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モルドの町

38話 モルドの町


 まだまだ広い東方世界。

 インアルの町を出たが、無限のように広がるだ荒れ果てた大地。


 途中見かけた生き物なんかを捕まえたりして、食事の足しにしたり。

 野宿も続く。


 まえと違うのはミン・シーレと、その使用人一家の同行だ。


 雑用は、なんでもこなすセンは武術も出来るので時には盗賊等と戦える。

 最近はオレとヴィルヘルム、グッピーと武術の稽古に参加も。

 使用人だけあり、よけいなコトは言わない無口な目立たない男だ。

 センの女房のカナは料理上手で、彼女が居るおかげで荒れ地の野宿でもけっこう美味い物が食べれるのはホント大きな違いだ。

 ルルやアニタは彼女に料理を習っている。

 一人娘のアンはミンの家でメイドとして働いてた。まだ若い。十代半ばだが、なんでもこなせる。

 ミンの父親は西方人だったコトもあり、家族皆が西方の言葉が話せるのもありがたい。

 東方人の通訳も出来る人間も増えたわけだ。

 こんなトコでも時折り旅人や狩猟人などと出会う。地図がないので道も聞ける。


 カウカウの馬車はゆっくり進む。その後にセン一家の馬車が。


 いつの間にか大所帯になった。


「ロラン、町だ」


 毎度目の良いアニタが先に見つける。


「あそこは、モルドの町だ。昔、辺境進出の拠点とし砦が建てられソレが町になった」


「そういう町なのか」


「昔、私の祖父は砦の兵士でした」

「あの町で私と、センは出会った」


「そうなんだ。思い出の町ねカナさんたちの。ロマンチックな町なのかしら?」


 町に入るのに警備兵とかは、いなかった。


 変わった町だ。町の中央に砦跡がある。


「砦は今は闘技場です。五年に一度あそこで武術大会がおこなわれて、そん時は東方中の武術家が集まります。この町は武術の町なんですよ」


「なるほどそれでセンも」


「ロマンのかけらもない町ね」


「ルルちゃん。別のロマンがあるぜ、男のロマンだ。セン、その武術大会というのは、いつあるんだ」

「グッピー、出る気か?」

「東方中から猛者が集まるんだろ楽しいじゃないか」

「楽しくはありません。殺し合いですから。お互い死ぬまで闘う。負けるのは死を意味するんです……と、いうのは昔の話ですけど。今は、どちらかが『まいった』と言えば闘いは終わります」


「そうなのか、つまらんな。でも、あたいも出たい。ソレいつやる?」


「え〜と、アンが立って歩いた年だつたかな……イヤ、拳を覚えた年かな」

「もうろくするには早いよあんた。大会は、今年だよ。この間、終わったばかりだ」


「チッじゃ五年先じゃねーか」


「そうだなぁ。見に行かなかったからな。インアルの町で話を聞いただけだった。たしか今年の優勝者はショーリン門派のリューとかいう男だと」


「ヴィルヘルム、お腹がすきました」


「はい、お嬢様。センさん、ここいらに食事所は?」


「食事ならいい店を知ってるよ。お嬢様の馬車をそこの道に曲がらせて」

「パオの店に行くのかい。あそこはカチューの料理というか、軽い物しかないよ。お嬢様の口に合うかしら?」

「お嬢様にパオのマントウを食べてもらいたい」


 セン一家が気に入っているという砦跡の裏手にある店に来た。

 まともな屋根があるのは調理場だけ、あとは布を張ったトコが一部と屋根のない、テーブルがあるだけのトコで立って食べてる。大ざっぱな店だ。


『あらセン、久しぶり。見慣れない馬車が来たから誰が来たのかと思ったよ。今年の大会には来なかっわねェ』


 センの知り合いらしい。エプロン姿の老婆がニコやかに出てきてセンの手をとった。ここの店主か?


『そうだね、忙しかったから。今日は、ミン様とそのお客様を。マントウスープセットを九人前とスープ三人分』

『セン、あなたたちの分も。店主マントウセットは12人前だ』

『ミン様、使用人が店で同じ物を……』

『気にしないで、今は旅の仲間よ』


 布張りの屋根の席にレオが座り。あとの連中はテーブルの横に。


『随分大勢だなぁセンさん。今日は一家揃って。アンちゃん久しぶりぃ。お茶はサービスだ』


「店主の孫のリョンだよ」


 リョンは細身のスラッとした、ミンよりちょっと年上の若い娘だ。カチュー独特の服装にエプロン姿。カチュー国の人間か? この辺はまだ、西方形の顔が多い。彼女は純東方の顔だ。


『はい、マントウ12人前。スープは鍋で、好きなだけ食べて』


 大きな鍋がテーブルに置かれて器が並んだ。


 細身のリョンはマントウという白いパンのような物を。


 鍋を持ってきたのはポッチャリした大がらの娘だ。


『センさん、カナさん、アンちゃん久しぶり。修行から帰ってきたよ』


『おお、パオ。相変わらずだな』


「彼女がマントウを作ってるパオです。彼女も店主の孫です」


 センが言ってた。『パオのマントウ』のパオか。

 店主の同じ孫とは正反対の体格だな。

 


「このパンうめーな、コレが師匠の言ってたマントウか、一度食って見たかったんだ」


「グルドンさん、パオのは、特別美味い」


 カナが、鍋からみんなの分のスープを。


「ありがとうございます。お嬢様の分は私が」

「こんな物でお嬢様のお口に合いますか?」

「大丈夫ですよ。旅行好きのお嬢様は各地でいろんな土地の物をいただくのはお好きなので」


「ヴィルヘルム、まだかペコペコだぞ」


『パオ、聞いたぞ今年の大会では準優勝だったんだってな』

『違うよセイさん、準々決勝で負けたんだ今年は強豪揃いでさ』

『そうそうパオはトッケツの長に負けたんだよ』

『トッケツの長は今は女と聞いたが、それほど強いのか?』

『姐さん、その話はよそう負けた時のコト思い出す。ソー・ムンランは強かった……』


 センは店の娘たちと話している。馴染みなんだろ。いつもと違う感じだ。

 ぽっちゃり娘は急に真面目な顔をして涙を流した。悲しい話でも始めたか?


『あたしは三年も寺へ修行に行ったのに……』


『これは、すまん。聞いてはイケない事を……』

『仕方ないことだよ。勝つヤツがでれば、負けるヤツがでる。来年はあたしが仇をとってやる』

『五年後だ、姉さん。それに予選落ちの姉さんには無理だ』

『わからんだろ、五年後はあんたより強くなってるかもよ』


 おい、なんだ?! 店前で、痩せと太っチョの喧嘩が始まった。


               つづく





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