ルグランの町
7話 ルグランの町
ルグランの町。子供の頃、オヤジと一度来た町だ。前の町より大きいし栄えてる。
ルグランは王都に近いこともあり、なんでもある。古道具屋だって、大きさも物の種類数もあの店とは違う。
宿の質も大違いだ。
「おいロラン、あの宿に泊まろう。風呂が有りそうだ」
「オレはあっちの安そうな宿でイイ」
「ああ。じゃ俺はこっちにするぜ。そうだ、あの彼女が来たら呼んでくれ」
グッピーは槍をかついで大きな宿へ入って行った。
まったくあてのない旅だ。そんなに金もない。ぜいたくは出来ない。
それにオレは安い宿の方が落ち着く。
宿の受け付けでジイさんが居眠りをしてる。
「おい、ジイさん!」
「あ、いらっしゃい」
「よだれがすごいぞ。泊まりたいんだが」
「一泊1ニーニョだ」
ジイさんはよだれを腕で拭きなが言った。
1ニーニョとは安い。
「今のとこは一泊」
「前払い」
オレは1ニーニョコインを出した。
「奥のドアを開け13番だ」
ドアを開けると沢山のシングルベッドが並んでいた。三段。まるで何かの巣みたいだ。横にならないと入れない。
ベッドには番号が書いてある。
部屋なんかない。
寝るだけだな。
ベッドには、むさい男が何人かイビキをかいて寝ている。安いわけだ。
とりあえず、宿を出てナニか食うことにした。
グッピーの宿の一階は食堂だ。
行くとけっこうこんでる。
「オーっロラン!」
グッピーが、カウンター席で手を上げた。
何かを食べている。
「どうだ、あっちの宿は?」
「寝るだけだ」
「まあそんなトコだと思った」
「安かった。寝るだけで充分だ。おかげでメシが食える」
「ケチケチしねーで旅は楽しむもんだ」
「あんたは、なんで旅してるんだ?」
「俺は……ガキの頃から武術をやってきた。軍隊にもいたが、ヤローばかりの世界だ。まあ休暇には娼館とか行ったがよ。嫁が欲しくてよー。で、旅に出た」
「軍隊にいても嫁は来るだろう。むしろ軍隊の方が」
「短い期間だった。ルールは面倒だし、上官が気にくわなかった。命令されすのも性に合わない。で、すぐ辞めたんだ。俺はとにかくイイ女を嫁にしたい」
「あのさ、あんたが良くても相手がいるもんだから無理矢理には」
「おまえはバカか? 俺の嫁になってくれるのがイイ女なんだ。一方的に好きになるだけじゃダメだ。そんなコトはわかってる」
「一応わかってるんだな。武術バカでもないんだ」
「俺をなんだと思ってたんだ。今のおまえの方が変だぞ。ただの胸像だぞ。相手には意思がないんだからな、楽しいのか?」
「オレのコトはほっといてくれ、顔見てるだけで幸せなんだ」
「そんな『幸せ』あるか」
「そんなの個人の自由だ」
「お客さん、注文は」
「あ、彼と同じのをくれ、美味そうだ」
「美味いぞ、ドラーゴニアンのキンタマだ」
「なに……」
「あと、安いのでイイ。果実酒を二人分。俺のおごりだ飲め」
いかにも冒険者風の一行が店に入ってきた。リーダーらしい髭面の大男が店員に。
「今晩泊まる部屋を二つ」
男二人女二人のパーティだ。見てすぐにわかる男二人は戦闘士、女はヒーラーか魔道師。
「ありゃカップルだな」
「なぜわかる?」
「見たまんまだ。階段上る時は男女並んでら」
「たまたまだろ」
「見ろ、腰に手をまわしてるだろ」
「ハイ、お客さんドラーゴニアンの玉スープ」
「ホラ、タマタマが来たぜ」
「そのまんまの名前なのかこいつは」
つづく