ソー・ムンラン
43話 ソー・ムンラン
「もう、降りてもいいか」
レオの馬車の窓からティアーナが顔を出した。
「この辺は大丈夫かな? アニタ、センの馬車行って聞いてきてくれ」
「は~い」
「馬車の中は窮屈だ」
「そうかしら? 私の馬車は特别製よ、普通の馬車より広々としてるわよ」
「外を歩く方がいい」
「ロラン、センさんが」
「ロラン様、この辺は、トッケツのはびこる土地です。あまり品の良い連中ではありまん。もし、手配書がこの付近にまわっていたら賞金目当てに」
「トッケツって盗賊みたいなやつらか?」
「トッケツは、もともとこの地方の民族で、一度カチューに滅ぼされました。が、地方に散ったその残党が集結し、ほそぼと村を作り遊牧やらをして暮らしてます。まあソレは表向き、盗賊まがいな事もしているとも。あのマントウの店のパオが、大会の準々決勝で闘った相手がトッケツの今の長で、ソー・ムンランという女と聞きました」
「そのソーという女はパオに勝ったのか?」
「そう聞きました。その女は決勝まで、勝ち進んだそうです」
「セン、その女は強いのか?」
オレたちの話を聞いていたのか、窓からティアーナが顔を出した。
「決勝で負けたとはいえ、そこまで行けるのは並大抵ではありません。おそらく」
「そいつが、あたいを捕まえに来るのか? 来たら面白い返り討ちにしてやる」
やる気まんまんだなティアーナは。
「それはわかりませんけど……」
窓から顔を引っ込めたティアーナが、ドアを開け降りてきた。
黒い縁の大きな帽子をかぶってる。
古くなって色あせたボロマントには少々不似合いだが。日よけには、いいデカい帽子だ。
「レオにもらった」
「ルル、ルルレットは、何処かしら?」
珍しいな。レオ姫が、ルルを呼ぶなんて。
「お嬢様、ルル様は、ウチのアンの所に」
「呼んでちょうだい、ティアーナが降りて、話し相手がいなくて退屈なの」
なんでまた、ルルを。
いや、しかしティアーナが、レオの話し相手になったのか?
センが後ろの自分たちの馬車へ。
「なんですかお姫様? あたしをご指名なんて雨でも降るのかしら」
「降るといいわね。乗って」
レオの馬車に乗るの初めて、さすが王族の馬車だわ、こっちの座席がベッドになるのね。
天井に下ったランプにはキラキラした、飾り石が周りに沢山付いてる。
「きょろきょろしないでお座りになって。どう顔の腫れ。大分ひいたわね」
「ミシェールの薬が効いたのね」
「ミシェールは魔法使いだと、やはり薬とかも作るのね」
「まあ本人は魔法使いでは、ないと言ってるけどね。じゃなんなのかしらね。あの人」
「私の国ではああいう人間を研究する機関があったわ、異能力者と呼んでたわね」
「へぇ~っそうなんだ。異能力者ねぇ。そんな話しもあるのね。研究してるんだ」
「してたのだけど、研究すれば、するほどわからないと消えちゃたわその機関。どうなったのかしら……」
「ああ、あたしにはお姫様が退屈しのぎになる話なんて出来ないわよバカだから。なんのネタもないの」
「あのね、ここなら聞けるし、言えるわよね。子供は、どうやって作るのかしら?」
つづく




