形でもあるからウフフ」
うふふって、エスタをおもちゃにする気か。
「おっ、なんだてめぇら!」
先頭を行くグッピーの前に鎧を着た騎士が三騎。防具だけのが五人ほど現れた。
「レオ、中へ!」
つづく




