荒野の馬車
21話 荒野の馬車
「おい、水くれ」
「あんた、もう自分の分、飲んじゃたの。誰に言ってるのよ」
「あたしのは、やらん」
「ほら、グッピー飲みすぎるなよ。この先、水があるかわからない」
「ありがとうよ、ロラン。おまえに、きっといい事がある。こっちの太陽は沈まねぇのか?」
「そんなトコないわよ!」
「なくもない」
「ホントかミシェール。陽が沈まないトコなんてあるの?」
「白夜という」
「白夜でもなんでもイイ、もう少し涼しくならねーのか」
「この辺は沈む。多分もっと寒くなる」
「寒い? まあどっちかにしてもらいたいもんだ」
「なら、暑いとか言うなグルドン」
「言ってねーよ」
「アレなんだ?」
先を歩いてるアニタが何かみつけたらしい。
ゆれて見える大地の先に何かポツンと。
アレは馬車か?
ダラダラと歩いていると馬車らしき物に近づいた。
「馬車だな。しかも高級な屋根付きだ……誰が乗ってるんだ?」
グッピーが馬車の前に周ろうとする前に、馬車の前から老人が現れた。
髪と髭が白いから老人だと。
腰は曲がってなく、服装は黒い背広で、子供の頃、町で見かけた貴族みたいだ。
「あなた方は旅人ですかな?」
「そうだ。あんたは? こんな場所に不似合いな格好だな」
「私は何処でもこの姿で……」
「どうしたんだ? ココから動いてないよね」
オレもグッピーの横に行き老人と話した。
「馬車を引く物が動かなくなりまして」
前にまわって見ると馬車を引いてるのは馬じゃなくカウカウだ。
「なぁにアレ? 馬じゃないね」
「アニタは見るの初めてか」
「うん」
「アレはカウカウという生き物だ。けっこうデカいな。ペットとかで飼われてるヤツだ。馬車を引かせる生き物じゃない」
「ペット? 内側に巻いた大きな角がある牛みたい。お乳でるのかなぁ」
こんな暑い場所に体毛が多いカウカウはしんどいだろう。しかも馬車まで引かせて。
「そいつはもうヘタってるヤバいんじゃないか」
ルルが近寄り自分の水筒からカウカウに水をやった。
「ほら、舐めな。可哀想に」
「あんたの水は?」
「まだ少量ですが、それが動かないと……」
「しかしりっぱな馬車だな、その身なり、あんたは山の向こうから来たんだろ」
「ハイ……」
「よく、カウカウ一頭で山越え出来たな。あんた」
「私が越えた山は北部で、あまり高くないので……。あなた方は西方から?」
「そうだ。カチュー国を目指してる」
「ほう、天宿へ。あ、北部ではカチュー地方をテンジュクと」
「ヴィルヘルム、そいつらは西の人間なのね」
馬車のマドから女が顔を出した。
何者だ。黒服の老人一人とは思わなかったが。
派手な髪飾り扇子で顔半分を隠してる。
「お嬢様、安易に顔をお出しにならないで下さい」
「妙な集団だ。子供も居るし、追っ手でもなかろう」
「あんた何者だ? その口調はどっかのお姫様か」
グッピーが、馬車の窓に近づくと黒服の老人が素早くグッピーの前に。
「お嬢様中に」
一度中に引っ込んだ女は馬車のドアを開け。
「大丈夫だヴェルヘルム。私はゾンネンシュターン国第5王子の娘レオノール・デルヴォルだ、ひかえよ」
なんだかすごいのが出てきたぞ。ひかえよってなんだ。
「北方のゾンネンシュターン国の第5王子の娘だって、マジか、あんた。確か反乱があって王族が皆殺しと聞いたぞ」
あっちこっち旅してるグッピーは他国のコトが詳しい。
「皆殺し。そんなのデマだ」
つづく




