宿でひと騒ぎ
39話 宿でひと騒ぎ
喧嘩と言っても、二人のかまえ、動きは拳法のソレだった。
「セン、さっきの会話何気なく聞いてたんだけど。リョンは予選落ちで、パオは準々決勝までって、二人の格がまるで違うじゃない。止めなくていいの?」
「大丈夫ですミン様。よくある姉妹喧嘩ですから問題ありません」
「そうなのかセン。オレも止めた方が。あの体格差だってリョンは。あっパオが体当たりを」
こちらの拳法にある身体ごと使い押し当てる技、細身のリョンが押されて後退した。そしてパオの突きが。やはりリョンが不利だ。
リョンは手のひらでパオの突きを受けて、そのまま身体ごとパオの腕をからむようにすべり、パオの横につき伸ばした指先でわきの下を突いた。
「なんだ、あの動きは?」
「アレはカチューにある形意拳です。おそらく蛇形拳だと」
「知ってるのかヴィルヘルム」
「はい、カチューには動物の動きを取り入れた拳法があります。私も見たのは初めてです優雅な技ですね」
「ありゃ喧嘩というより腕試しだな。お互いの技をおしみなく見せあってる」
「じゃれ合いだ」
グッピーやティアーナたちにはそう見えるのか。オレにはわからん。
『あっ、うっ、ひっ』
蛇形拳の突きが、パオに連打した。
意外にリョンが有利になってきた。
「ヴィルヘルム、蛇形の蛇って?」
「ヘビです」
「ヘビ?」
「ああ、西方ではチュビラの一種ですかね」
「アレは、そういう動物の動きなの。言われてみると。なんだか鳥肌が立つ技ね。あたし手足のない生き物嫌い」
「相変わらずだなルルは本物見たわけじゃないだろ。それじゃリョンと一生闘えないな」
「なんであたしがリョンと。一生ないわ」
『あんっ。もうヤメ。姉さんズルい。わたしの弱点ばかり突くんだから』
『力じゃあんたに勝てないからね』
『あんたら、いつまであぶらうってんだい。仕事に戻りな』
『ふぁ〜い』
なんだか、面白いものを見た。なるほど武術の町だココは。
食事がすんだら、センのなじみの宿に向かった。
『おおセンさん。お久しぶり』
『ああ。今日は大勢なんだ、泊まれるかい?』
『いやあ〜武術大会が終わるとガラガラでねぇ』
「別々になるけど、大丈夫だと」
「当然だろー。十人以上だ、みんな一緒のごろ寝宿なんて見たコトねー。俺はミシェールと二人部屋だ」
「ない」
「アニタもロランと一緒がイイ」
「ダメよ。女と男は別部屋」
「センとアン、カナはいいのか?」
「家族や夫婦はいいのよ」
「じゃロラン。あたいと一緒の部屋だ。子作りしよう」
「ダメよティアーナは女部屋。そんなコトさせなし、ロランはしません!」
「あのなティアーナ、まだ言ってんのか、あれは誤解だと。アレはとっていいから、オレはティアーナのおっぱい、見たいぞ」
「そうなのロラン……変態」
「おっぱい見たいは、男として普通だルル。でも、今のは……」
「まだ、つけてる。乳、見せるのは旦那だけだロラン」
「ティアーナ、オレは旦那じゃないから」
「ウッヒヒヒヒヒ」
「ナニ笑ってんだグッピー。あんた、どういう渡し方したんだ。ティアーナ、まだ、あんなコトを」
「どんなって、ただ普通に渡しただけだウヒヒヒヒッ」
「ティア、子供どうやって作るんだ」
「ナニ聞いてんのアニタ!」
「ええ、私も知りたい。ヴィルヘルムはいくら聞いても教えてくれぬ。ルル、知ってるのなら教えなさい」
「姫まで……知りません!」
「お嬢様、それは婿様になる方がお教しえしてくれると何度も」
「そうなのかヴィルヘルム。ロラン教えろ!」
「はぁあティアーナも知らない。え、おいティアーナ。あんた、いくつだっけ?」
どう見てもオレより上だよな。
『あの皆さん、何をもめてるんで?』
『部屋わりの事だと……』
どうにか部屋わりが決まって落ち着いた。
「じゃ、行ってくるね〜」
女たちは買い物に出た。
「ティアーナが連中と一緒に出てくなんて珍しいな」
「あいつも退屈なんだろ。部屋でじっとしてるがらじゃないからな」
「そうだな」
「部屋でじっとしてるのは……今、ミシェール一人だよな」
「だろうけど……」
「ミシェールと子作りしてこよー」
「しない」
「わあっ いつココに?!」
つづく




