新しい旅立ち
37話 新しい旅立ち
グールが来た夜。
「ミン、色々ありがとう。ミンのおかげで町での生活も楽しかった」
「え、では出発するんですね。先へ……」
「ああ、本当に世話になった」
「いえ、命の恩人ですから。たいしたこと出来なくて」
「いやー美味いもん食わしてもらい、屋根のある寝床、それに温かな風呂。どこがたいしたコト出来なくてだ。ありがたくて涙が出るわ。俺はココにずーっとミシェールると暮らしたいくらいだ」
「ない」
「あのココを出てカチュー国へ行くんですよね。目的は何なのです?」
「私は……追っ手から逃れるためだ」
「そういえばレオ、北からの追っ手と、いうのには会ってないぞ。もうあきらめたんじゃないか」
「だと、しても北に帰れば即、捕らえられ……処刑でしょう。カチューにはデルヴィル家を支援していただいてる同志がいまして、そこを頼りにお嬢様をお送りしているのです」
「俺の目的は違う。ミシェールを嫁にするためだ」
「無理」
「オレは、ある人に会いたいんだ、その手がかりがカチューにあると聞いた」
「ある人って?」
「正しくは人ではない。ミン、ウンリューヒ将軍の伝説を知ってるか?」
「ええ。東方で、知らないものは居ないわ。東方を統一した皇帝ガン様の義兄弟で戰場の英雄ですもん。子供でも知ってるわ」
「その英雄の馬の話は?」
「ゴーハカね。元はカラクリ馬の玩具だったって。アレ、ボクも挑戦したんだ。当時の天才カラクリ師が作った走る馬の玩具」
「ミンも作ったのか」
「持って来ようか。カナさん、倉庫からあの馬、持ってきて」
「かしこまりました」
すぐに馬の玩具が持ち込まれた。大ネズミくらいの大きさで、大刀を持った武将か乗ってる。
「巻金のバネを使ったんだ。それを巻いて」
テーブルの上を馬がカタカタと動いた。
「時代が違うから動力は違うだろうけど、こういう物だったらしいね」
「オレが知りたいのはその先だ。そいつを本物に変えた……」
「なるほど。女神ションリだね。たしか西方名ではマコーナでしたっけ?」
「知らないな……マコーナ」
「女神マコーナは、我がゾンネンシュターンでも崇拝されてる女神です。彼女は女神というが天には住んではおらず、極東の楽園に住むと」
「ヴィルヘルムさん、その女神はやはり、ションリと同一神。こちらでもションリは極東の国の女神として崇められてると」
「女神ションリはマコーナ」
「女神マコーナの話は伝説と噂話が先走り知られているが、実は存在しないと聞いたことが」
「そうなのかミシェール」
ミシェールはうなづいた。
「しかし、存在しない者の伝説や噂話は出来ないだろう。きっと、違う誰かが……。女神でなく魔女かも知れない」
「それは、なくもない。魔女に馬をもらうより女神の方が英雄譚としては華やかだ。そう変えられてもおかしくはない」
「そうか、もうカチューにはようはない。その極東にあるという楽園とか、宝島とか言われてる島へ行く」
「楽園かぁ見てみたいなー」
「楽園なんてウソ」
「知ってるのかミシェール?! 楽園じゃなくてもイイ。極東という響が気に入った。俺とその国で結婚して住もうミシェール」
「しない」
「あ、行くのはオレだ、おまえら別に一緒にこなくてもいい。ミシェールも」
「行くわ」
「なに、言ってんだロラン今さら。俺がついてればどんなバケモノが出ても」
「あんたが行くのはミシェールが目的だろ……」
「ロラン、相棒をおいて行くな」
「同じくロラン」
「ルルまで、オレは相棒にした覚えないぞ」
「アニタの相棒は、あたしの相棒よ」
「あたいも、行く。グルドンと決着もついてない。それにロランはあたいの旦那だ」
「おい、まだ。ティアーナあれは町を出たら、はずしていいから。オレはティアーナのおっぱい見たいんだ!」
「そうなのロラン! 変態」
「ヴィルヘルム、私も楽園の島に行きたい。カチューの知り合いも我が王家がなくなったらどう変わるかわからんし」
「え、でもお嬢様」
「私は冒険したいの。それで国を出てて、助かったじゃない」
「お嬢様……」
「ボクもロランたちに、ついていっていいかなぁ。面白そうだし」
けっきょく同行の馬車が一台増えた。まさかミンの使用人一家も同行するとは。
つづく




