表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/205

グッピー

5話 グッピー


「やあ、今朝はありがとう」


「まだ、持ってるの」


「ああ、コレは売る気はないから」


「そう」

「あんたが言うコトが本当らしい。奴らはこいつを狙って来るんだろ。オレは、ココに居られないから旅に出る。こいつと」

「そう……」

「じゃあな」


 白い魔女と別れたオレは、村には帰らず街道のある町の出口へ歩いた。


 はっきり言って一人旅は初めてだ。まあこいつが一緒だし。

 旅の荷物は、さっき古道具屋で買ったリュックに。像を入れた袋を前に出して顔の部分だけを出して見つめた。

 なんてオレ好みの顔なんだ。いくら見てもあきない。オレは思わず美人像の唇にチューした。


「そんなに気に入ってんのか、そいつを」


 わっ、見られた。おまえは槍男。


「悪いか?」


「別に悪かねーよ。俺も子供の頃に気に入ってた人形でキスの練習をしてた。昔のダチで木の股でキスの練習してた奴が居たが、アレはキスだったのかなー」

「なんの話だ。オレになにか、ようか?」

「おまえにじゃないんだ。俺はあの白い服の銀髪の女性に会いたい」

「あの白い魔女なら、古道具屋の前に居たぜ」

「だが、今は居ない。あの女性はおまえの前に現れるんだろ」

「まあ、ここのトコよくな」

「だから、決めたんだよ。おまえと一緒に居れば、あの女性に会えると」

「ああ、ナニ考えてんだ。また、あのモンスターも来るかも……」

「あんな奴ら怖くもなんともねー。怖いのはあのヒトの無視だ。アレ、おいおまえまで、無視するな」


 オレは槍男を無視して、町の出口へ歩き出した。


「あの頭のおかしい女は?」


「あいつは、まいたよ。俺はグルドン・ランデン。おまえは?」


「ロラン・ウニカだ。グルドン……」


「ロランか、グッピーと呼んでくれ」


「グッピーって。そんなカワイイツラかよ。オレは、あんたと旅する気はないぜ」


「ああ、かまわん。近くを歩くだけだ」


「あの変な女が来ても、巻き込むなよ」


 なぜか、旅の連れが。いや、同じ方向歩いてるだけだ。

 グッピーだって、またカワイイあだ名付けやがって、歳はオレより上だろう。

 槍はお世辞じゃないが凄腕の槍戦士だ。今朝見た。

 背がオレより低いのに、あの長槍をまるで大剣のように扱う。


 あの折れたオヤジの剣はさすがに金にはならなかった。

 とりあえず護身用短剣を買った。

 剣は人並みに扱えるが、あいつの槍がついてればイイ用心棒にはなる。それに、話し相手にもなるしイイか。


「グッピー、あんた金持ってるか?」


「なんだ、一緒に旅するのに金取る気か?」

「違う、今夜は一緒にメシ食おう」


「おお!」


 町を出て、夕暮れ。隣町に日暮れまでには着くつもりだった。

 まえはオヤジと馬車で行った。徒歩でも、それよりは少し遅い程度だと考えていた。誤算だった。

 このあたりは山の近くの草原。少し先に森が見えた。


「草原と森、どっちの方が安全かな……」

「寝るなら森だ。安全なのは草原だ。見はらしがイイ」

「そうだな、森まで行くか。大分暗くなった火をおこすなら森だ」


 森の街道には、所々に休憩場があった。建物はないが広く切り拓いてある。おそらく旅人が、休憩や野宿に使ってるのだろう。

 オレたちは木の枝を集めながら森の中央あたりの休憩場で、落ち着いた。

 夕食に湯を沸かし干し肉を食べた。町での食事じゃなく残念だったが。

 集めた焚き木が消える頃、枝を足して横になった。

 寝てすぐ、だろう。グッピーが


「おきろ、ロラン。ナニか気配を感じる」


               つづく


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 途中から第一話に戻って読み直しています。 ほとんど会話だけでストーリーを作っていく手法は独特ですね。 [気になる点] 村人の半数が自分が原因で死んだ。でも、拾った像は捨てられないから村を出…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ