王妃の散歩
72話 王妃の散歩
「おおナニヤ王妃だ」
「王妃が城外に」
「みなのもの、頭を上げ。目立つではないか」
「王妃様、やはりそのティアラは」
「こんなものただのアクセサリーだ。馬の上だと目立ちまい」
「いや、服装やその気品はやはり……」
「服装はよく演劇で見る白いマントに金のベルト、革のブーツ。旅から旅の無頼漢ではないか、剣だって実用品で飾り気がないぞ」
「ソレは演劇のヒーローですから目立つ姿で」
「まあいいではないか、私も二十年前までは庶民だったのだ、あの頃の買い物が懐かしい」
「しかし、革命派にでも襲われたら。もう少しお忍びらしく……」
「そんなのが、出てきた時のためにダイモス・セージ。おまえがいるのだろ」
「そうなんですが」
「おまえの言う革命派とやらは、意味がわからんの。なぜ、平和でおだやかなこの国を革命しようとするのだ。普通革命とは、王侯貴族が高い税金取って贅沢三昧、戦争をおこし庶民を徴兵し、戦場へ。庶民たちは生活に苦しみ。悪い政治をたたき、まともな生活をとりもどすためにするのではないか。見ろこのまち中を、皆笑顔で生活しているではないか」
「はい、私もそう思います。この国の革命派は、その逆なのです。わざわざ戦争を起こし国の領土を広げ、大国を作り上げたく思っているのです。奴らのリーダーが王になったら毎日が戦です。争いもないのに隣国に戦争をしかけ、奴らは世界統一を考えているのです」
「世界統一だと、この平和な世に。言い方を変えたら世界征服ではないか。バカバカしい。そいつらは革命派というより、過激派だな。王宮に居たら女はそんな話も聞けぬ。つまらないトコだあそこは。子供たちも成人し、わらわもだいぶ自由になった街で羽根を伸ばしてもいいではないか」
「まあわかりますが、やはり目立ちすぎるのは……」
「ダイモス、あの前から来る馬車は、なんだ? わらわより目立ってないか? あれは引いてるのは馬ではなく大きなカウカウではないか。手づなをとってるのは品の良さそうな執事。あれは何処かの貴族の馬車か? 聞いてまいれ」
さて? 貴族の馬車にしては少し……貴族がカウカウに馬車を引かせたりしない。
「コレは執事どの。どちらのお方かな」
コレは、妙な二人。
馬は見たとこ庶民のものとは思えぬ立派な馬、声をかけてきた男の方は庶民姿だが、変装くさい。
その連れ女性は普通ではない。
ブロンドのロングヘアーの頭上にのるティアラには高価な宝石。白いマントの裏地は真紅と。白い高価な衣装に革のロングブーツ。誰が見ても高貴なお方。まさかこの国の。
「私くしは、さる貴族のご令嬢のお忍びの旅の同行の者。申し訳ありません素性は申し上げるわけには。そちらの高貴なお方には、申し訳ございませんですと」
「いやいや、高貴だなどと。ただの通りすがり遊び人だ」
「その声は……」
馬車の窓が開いて女が顔を。さて、どこかで見たような。
「ロメーラか?」
「はいロメーラ・ブルリで」
ロメーラ・ブルリだと、たしか宮廷画家の。
「久しぶりだの。元気だったか。しかし、さる令嬢とはおまえか?」
「いえ、私はご令嬢のお供で」
「そうか、久しぶりに話がしたい。時間はとれるか」
つづく




