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アイリーン

48話 アイリーン


 ハルというメガネ娘は、ついてこいと。

 オレたちは、その後を。


 町はずれのある雑貨屋に来た。


「おかえりなさい、ハル様。お客さんで?!」


「よけいなことは聞かないで」


 ハルは、なんの遠慮もなく店のカウンター奥に入り、棚のランプを取りドアを開けた。

 階段が下へ。地下室かと思ったが、部屋はなく通路だ。ハルはランプに火を点けて奥へと。

 この通路は、何処に? ある程度歩くと。

 明かりが見えた。


「おわっココは、崖っぷちだ。下に船が」


 ハルは、ランプの火を消し岩棚のフックにかけた。そしてその棚にあるベルを鳴らしたら、船から長いハシゴが。


「降りて」


 船に降りたオレたちを船上の絵に描いたような海賊たちがジロジロ見ている。オレとグッピーはともかく、ヴィルヘルムは場違いだ、浮いている。まあしかし、目の前を行くハルはもっと浮いているかな。


「キャプテンは?」

「船室に」


 船の後部にある部屋へ。


 ハルが、ノックすると中からしたのは女の声だ。


「なんだ?」


「ハルよ。仕事の客を連れてきたわ」


「入れ」


 中に入ると大きな椅子に座った女が。長い黒髪のティアーナに似た髪型と面構え。が、彼女にはどこかティアーナと違う品がある。

海賊らしからぬどこかの貴族のような。


「おお、コレは驚いた。アイリーンでは、ないか」


 後ろにいたヴィルヘルムが前に出た。

 知り合いなのか。

 驚いたのは、オレたちだけではなくハルも。


「え?! ヴィルヘルム。なのか」


「そうだ私だアイリーン。無事だったのか」


「おまえもな。姫様は?!」


「姫様も。今はご一緒に」


「それはなにより」


 この船の船長は、レオ姫の王宮に仕えていた東方人でヴィルヘルムの友人だった。

 歳は大分下だが、彼女から武術等を習ったりしていたようだ。

 名はアイリーンだが、それはゾンネンシュターンでの名で自国名はアイ・リンと。

 そんなコトはヴィルヘルムが後に宿で語ったコトだが。


「なるほど、そういうことか……」

「どうかな、行ってくれるかな」

「まあな、一度は運良く行って戻ってこれた。あの海は危険だ。あのカーテンは魔法か、何かで海を仕切ってる。あの島国なのだろう」


「行った者が帰らないと聞いた。それは、向こうに住み着いたんじゃないのか。まあ海で死んだ者もいるだろう。向こうの国は楽園だと、帰りたくなくなったとか……」

「ソレもあるだろう……だが、楽園とか、宝島なんてぇのはウソだ。私らが行った向こうは、こっちとそう変わらない」

「そうなのか……」

「だから、あんた。命をかけて行くトコじゃないよ」


 出航の話しは、また後日と。この日は挨拶程度で宿に帰った。


「しかし、ラッキーだったな、まさか海賊船の船長がヴィルヘルムの知り合いだなんてな」

「ああ。あの人は、行ってくれるだろうか。けっこう困難な渡航らしいが」

「ですが、一度は行って帰りました。彼女は冒険好きですから困難だからと動かない人間ではありません」


 宿で。


「なに、アイリーンが生きていたと」

「ハイ、国から逃れ今は海賊ですが」

「海賊かぁ彼女らしい。会いたいなぁアイリーン」


 あの女船長は、かなり王宮で好かれていたんだな。良い人間らしい。レオを見ればわかる。

 なら、行けるか極東の国へ。


 部屋で像を見つめて話した。


「もう少しだ。女神に会えたら君と話しが出来るようになる」


「わからなくもねーが、ちゃんとした人間を見ろよロラン。生身の人間はいいぞ。そうだ明日、俺のおごりだ、娼館に行こう」


「遠慮するよグッピー。一人で行ってきな」


「そうだな久々に……」


「どうした、きょろきょろして」


「いや、どこかでミシェールに聞かれてんじゃないかと」


「別に彼女はおまえを気にしてないよ。それに、この男部屋には」


「わからねーぞ、ミシェールは神出鬼没の魔法使いだ」


「彼女が嫁だったら、女遊び出来ないぞグッピー」


                 つづく


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