山のご馳走
62話 森のご馳走
山を登りきり、下りにはいった。
「ヴィルヘルム、あの筋肉ハゲたちが言っていた前王家の残党とは、誰なのかしら」
「あやつらは、ドル・マダーンに雇われていた賞金稼ぎ、詳しい事はあまり知らないようです。すみません、私としたことが怒りにまかせ早まったことを。情報を聞き出すのならドルに……」
「仕方がない、私だつて殺るとこだった」
「ヴィルヘルム、坂の下に小屋があるのだけどアレは?」
「アレは狩人の休憩小屋です。行きは、あそこで一休みしました」
「そうか、じゃあそこで休もう。中で寝れれば今日はあそこで夜を明かそう」
「そうですね。ごろ寝ですが、横になれます」
小屋の横に竈門があった。火をおこしてメシが作れる。
セン一家が鍋などを出し、したくをはじめた。まだ、ミシェールの袋にも、センの馬車にも食料がある。
小屋の扉を開けてみると、中は板張りの山小屋風だ、土をかためた暖炉があった。
「グッピー、ラッシュ、ルル薪を集めよう。セン、竈門の薪は足りるか?」
「あと、少し欲しいです」
「わかった取ってくる」
「アニタも行く」
「ラッシュ、アニタと」
「ああ」
「足が伸ばせるぞ。ヴィルヘルム、馬車からマクラを」
「はいお嬢様!」
森の中。
「もうここは北方の国の中に入るのか」
「そうだな、俺は何度か来ているが、ロランは初めてか?」
「『宝探師』にも縄張りがある、他国の遺跡には入れない」
「そうだな。こっそり入ったら、それこそ『盗っ人』だ」
「だな」
「あと、少ししたらこの辺は雪が降る。降る前に神殿に着きてーところだ」
「雪か、ちょっと前まで灼熱の砂漠地帯を歩いていたなんて、世界は広いな」
「アニタ、何か居る!」
「なにかって、ナニ?」
「来る、隠れる!」
のっしのっしと、木陰を大きな生き物が歩いて来た。
アレは、シシブタだ、大きい。レオの馬車くらいあるかな。
地面に鼻をつけて臭いを。口から出た牙は大きく鋭い。あんなデカいのは初めて見た。北のは大きいのかなぁ。
ブヒッ
わっ、こっちに来る。
「アニタ、逃げよう」
ラッシュが、よつん這いで後ろに下がりだした。
器用なこと出来るな。
グヒッ
シシブタの大きな鼻が生い茂った草木の間から出た。
「キャアアアア」
「アニタ、オレ、乗れ!」
ラッシュの背にはりついたようなかっこで、走りだした。乗るにはラッシュは小さい。
ブヒッヒィイ
ひいっ追っかけてる!
「ロラン! グッピー!」
グヒッ
矢がシシブタの頭に。二本目は目に。
お姉ちゃん?!
三本目が頬に刺さった。
シシブタは、止まり矢の飛んできた方を見てる。
次の矢は背中に、それから数本の矢が、シシブタの体に。
シシブタは、相手を見つけたのか、矢の飛んできた方へ走り出した。
あんなに刺さってるのぴんぴんしてる。
「アニタ、逃げて!」
やっぱりお姉ちゃん!
「うおおお!」
シシブタの横からグッピーが飛び出して、槍で、片目を突いた。
グッヒイイ
両方の目が見えなくなったシシブタが、跳ねて暴れだした。
「ヒィャホー、どけグルドン!」
ティアが、来た!
「思わぬ大物が獲れたな」
「コレは大きなヤマブタですね。怪物級だ」
「運ぶのにホネがおれたぜ」
「ヤマブタ? ヴィルヘルム、こいつはシシブタじゃないのか」
「こちらではヤマブタと、西方ではそう呼ぶのですか」
「アニタ、こいつはシシブタじゃないな。こんなのは見たことねぇ。ヤマブタっていう別のブタじゃないか、それにホラこいつの毛、シシブタより柔らかい、西なら高く売れそうだが、ルルちょっと矢の撃ちすぎだ。穴だらけだ」
「こいつ、これだけ刺さってもぴんぴんしてたのよ」
「ティアが脚、斬っても暴れてたよロラン」
「まあな、こいつは怪物だった。並の狩人には獲れないな。この牙も高く売れそうだ」
「これだけ大きいと、当分の間食えるけど、おしいねここじゃ保存出来ないよ」
「あ、ミシェールの『なんでも袋』なら、腐らないんだカナ」
「そうなのかい便利だねえ」
「魔法空間で保存するから大丈夫」
「今夜は、思わぬご馳走だよ」
つづく




