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ムカシザメ

52話 ムカシザメ


 黒い雲が来た。雨だ!


 カナはすぐに船酔いで寝込んでたが、他の連中も雨と揺れにやられ、吐いてる奴も。


「グッピーは、船になれてるのか?」


「俺は船上での闘いの鍛錬もしてたんでな、酔わねぇ。ティアもぴんぴんしてたぜ。一流の武術家は、どんな場所でも平気なように鍛えてんだ」

「オレは武術家じゃないからウッ」


「まあなれだ。しかし、すげぇ嵐だな。おっと、この船、ひっくりかえらねーだろうな。外はすげぇ高波だったぞ」


「おわっ!」


「大丈夫かよ、今一回転しなかったか?!」


「ウウッゲロゲロ~」


 食ったもんみんな出たぁ?!


 よ〜やく嵐が弱まり陽が見えた。

 甲板に上がって来たルルやアニタも青い顔している。


「アニタ、ゲロゲロだった」

「よく出たわよね。だから、食べすぎないようにって」

「ルル姉も同じくらい吐いた」


「ああ、やっぱりだな。あのくらいで音を上げてたら先へは進めないぞガキ共!」


 ジイさん海賊のモンティだ。このジイさんもゾンネンシュターンの人間だったらしい。

 黒い眼帯、頭の布巻きはいかにもな格好だ。

人は良いジイさんだ。


「あんな揺れで、よく転覆しなかったな」


「舵取りの腕と、運だな」


「舵をとってるのは船長か?」


「ああ、女の身で大したもんだ。わしらはそんな船長に惚れ込んで一緒にいる」


「ジイさんも向こうの国へ行ったのか?」


「ああ、あん時は乗組員が半分に減ったよ」


「で、宝の島ってぇのは本当なのか?」


「まんざらウソではないが、宝物がゴロゴロしてるような夢の楽園じゃないな。そこんところ思い違いをしている連中が多い。黒サメのオークとかな。おまえさんもか?」


「いや、そういう噂話を聞いたんだが、オレの目的は別だ」


「別?」


「まあぁ人捜しみたいな……」


「人を……向こうに知り合いでも?」


「はっきり言って人ではない。 ジイさんマコーナって名は知ってるか」


「マコーナ……ソレは人ではないな。神の名だ。時をつかさどる女神の名だ」


「その女神が極東の国に居ると聞いたんだ」


「女神を捜してるのか……ウッププハハハハ」


「笑うなよジイさん」

「あ、いや悪い。女神を、神様だ、わしは神を捜してる奴に初めて会ったわい」

「そんなに可笑しいか」

「だってよう神はむこうから来るもんだ。捜して会ったという奴は見た事も聞いた事もねぇ。あ、あの世で会ったのは聞いたが」

「あの世って、神には死なないと会えないのか」

「ソレはない、むこうから会いに来ればな」

「そういう方法は、女神に来てもらう方法があるのかジイさん!」

「無くはないわ。祈ればいいんだよ。信教して神に祈る。まあそれで神と会った奴はわしは知らんがな」


 そう言ってジイさんは笑いながら去って行った。


 まあはっきりいってオレの考えてるコトはマトモとは言えねぇ。

 でも、こいつと。

 オレは、背中の像を前にまわし抱きしめた。


「どうしたのロラン。ジイさんに笑われてたね」


「いや、なんでもない」

「やっぱり、船酔いしてたの笑われたんでしょ」

「いや、違う」

「アニタたちも酔った。笑うなんて失礼だ」

「あの人たちは海で暮らしてんだから、酔わないの当たり前よね」

「あと、何日で着くんだ、ロラン。早く地面を歩きたい」

「三日と聞いたが、そんなにかからないだろ」


「見て、なんか泳いでる」

「デカい生き物だな、なんだアレは」


「出たな。あれはムカシザメだろう。遠いな、よく見つけたな」

「船長!」


 よく出てくるが、オレたちを見張ってるのか?


「アニタ、目がいい!」


「よかったら、『見張り』で雇ってやるぞ」

「見張りって、あの上に居るヤツか?」

「そうだ。目はおまえの方が良い」


「船長、前方にデカいムカシザメがいます!」


「なっ」


 って、船長は手をアニタの頭に。


「遅い! もう見ている」


「すみません! あっこっちに向かって来ます!」


 船長は、舵へ走った。


 船が横へ移動すると。

 ムカシザメが向きを変えた。アレはこの船を狙っている。


 また向きを変えると、むこうも。

 次に変える時、ムカシザメは船の横を通った。


「ロラン、見た?! 人が乗ってた」

「ああ、アレは人が操ってる」


「おい、誰か出ろ!」


「俺にまかせろ!」


 グッピーが船尾からサメに乗り移った。


「なんだ、貴様! なんで当って来る?!」


『此処は我らの領海、帰れ!』


「なに言ってんだ? わからねーよ!」


 極東人か?

 墨を入れた顔でニヤリとし、サメに刺したモリを抜いて攻撃してきた。


「おっと」

 

 やるな、サメの上だ、船以上に足場が悪い。

 避けるのがせいいっばいだが、槍で高飛びし、奴の背後に周り蹴りで海に。


 うわっ。

 奴を落としたとたん、サメが潜った。

 浮いてたら分が悪い潜るか。


 と、サメが前から襲って来た、反対側からはモリを持った奴が。

 こりゃまずい!


 先に来たサメの鼻先を槍で突き、槍の後ろで、モリを避けて潜り、奴の腹へ蹴りを入れた。


「二対一になってるぞ、誰か。オレ泳げねーんだ! ティアーナ!」


「あたいも苦手!」


「私が!」


 モリを持ってヴィルヘルムが上着を脱ぎ飛び込んだ。


 海面から飛び上がったサメが、海に落ちずに空中で回りだした。白いつむじ風。


 ミシェール!


 彼女の姿が船尾に。


 氷の粒で穴だらけになったサメが海に落ち白い腹を見せて浮かんだ。


 そのサメに男が上がった。


『貴様らマグを殺ったな。おぼえてろ!』


 ナニか叫ぶと飛び込み消えた。


 縄梯子でグッピーとヴィルヘルムが船に上がって来た。


「何もお役に立てなくすみません」

「いや、来てくれて助かった」


「無事で良かったな」


「船長、なんで船員が助けに?!」

「自分らの危機は自分らでなんとかしてくれ。私の仕事はおまえらを島に渡すだけだ。仲間を失いたくない」


「そういうことか、わかった。グッピー、あのヤローなんか言ってたな」


「俺にはちんぷんかんぷんだ」


「私の知らない言葉でした」


「船長……」


「アレは向こうの言葉だ私もわからない」


「よくもサメを殺したな、おぼえてろ。と」


 ハルだ。


「あんた、言葉がわかるのか」


「まあな、ハルは、向こうの人間だったからな」


「ええ、そうなのか。早く言ってくれ」


「聞かれてないから」


「では、聞くハル。極東の島に女神マコーナは居るのか」


「ナニ、あんた。向こうに女神を? 宝目当てじゃないのか。私はてっきり宝探しに行くんだと。女神? そんなものが居るのかハル」


「そんな名の女神は知らない。神が居ると言われた山はある。美しい山だ。だが、そこにおまえがいう女神居るかは知らない」


「そうか、やはり行ってみないとわからないってコトか」


「お役に立てなくて……神か、なら向こうへ着いたらトオーリーを見つけろ。トオーリーのある所、神が祀られてる」


                つづく






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