おまえのタメじゃない
49話 おまえのタメじゃない
海賊船マーマレース 船長室
「どうするんです? 行くの……」
「少し悩んでいる。本当にあの海を航るのは危険だ。水夫たちの何人かの命がなくなるかもしれない」
「でも、はじめの時は、それを知っていて航海したんでしょ」
「ああ、若かったからな。自分の事しか考えてなかった。だが、今回は姫様も……」
「姫様ねっ……わたしは知らないけど、助かってる命をかけて、なんでわざわざ危険な航海に」
「姫はそういう人だから……そのおかげで国に居なかった姫は助かった」
「なら、なにも……わざわざ」
「明日、姫に会う。もう寝ろハル」
「あ~んまだ御姐様に抱かれていたい」
「さっきあれだけ、もういいだろ。寝ろ」
寝る前に軽いキスをしてやった。
ハル。可愛いヤツだ。
朝、船員の吹くラッパの音で目が覚めた。
「ハル、おきろ。朝食がすんだら出かける」
全裸のアイリーンが、先にベッドから出た。
「ハル、おまえもこい。姫様に会わせてやる」
宿の食事場では。
「どう思うロラン、あの女海賊、宝島に行くと思うか」
「わからん、行ってくれるなら、あの場で……」
「ロラン、昨夜の話の海賊が行ってくれたら行くんだよね東の国へ」
「ああ、ミンはここに居てもいいぞ。ここが気に入ったようだし……危険もあるし」
「いや、ボクも行きたい。この目で極東の宝島を見たいんだ。センたちはここで待っていた方が、カナは船が苦手では」
「まあそうですけど……ここまで来ましたし」
「ミン様、わたしら話し合った。どこへでも行きます」
「セン……」
「私とヴィルヘルムみたいね。人数が多い分羨ましいわ」
「お嬢様、私一人じゃ寂しいと?」
「おじいちゃんだけだとね。ミンには、父母妹がいるじゃない」
「お嬢様、父、母なんて、それは……」
「いや、センたちはそういう存在だ」
「ミン様わたしたちは……」
「おじいちゃん……。お嬢様、私をそのように」
「あらヴィルヘルムはおじいさん執事じゃない。いいじゃない貫禄があって。頼もしいわ」
「今になってだが、あの耳飾り。ありがとうレオ」
「いいのよ、アレのおかげでアイリーンに会えるんだから」
そこへ宿のドアを開け。
「主人は居るか、ココにヴィルヘルムという男が泊まってるはず」
「これはアイリーン!」
「姫様!」
朝突然、船長みずからやって来た。
レオを見るなり帽子をとり、膝を着いた。
後ろにいたハルもそれにならった。
「楽にしろアイリーン。もう私は姫ではない」
あわてて出てきた宿の主人はその光景を見て目を丸くしている。
「お話は、他でもありません。すぐ、出航の準備を。明日の朝には」
「ありがとう。アイリーン船長」
「おまえのタメじゃない」
つづく




